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コメント
1件
うわ、これ…ラストの怖さが半端ないですね。最初は「優しくて我慢強い子」のほっこりしたエピソードかと思いきや、涼太くんの『変わって』の一言で全ての印象がひっくり返りました。あのインターホンのシーン、想像するだけで背筋が凍ります。「痛かった」という言葉が、最初は共感を誘うフレーズだったのに、最後には呪いのように変わってしまう構造が巧みすぎる。主人公が善意でかけた「我儘言っていいよ」が、涼太くんの中で歪んで『代われ』って解釈されてるところも切なくて怖い。短いのに怖さと後味の悪さが詰まった、いいホラーでした…!
#怖い話
K 主人公受けしか勝たん 新垢
1,605
44
59
#不思議な話
雪
71
「痛かった」
これは私が小学校6年生の頃の話です
当時、私には「涼太くん」というクラスメイトがいました。涼太くんは優しくていつもニコニコしていてクラスの皆から愛されている存在でした。また、我慢強く、わがままも言わない子だったので近所の大人や先生からも人気のある子でした。
そんな涼太くんの口癖は「痛かった」でした。
涼太くんは不幸体質だったのか怪我をする事が多く、保健室によく行っていました。涼太くんは愛されキャラだったので保健室から帰ってくると皆から「大丈夫!?」「どうしたの!?」などと質問攻めにあっていました。涼太くんはそんな質問に必ず「痛かった」といつもと変わらない笑顔で答えていました。そんな涼太くんを見て皆は「我慢して答えてくれているんだ」「可哀想」と思っていました。もちろん私も涼太くんが好きだったので保健室から帰ってくる度に心配の声を掛けていました。
ですが、皆に人気な涼太くんが気に入らなかったのか学年でも有名ないじめっ子に目をつけられてしまったのです。
初めは物が無くなる、靴の中に虫を入れられるなどの嫌がらせでした。皆は涼太くんに心配の声を掛けていましたが涼太くんは変わらず笑顔で過ごしていました。
そして6月中旬頃、涼太くんは頭に包帯を巻いて学校に来ました。話を聞くと昨日学校から帰っていると誰かに後ろから押され階段から落ちてしまったと言うのです。犯人は分からなかったのですがきっと嫌がらせが効かない涼太くんに腹が立ったいじめっ子だ。クラスの全員がそう思いました。それでも涼太くんはいつも通り「痛かった」の一言で終わらせました。
いつもなら流せるその言葉に何故か私は腹が立ち、気づけば涼太くんに怒鳴っていました。
「なんでいつもそうやって我慢するんだよ!?やられてばっかで悔しくないのかよ!?もっと怒れよ!『痛かった』の一言で終わらせんな!!」
クラス内に私の怒号が響き渡りクラスの子が私を「落ち着いて」となだめてくれました。それでも私の涼太くんへの怒りにも似た感情は抑えられませんでした。そんな私に涼太くんは一言、
『ありがとう』
と言いました。
それから感情が収まった私は涼太くんに怒鳴ってごめんと謝りました。そして溜め込まなくていい、時には我儘も言っていいという事を伝えました。涼太くんは少し驚いたような顔をし、またいつもの笑顔を向けてくれました。
それから涼太くんはたまに私に愚痴を吐いてくれるようになりました。「いじめられて辛い」「本当は全部痛くて泣きたかった」など今まで溜め込んできたことを話してくれるようになりました。そして話し終わった後に必ず『ありがとう』と少し安心したような表情で言ってくれました。私はそれがたまらなく嬉しかったです。
そしてそんな日々が1ヶ月程続き、夏休みに入りました。私は夏休み前最後の学校の日に涼太くんに「夏休み中も話したい事があったらいつでも来ていいから」と伝え「溜め込まないこと」と涼太くんと約束をして夏休みに入りました。
そして夏休みに入ってから1週間が経った頃、涼太くんのお母さんから連絡が来ました
『涼太が交通事故で亡くなった』と
私は受け入れられませんでした。だって1週間前までいつも通り涼太くんと話して、約束をして、夏休み中も話せると信じていたから。きっと悪い夢だ、そう思い込むことにしました。
でも夏休みに入ってから2週間、3週間が経っても涼太くんが私の家に来る事はありませんでした。当たり前です。涼太くんはもうこの世に居ないのですから。でもその事を信じたら自分の中で何かが崩れる気がして怖かったんです。
そして涼太くんが来ると信じて過ごしていた夏休みも終わりが近づいて来た頃。
『ピンポーン』
チャイムの音が家に響きました。
私は音が鳴った瞬間インターホンに走りました。「涼太くんが来てくれたんだ!」そう思い急いで階段を駆け下りました。
インターホンには頭から血を流した涼太くんが映っていました。
私は涼太くんが来てくれた事が嬉しくそんな事気にもせず通話状態にしました。
「涼太くん!?ずっと来てくれなくて心配してたんだよ!?やっぱり亡くなったなんて嘘だったんだ!」
『、、、』
しばらくの沈黙の後涼太くんは一言言いました
『痛かった』
しばらく聞いていなかったその言葉を聞いて私は言いました。
「その言葉やめろって何回も言ったじゃん!痛かったなら俺に、、、」
怒鳴ろうとした瞬間
『だから変わって』
涼太くんはそう言いました。
私は意味が分からずその場に固まってしまいました。どういう意味か聞き返そうとした瞬間
『痛かった。すごく痛かった。なのに誰も助けてくれなかった。何回も変わって、変わってって言ったのに誰も変わってくれなかった。だから○○くんが変わって。○○くんが僕の変わりに死んで。○○くん言ってくれたよね?我儘言っていいって。溜め込まなくていいって。僕ずっと信じてたんだよ?痛くて辛くても○○くんが全部変わってくれるって。嘘だったの?ねぇ。ねぇ。ねぇってば。変わって、、、!変わってよ!僕の変わりに死んでよ!ねぇ!!!』
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、
ドンドンドンドンドンッ!!
鳴り響くチャイムの音、激しく揺れる玄関のドア、そして普段と全く違う涼太くんの声、表情に私はその場にうずくまって泣き喚きました。
そんな状態から5分くらい経った頃。ふと全ての音がピタッと止みました。私は恐る恐るインターホンを覗きました。そこには無表情の涼太くんが映っていました。そして一言
『嘘つき』
そう言って通話が切れました。私はその後糸が切れたようにその場で眠ってしまいました。次に目が覚めた時、もう外は暗くなっていました。帰ってきた母親が倒れているのを発見し私に何があったのかを問い詰めました。私は言い出す事ができませんでした。
涼太くんの最後の『嘘つき』という言葉が頭の中で反響し頭から離れませんでした。何年も何年も大人になった今でも、あの言葉は私の中に残り続けています。
この言葉が頭から離れないのはきっと涼太くんの私への恨みなのでしょう。変わってくれなかった、私への。私はこの罪を一生を掛けて償っていかなければならないのです。そして私は涼太くんへの償いとして、涼太くんの存在を絶対に忘れないように今でもこの言葉を使い続けています。
『「痛かった」』