【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
小児科医青×天才外科医桃
のお話です
今回は時期外れですがバレンタインのお話です
(2024年の2/14に別サイトに投稿したものになりますのでご容赦ください)
桃視点
医局の自分専用の引き出しを開けると、いつもは入っていないようなものを見つけた。
焼き菓子や板チョコ、小さめだけどきちんとラッピングされた箱まであって、あぁそうか今日はバレンタインだっけなんて思い出す。
いつもは回覧書類や連絡事項の印刷物、あとは事務から送られて来ている診断書の依頼書なんかが主なのに、それらのお菓子で今日は薄い引き出しが埋まってしまっていた。
ちょうど手にしていた鞄に、それらを詰め込む。
押し込むようにして入れてから踵を返そうとすると、すぐ近くの事務の女の子が2人困ったように眉を寄せているのが視界に入った。
「どうする、これ…」
「これ以上押し込むのもねぇ…」
苦笑いを浮かべている彼女たちを横目でちらりと一瞥すると、その視線の先には既に閉じることができなくなって半分以上開いたままになっている引き出しがある。
「いふ先生の引き出し、毎年こうなってる気がする」
「でもここにそのまま診断書突っ込んだら折れ曲がりそうだしね…」
…あぁ、まろの引き出しか。
確かに他の医師たちの引き出しには小さいお菓子がいくつか義理と分かる程度に入れられているのに対し、まろ宛のものは「これ本気なんじゃ?」と思わされるような大きなものまである。
去年なんか書類が入れられなくなって、怒った医事課の課長がまろ専用の段ボールまで用意してそこに放り込んでいたっけ。
「いふ先生のチョコ? この後会うから渡しておこうか?」
声をかけると、彼女たちは弾かれたように顔を上げた。
「え、ないこ先生、いいんですか…?」
「いいよ。ついでだから」
にこりと笑って鞄の口を開くと、彼女たちは「助かります…!」と心の底からほっとしたように笑んだ。
本当に会う予定があったわけではないけれど、今日は特別忙しいわけでもないから届けてやってもいいか、なんて仏心を出す。
医局から長い廊下を歩き、小児科のある棟の方へと向かった。
だけどその途中で、不意に聞き覚えのある大きな声が耳に届く。
「そういうのダメなんだぞ! 知らないのかよ」
中庭の方から聞こえてくる声が、すぐ傍の開いている窓から流れるように入ってきた。
あまりの大きな声にそちらに目をやると、これまた見覚えのある少年の姿が予想通りそこにある。
「今はなぁ、かんせんしょーよぼうのため、とかで院内で人に食い物とかあげちゃダメなんだよ…!」
「で、でも…」
「俺らの見舞いに来る人だって食い物持ってきちゃダメって言われてるだろ!? だからダメなんだよ! 病院の決まりなんだよ!」
少年は、小児科でまろが担当している入院患者だった。
かずくん、といって、くそ生意気だけどかわいいところがある…らしい。
俺はまだくそ生意気な面しか見たことがないけれど。
「わたし、昨日一時退院できたから一生懸命作ってきたのに…」
かずくんに大声を上げられている相手は、同じくパジャマに近いラフな格好をした少女だった。
年は彼と同じ小学校中学年くらいだろうか。察するに彼女も入院患者なんだろう。
その手には、透明の袋に入ったクッキーが見える。
口は青いリボンで縛られているが、長さがばらばらで結ぶのに苦戦したのが見てとれた。
「手作りなんて、そんなもんもっとダメに決まってんだろ! かんせんしょーは怖いんだよ!」
何をそんなに怒っているのか、かずくんはやたらと彼女に突っかかっている。
少女の方は必要以上に責められてもう決壊寸前、というくらいに目を潤ませて俯いたのが分かった。
「いふ先生だってそんなの渡されても困るに決まってる! 医者はそういうのかんじゃから受け取っちゃいけないんだよ!」
そこまで彼が声を上げたとき、「ははーん」と全てが納得できてしまった。
なるほどねぇ。
一時退院した際にクッキーを手作りしてきた彼女が、それをまろに渡すのが気に入らないわけだ。
その理由は…非常に小学生らしくて思わず吹き出しそうになった。
確かにあのくそがき、かわいいとこあんじゃん。ただし好きな子には嫌われるだろうけど。
言いたいことは言ったという気持ちなのか、ふん!と鼻を鳴らすとかずくんは身を翻して小児科の入院病棟の方へ走って戻っていく。
まだ身軽な小学生のはずなのにドスドスと重い音がしたのは、きっと彼の不機嫌さを表しているのだろう。
「……っ」
残された彼女は、顔を俯けて必死で嗚咽をこらえていた。
それを見て、すぐ近くの扉を開き中庭に出ようかと思った。
彼女のところへ向かおうとしたけれど、騒ぎを聞きつけたらしい他の影の方が素早く走り寄っていくのが視界に映る。
白衣の裾をはためかせて、足早に彼女に駆け寄るまろには全ての会話が聞こえていたんだろうか。
彼女の元へたどり着いてすぐ、目線を合わせるようにその場にしゃがむ。
それに気づいた彼女が、顔を上げた瞬間にぶわりと目に涙を溜め、ぽろぽろとそれがこぼれ落ちていく。
「せんせぇ…」
クッキーの入った袋を、ぎゅっと握りしめる。
くしゃり、とビニールの音がした。
「わたしね、昨日おうち帰れたから…先生にあげたくて一生けんめい作ったんだけど…」
「うん」
まろが穏やかな声で小さく頷くから、彼女の目からは留まることなく涙が流れ続ける。
「でもね、かずくんがダメだって…かんせんしょうのせいで、禁止されてるって…」
そこまで言ってぐっと唇を引き結ぶ彼女は、これ以上泣かないようにと必死に耐えているようにも見えた。
そんな彼女をしゃがんだ態勢から見上げ、「うん」とまろはもう一つ頷いて返す。
「そうやね。確かに、今は病院の決まりも厳しくなっとるから」
「……っ」
「まぁ、だから…」
言いながら、まろは両手を上に向けて彼女の前に差し出した。
何を促されているのか一瞬分からなかったらしい彼女も、すぐに気づき慌ててその大きな手に自分が持っていたクッキーの袋を乗せる。
それを自分の方に引き寄せながら、まろは左手の人差し指を口元に当てた。
「しーっ」とでも言うように。
「2人だけのないしょな。うれしい、ありがとう」
まろがそう言うと、彼女は驚いたように目を見開いた。
だけどすぐに涙で濡れた頬を緩ませ、目を細める。
嬉しそうな笑顔が浮かんだそれに微笑み返してから、まろは立ち上がって彼女に手を差し出した。
「部屋戻ろうか」
その手を取った彼女を促して、2人は病棟の方へと戻っていく。
繋いでいない方の手で袋をしっかりと持つまろの後ろ姿に、俺は思わず「…は、かっこよ」と呟いて笑った。
(続)
コメント
6件
青さんイケメンだし優しすぎるっ かずくん可愛すぎないか...嫉妬って、、 桃さん、まじ分かりまっせ、「かっこよ」ほんとにそれなんよぉッ とにかく青桃が可愛いお話なことで... ありがとうございますっ՞ ̥_ ̫ _ ̥՞♡
いふくん格好良過ぎるんだけど。 「かっこよ」←これはマジ分かる。 けどないくんが言ったら可愛いんだよなぁ~(ˊ⸝⸝o̴̶̷ ̫ o̴̶̷⸝⸝ˋ) かずくんも可愛すぎᐡ⸝⸝> ̫ <⸝⸝ᐡ
いふくんがイケメンすぎる!! 嫉妬してるかずくんかわいいし かっこよって言ってるないちゃんも可愛い!!