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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第69話 〚隣にいる資格〛
――西園寺恒一視点
大広間は、
やけにうるさかった。
笑い声。
皿の音。
カレーの匂い。
——全部、
どうでもいい。
西園寺恒一の視線は、
最初から
一箇所にしか向いていなかった。
澪。
そして。
その隣に、
当たり前のように座っている
海翔。
(……またか)
スプーンを持つ手に、
自然と力が入る。
(なんで、
あいつなんだよ)
澪は、
楽しそうに笑っている。
無理していない。
困ってもいない。
——それが、
一番気に入らなかった。
(俺の方が、
澪のこと見てた)
(俺の方が、
先に気づいてた)
(なのに)
海翔は、
澪の話に
静かに相槌を打つだけ。
大げさでもない。
近づきすぎてもいない。
でも。
一度も、離れない。
(……独占してる)
そう、
西園寺の目には
映った。
担任が決めた席。
距離。
配置。
全部、
海翔に都合が良すぎる。
(守ってるつもりか?)
(ヒーロー気取りかよ)
心の奥で、
嫉妬が
音を立てて広がる。
でも。
西園寺は、
動かなかった。
——動けなかった。
今、
澪の周りには
“壁”がある。
海翔。
玲央。
班の空気。
不用意に踏み込めば、
自分が浮く。
それは、
分かっている。
(……今じゃない)
そう、
歯を噛みしめる。
でも。
目だけは、
離せなかった。
澪が笑うたび、
胸の奥が
ざわつく。
(あんな顔、
俺には向けない)
その事実が、
じわじわと
心を削る。
西園寺は、
スプーンを置いた。
カレーは、
まだ残っている。
でも、
味がしなかった。
(……奪われてる)
そう思った瞬間。
——それは、
完全な誤解だということに、
彼だけが
気づいていなかった。
守られているのと、
選ばれているのは、
違う。
その違いを、
理解できないまま。
西園寺恒一の嫉妬は、
静かに、
深く沈んでいった。
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