なんでも許せる人向け .
ただの思いつきです
何もない街並みを紫は独り歩く
辺りを見回すと最近まで
人が 住んでいた痕跡がそこら中にある。
開けっ放しのドア
家の中に入ると割れたカトラリー
食べかけの腐ったご飯
床に落ちて少し汚れたぬいぐるみ
ぬいぐるみを拾い汚れを払う
紫は物悲しそうにぬいぐるみを見つめて
少し時間が経ち机の上に静かに優しく置く
家を出てまた行く宛てなく歩き回る
自分の存在価値を見出すために
自分が何者かを知るために
人が忽然と居なくなったこの世界で
どうして自分だけが生きているのか
その理由を探すために
ひたすら各街を彷徨い歩く
街中の時計は止まっているから
今が何時かもわからずに
朝も昼も夜も関係なく
毎日毎日 ひたすら歩いて歩いて
歩き回って気づけば世界を一周していた
それでも手がかりは世界のどこにもなく
ひとつあるとするなら自分の記憶だけだった
意識を持った瞬間に眩しくなったと思ったら
その後はずっと独りだった。孤独だった。
各地を巡る事に図書館の本を読んだ
絵本から歴史書まで狂ったように読んだ
人がいない世界は時間は止まったように
何も進まないから好きに読めた
絵本には人間はお腹がすくと書いてあった
図鑑にも虫や動物は栄養を補給するために
個人でも団体でも狩りをすると書いてあった
絵本にも図鑑にも生物は眠ると書いてあった
自分はお腹も空かない
栄養を補給したこともない
眠ったこともない
紫は自分は人間では無いと自覚した
歩いても歩いても疲れない
眠らなくても動けている
お腹も空かないから栄養も摂らない
それでも倒れず壊れず活動できている
人間という生物の歴史も知った
人間はAIという人工知能を作って
世界や生活を豊かにして楽をしたそうだ
その結果は世界のパワーバランスが崩れて
AIに支配される生活になった
その世界から脱却するために人間は
AIではなく自分たちでまた発明をした
AIを完全に壊しパワーバランスを元に戻す
その計画のはずたったが
大きな壁が立ちはだかったという
この発明では人間も滅ぶ
という大きな壁だった
歴史書に書かれていたのはここまでだった
昔の人間は愚かだ
各地で道具や土地を巡って争って
自分が楽しようとしたら支配された
それを滅ぼそうとしたら
自分達まで滅んでしまいそうになる
…いや。滅んでしまった。
この世界はAIを滅ぼし自らも滅ぶという
最悪かつ最終の選択肢を取った世界で
きっと自分は滅び損ないメモリーを失ったAI
この間入った家の地域は
滅ぶことを知らなかったんだ
世界地図を見たら実行したと思われる国の
真反対側にある国の地域だった
その国は田舎でAIの手が
行き届いてない 地域だったから、
いつも通り 家族で食卓を囲んでいたら
急に白い光が降って
そのまま抵抗も出来ずに死んだ
太陽の真反対に見えるあの白い光が
きっと世界が滅んだ元凶
あれを空に打ち上げてAIを滅ぼし
人間をも滅ぼす白い光
光は日に日に強くなっている
あれがまた光って世界を包んで
俺を滅ぼす未来は遠くない
それでもいい。自分の役割が分かった。
これを手記に残すことだ
この歴史を前に見た歴史書みたいに
簡潔に詳しくまとめて残しておく
そしたらきっと生き残りが見つけて
また世界を再建してくれる
けれど歴史は繰り返されている
文明が発達しすぎたら
最後には自分の首を締める
苦しくなって死んだとしても
また次の世代が繰り返す
それが世界の理と言っても過言じゃない
紫は何を残せるのか。
新しい生物は紫が作るのか、出会うのか。
もし作れたとして、出会ったとして
どんなことが出来るのか。
それは彼にしか分からないけれど
彼は白い光に背を向けて
太陽に向かって歩いていく
その先に滅亡しか無かったとしても。
以上です。ありがとうございました。
⇣今日の作業曲⇣
神聖かまってちゃん / 夕暮れの鳥
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