テラーノベル
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〖───貴方が何度振ろうとも、貴方が誰かのモノにならない限りは〗
昨日グリから言われた言葉がまだ頭に残っており、思い出す度に顔が熱くなる
店の窓に移った自分の首元に着いた絆創膏
未だに暖かい唇の感触が残っている
『(ゔぅ……困ったなぁ……)』
正直こんな状態でカラスバさんに会いたくないが、また明日なんて言ったら押しかけてきそうだし
何よりグリより、積極的なカラスバは今の自分には毒だ
『はぁ…でも行かなきゃなぁ……』
そう思いながら、気合を入れる為にも昨日貰ったローズの香りの香水を振りかけサビ組事務所へ向かった
「!姉さん…!もしかしてカラスバに会いに来たの?」
『そうだけど…どうしたの?』
「いや、ちょっと今機嫌悪いというか…」
話を聞くと、徹夜続きの挙句、昨日取引相手との付き合いで夜遅くまでお酒に付き合わされてすこぶる機嫌が悪いらしい
『えっ?それ私行って大丈夫なの…?』
「いや、バレないうちに今日は帰ったらいいよ」
『そっか……じゃあ、これだけでも届けてくれな───』
アザミと話していると、ポーンと後ろのエレベーターの音が鳴りジプソが出てくる
「シオン様、カラスバ様がお呼びです」
「はァ!?…ゔ…すみません……」
その言葉にアザミが眉を釣り上げて怒る、しかしジプソに睨まれそのまま眉を下げ口を閉じてしまう
アザミもジプソさんには強く出れないのかな…
『えと…行っていいんですか?』
「…もし何かあれば私をお呼び下さい」
『え?あ、はい……?』
アザミはそんなシオンを心配そうに眺めていた
サビ組事務所へ着くと、いつもの机の上で頭を抱えているカラスバの姿があった
『カラスバさん…?大丈夫ですか?』
「!シオン、すまんな。こんな姿で」
『あ、いえ!それより、しんどそう…』
カラスバはシオンを見るなり機嫌の良さそうな笑顔になる
しかし顔は少し辛そうで、いつも綺麗にセットされている髪も今日は所々跳ねていて、目の下にはまたクマができている
そんなカラスバを心配そうに見つめ、昨日買ったプレゼントのことを思い出しカラスバに差し出す
『あっ、あのっ…これよかったら、使って下さい!』
「ん?アロマキャンドルに…アイマスク……今オレがめっちゃ欲しいもんや!ありがとさん、シオン」
無邪気に笑う姿がいつもとは違って可愛らしく、胸がドキドキと甘く鳴る
そしてフシデのポーチを見ると更に目を輝かせて嬉しそうに笑うカラスバ
「それにこれ、フシデやん!ごっつかわええわ!!」
『へへ、ちょうどフシデがあったので…』
「なんや、オレの為に買ってくれたん?」
『へ!?いやっ、その別に…そのっ…はい…』
「!」
顔を赤めるシオンに対し、更に機嫌良さそうな笑みを浮かべて立ち上がり、シオン元へ近寄る
しかしその瞬間、ふとローズの香りがカラスバの鼻をかすめる
「ん、今日はいつもと違う匂いやん」
『気づきました?実は昨日プレゼントしてもらったんです』
そういって嬉しそうに笑うシオンの唇もいつもの薄い桃色ではなく、初めて見る赤色の口紅が塗られていることに気づく
「てことは、昨日来れへんかったんはプレゼント選びよったからっちゅー事か」
『あ、はいっ…カラスバさんのプレゼントを買いに色んなお店寄ってて…この口紅もカラスバさん好きかなって……』
自分の為に、そんなに動いてくれたのか…と胸が幸せでいっぱいになる
プレゼントと言っていたが、セイカとかとでも行ったのだろうか…
なんにせよ、シオンが自分の為に動いてくれたという事が嬉しい
「赤い口紅か、よう分かっとるやん。」
『!!よかった…』
目を輝かせて笑うシオンに対し「(これはもう脈アリか?)」と思いながら、 このまま抱きしめて、家まで持ち帰りたい気持ちを抑えつつシオンの髪を触っていた時だった
『グリさんにもお礼言わなきゃな……』
「……は?」
ボソッとシオンが呟いた言葉をカラスバは聞き逃さなかった
その瞬間、カラスバのにこやかな笑顔は消え失せ冷たく低い声が事務所に響く
そんなカラスバの変化にシオンの笑顔が少しひきつる
「…昨日、ヌーヴォの兄ちゃんとおったん?」
『あ、でも本当に少しだけで…!!』
「(ローズの香水に赤い口紅……そーゆーことか)」
なんや、昨日こっちに来んかったのはソイツと仲良う遊びよったからか
そんで、他の男の匂いつけて帰ってきおって
そう思うとこの赤い口紅も汚く見えてくる
怒りを抑えきれず、カラスバはシオンの口を強く擦り口紅を取ろうとする
『ゔっ、いたっ……』
「…それ、取れや。全然似合っとらん」
『…え……』
カラスバの言葉にシオンの瞳が大きく見開かれ、そのままカラスバを見つめる
「ローズの香りもそーゆーことか。なんや、あのプレゼントはただのご機嫌取りっちゅーことか?」
『ご機嫌取りなんかじゃないです…!!お世話になってるカラスバさんに… ──きゃっ!?』
いきなりの豹変っぷりに、恐怖を抱きゆっくり後退りするが手を強く捕まれそのまま近くのソファーへ投げられる
「言い訳はええねん。どうやった?彼奴とのデートは」
『デッ!?デートなんかしてないです….!本当にカラスバさんへのプレゼント選び付き合って貰っただけで…』
「プレゼント?にしては、上手いこと使われたみたいやな。ローズの香水に赤色の口紅……全部、彼奴の色やん」
顔に筋を立てたカラスバがシオンの上に乗り、何度も強くシオンの唇を親指で擦る
『(なんで?さっきまで機嫌良かったのに、この口紅も気に入ってくれてたのに)』
今目の前にいるカラスバがただ怖くて震える
そんなシオンに対し何処か苦しげに笑いつつも、シオンの頬を撫でる
「……妬けんなァ…ほんま」
シオンの記憶がなくならなければこんなことにはならなかった
記憶が戻れば、こんな思いしなくて済むのに
シオンがあんな行動を取らなければオレ達は幸せやったかもしれんのに
シオンがオレを身勝手に置いていかなければこんな事には───
『(ジプソさんに連絡しなきゃ…あっ!)』
何処か様子のおかしいカラスバを見て、スマホを取りだしジプソへ連絡を入れようとしたが、それに気づいたカラスバがスマホを取り上げ後ろに放り投げる
「お前が倒れて3年間。オレがどんな気持ちでお前を待っとったと思うんや」
『うっ…ぁっ……ごめ、なさ…』
「お前が…悪いんや。何もかも、お前が」
シオンは訳もわからずとにかく謝るしか出来なかった
そんな中、カラスバは今まで心の奥で積もっていた愛憎が形となって動き出していた
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