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げんこつ山のたぬきさん

おっ〇い飲んでねんねして

抱っこしておんぶして

また明日__


「それじゃ、仕事行ってくるな」

「うん、行ってらっしゃい」

「何かあったらすぐに連絡しろよ」

「うん…ありがと」

ストーカーのことを告白されてから1週間。

ここ最近、特に被害を受けることもなく平穏に日々を過ごしてる。

けど明澄はときどき、相当怖い思いをしたのかパニックになって過呼吸を起こすようになった。

明澄は昔から喘息を持っていたので、肺に負担が大きかったのか、喘息の症状も悪化してしまった。

俺もできるだけ仕事を早く終わらせて明澄を支えてあげたいと思う。

明澄が昔、そうしてくれたように。


「涼太」

「んー?」

「この資料さ、押し付けられちまって俺別の溜まってるからさお願いできない?」

岡村おかむら、お前最近なんかパシられすぎじゃね?」

岡村は会社の中の数少ない同期だ。

「いやー、川田かわた部長の地雷踏んだっぽくてw」

「あー…」

川田部長は基本、フレンドリーで誰にでも優しい部長なのだが、逆鱗に触れると1ヶ月長ければ半年ほど根に持つタイプの人間で多くの社内の人が恐れている。

「お前、馬鹿だなぁ」

「だって、香水臭くて…まさか川田部長だとは思わないだろ!?」

岡村はKY(K空気Y読めない)人間だから女を敵にまわしやすい。

「そんなんだから彼女いない歴=年齢なんだよ」

「うっせぇーな」

「はーい、そこ静かに」

「やっべ、川田部長だ」

岡村はふくよかな体を机にぶつけて、川田部長の資料を落として分かりやすく睨まれていた。

この調子だと短くて3ヶ月ってとこかな。

と思いながら俺はそのやり取りを横目で見ながら席に着いた。

「今日はお知らせがあります。社内に新しく入社する子が来ました〜!」

川田部長、いつも以上に機嫌がいいな。

相当イケメンな男なのか?

「それじゃ、入っておいで〜」

「失礼します……」

そこに入ってきたのは、予想を反して女だった。

心配になるような青白い肌、触ったら折れてしまいそうな、ガリガリに痩細った身体。

「…洋西 蔦なだにし つたえです不束者ですが、よろしくお願いします。」

か細い声でポソリと自己紹介した後、ちょこんと椅子に座った。

それだけなのになぜかとても心配になる。

「それじゃ、涼太くん。この子をお願いできるかしら?」

「お、俺ですか!?」

自分が呼ばれるとは思わなかったので、思わず声が裏返ってしまった。

「入社してしばらく経つし、涼太くんは優秀だから丁度良いでしょ?」

「…どっかの同期と違って」

ボソリと岡村の前で呟く。

なるほど、岡村への嫌がらせか。

女は怒らせると怖いな。

「あ…鈴木すずき涼太さんですよね…?よろしくお願いします。」

「あー、よろしく」

いかにもアニメに出てきそうな病弱な陰キャキャラだ。

これからの世話係としての心配は募るばかりだった。


「あの…鈴木さん、ここどうすればいいですか?」

「あー、ここはfxからifを選択して」

「なるほど…!ありがとうございます」

洋西 蔦は最初の第一印象こそは心配だったものの、思ったよりもかなり優秀だった。

なんでも、商経学部の出で、パソコンはもちろん、簿記やマーケティングにも強いらしい。

川田部長がニコニコだった理由が良く分かった。

俺はと言うと、洋西の世話係になったおかげで前より早く帰ることができる。

明澄の件もあるし、かなりありがたい。

「それじゃ、俺先に上がります」

「あら、お疲れ様」

「お疲れ様です。」

思ったより今日は早く帰れたし、近所のケーキ屋で明澄の好きなチーズケーキでも買って帰ろうと思い、チーズケーキと1番安かった苺ムースケーキを買って帰る。

明澄どんな顔するかな、なんて柄でもないが少し浮かれてる自分がいた。

だから、忘れていたんだ。

「は…なにこれ?」

ストーカーのことなんか。

「……。」

玄関には「タ  ヒね、消えろ、クズ」などの暴言が書かれていた。

なぎ倒された植木鉢やボロボロになった表札、玄関は酷い有様だった。

「明澄!!!」

「う”っ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

ドアを開けると案の定、過呼吸で倒れている明澄がいた。

「明澄!!!」

「涼…太……?」

「落ち着け、ほら、大丈夫だから」

「さっき、○ね、○ねって大声で叫んでて、ガラスが割れる音とかたくさんして、う”っ、」

「あぁ、1人にしてごめん。もう大丈夫だから、俺がいるから。 」

明澄を安心させるように、俺は明澄をぎゅっと抱きしめる。

少し苦しそうだったが、しばらくして明澄は元に戻り

「ごめん」

と謝ってきた。

「気にすんな、こっちこそ1人にしてごめんな」

「ううん…ありがと」

「今日さ、仕事早く終わったから会社の近くのケーキ屋でケーキ買ってきたんだ、食べる?」

「やった…!って…え!?チーズケーキじゃん!!大好き!ありがとう!!」

そう言って明澄は思いっきりの笑顔で俺に微笑んだ。

あぁ、俺はこの明澄の笑顔を見れるならなんだっていい。

だから、これは隠し通さないと。

明澄は自分のことより相手を優先してしまう優しい性格だから。

ストーカーは実は”明澄”を狙ってるんじゃなくて、”俺”を狙ってるってことを。

玄関前で見た、「鈴木涼太」と書かれた藁人形に釘が刺してあったあの光景が蘇り、酸っぱい胃酸が込み上げてくる。

「どうしたの、涼太、顔色悪いよ?」

「ん?そんなことねぇよ?」

「ならよかった!」

この苦い苦い思いを俺は胃もたれしてしまいそうな甘い苺ムースで流し込んだ。

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