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葉っぱ
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榎本くもり
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穏やかな木漏れ日の差す、放課後の音楽室。 隣で『彼女』が笑っている。
この時間が、何よりも大切で、何よりも愛おしかった。
「これで、練習は終わりです。ありがとうございました」
部長のいつもと変わらない言葉で、張っていた糸が緩む。
各々が楽器を片づけたり、友達と帰る準備をしている。
ここはとある高校の、何も特別なことはない、普通の吹奏楽部である。
今は六月で、二ヵ月後に迫っているコンクールに向けて練習中だ。
「また明日ー!」
「またねー!」
そんな声があちこちから聞こえる中、誰もいない音楽室で楽譜と睨み合う。
みんなが帰った後も、音楽室に残るのが日課だ。
個人で楽器の練習をするためではない。
では、何故かって?
「ごめぇぇぇん、待った!??」
そんなことを言いながら急いで教室に入ってきた『彼女』はトランペットを持っている。
「大丈夫。待ってないよ」
そんなことを言いながら、机に置いていたトロンボーンを持ち直す。
「今日はどこ練習するの?」
「ここからここまでかなぁ。私ここの音綺麗に出なくてさぁ、聞いててくれない?」
そんなことを言いながら、二人で向かい合う。
メトロノームも、チューナーも、準備は万端だ。
「それじゃあ、いくよ。1、2、3、ハイッ」
トランペットの高音と、トロンボーンの穏やかな音色が、混ざって溶けていく。
みんなが帰った後も一人音楽室に残る理由。
それは『彼女』だ。
「ぷはっ!!なんでそんな息続くの?私すぐ辛くなるのにぃ~!」
一曲吹き終えたタイミングで、彼女はそんなことを言い出した。
「基礎トレだよ。トロンボーンはロングトーンが多いし、途中で切れたら不自然だからね」
息を整えながら言う。
「なるほどぉ。綺麗なロングトーンは日々の努力の賜物ってわけね!さすが!」
トロンボーンは主旋律よりも副旋律の方が多かったりする。
その中ではロングトーンも多いわけで、基礎トレーニングを怠らないのは当然のこと。
そう、当然のことなのだ。
なのに、『彼女』に褒められると、どうしても自分が凄い人間のように思えてくる。
「別に、タンギング苦手で、その分ロングトーン頑張ってるだけ。その点、そっちはタンギングすごいよ。よく唇動くよね。」
「え、ほんとぉ?褒められて照れますねぇ」
「でも、息続かないのは駄目だからね。基礎だよ、基礎」
「へぇ~い(涙)」
半泣きの『彼女』を横目に、次の曲の楽譜を準備する、フリをする。
危なかった。急に褒められるのは困る。
きっと、今の自分の顔、気持ち悪いくらいに緩んでいるんだろうな、と思う。
「次の曲いくよ、準備して」
息を整えて、楽譜を見据える。
この甘美で夢のような時間を、一滴たりとも零さないように。
そんなことを考えながら、二人は息を吹き込んだ。
コメント
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**第1話、読んだよ〜!!🌸** もう、吹奏楽部の練習風景がめっちゃリアルで、しかも2人の距離感が絶妙すぎてドキドキした…!✨ 「褒められると気持ち悪いくらい顔が緩む」ってとこ、めっちゃわかるし、そのあとすぐ「次の曲いくよ」って切り替えるのが主人公っぽくて好き。 甘美な時間を零さないようにって心情、エモすぎるでしょ…!🥺💕 続き、この2人がどうなっていくのか超気になる〜!葉っぱさん、素敵な作品ありがとうございます!🎶