テラーノベル
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episode1 陸の水槽
湿った空気のせいで人間関係を拗らす。
どっか幼稚だから、品がないから、愛想がないから、返事が下手だから
どんな理由でもいいから当てつける。
嫌いを証明するために当てつけられる。
ちょっとずつ増えていくウイルスみたいに増えていくのだ。
陸中にどんどん泥水を貯められていく、陸の水槽だ。
青い空を見たのはもう一週間前のことだろうか
灰色の雲に包まれて学校もなんだか湿っぽい。
生ぬるい友情関係に火をつけたのは誰だろうかお陰で低温やけどをしてしまう。
席についてああ今日はどう過ごそうと人を見る。
炭酸みたいな友達が欲しかった。
「何してるん?そんな俺見つめてそんな好き?笑」
「あ、ぁごめん。見ない、もう見ないから。」
急に口に洗剤を入れられたみたいだった。
一瞬で口止めされて、飲み込ませないのに出すこともさせないような。
episode2 難しい話には手を添えて
ぼーっと見つめてる先には同じクラスのお調子者
柚木千秋が居たそうだった。初めて話すのに好きなんとかよく言えるなって思った。
けど人としては好きだし嫌いではない。どんな返事したらいいか分からないからもう見ない。
口に入れられた洗剤が不味かったから。
「ん〜?見ないの〜?そっか俺ね、七草環見んの好きだよー??」
「嫌だろ?ずっと目線が一緒なのだから辞める
ごめんな柚木。」
「まぁそれはどうでもいいからさ、俺と一緒遊び行こうぜ。今日暇だろ?笑じゃ授業始まるからまた終わったらどこ行くか決めようぜ?」
まともに話すの今日が初めてのはずなのに
なんでこんなに打ち解けてるのか不思議だった。
話してる間魔法がかかってたのかもしれない柚木千秋とは炭酸みたいな男だった。
自分の中にある難しくて触れがたい所を洗い流すように少し痛くてヒリついてしまう所に心が奪われていた。手を添えて欲しかったはずなのに、今じゃハイター漬けにされてるみたいで心なしか塩素の匂いがした。
紫陽花の色も抜けてしまうほど濃い塩素が、心のモヤの色を抜いた。
episode3 一目惚れ同士ってあり、?
「七草どこ行くー?てか七草って長い!
環でいいよね?ね、環?」
「1文字しか変わらんて…笑。
俺はどこでもいいけど、言い出しっぺはなんかないの?」
「んーわかんない。だって俺環とデートしたいだけだもん?笑なんちゃって。」
お調子者とは本当に先が読めなくて幸先不安定だ。
毎回急にキスされるんじゃないかと思いくらい近くに来たり、いちいち行動が大きい。
「バカかよ。笑俺ら、今日まともに喋ったんだぞ?」
「バカでいいよ。俺一目惚れしてるもん、環に。」
意味わからないよ。けどそのままでいいよね。
それが千秋なりの愛なんだろう。
捻くれたやつに一目惚れするほどお前も変なやつなんだな。ハートの形も歪だろ、どんな形をしているのかは知らないけれど綺麗だとは言い難いはず。それなのによく触れてくるなと思った。
そんな所まで受け止めきって、手を添えてあげれる自分も知らないところで知らない自分が千秋に恋をしている。
一目惚れなのかずっと心は素直だったのか分からないけれどお調子者で炭酸みたいなやつを好む傾向だったことは間違えない。
episode4 素性がすぐに分かる奴
「もうさめんどいからカラオケでいい?
俺2人になれるんだったらどこでもいいや。」
「あ、うん。俺会員だからそこのカラオケ
フリータイム500円で行ける、、。」
結局どこに歩くか迷ってた行き先が、近場のカラオケに決まった。
自分の心の影が少しカラオケにいきがってたなんて言えない。千秋だけ一目惚れしてるってことにしておけばいい。
まだ言うのは早い気がしている。もう少し踊らせてみたい。
そんなこんなでカラオケの個室に入る。
どうせ、千秋が一瞬で崩れるのは目に見えていた。
「環…、俺、環が好き。俺の感だけどお前は全部受け止めてくれそう、ね。環はどうなの?」
「千秋、すぐ人を信じちゃうんだね笑
こんな人ほっとけないよ。いいよ?付き合おっか」
すぐに素性を晒してくる。
そんな人を野放しにできなかったし、他の人に取られたら嫌だった。
こんなにすぐに素性が分かる奴を他の人にはもったえなかった。
episode5 息苦しいのに息苦しくない
「本来のからおけじゃないッ…泣、」
「気づいてたくせに笑…けどもう歌えないでしょ?」
向かいの壁にもたれかかって、できるだけ廊下から見られないような端っこで二酸化炭素しかない
空気と一緒に愛されてる。
隣の音漏れした、少し色気のある選曲が2人の耳を閉じた。
「環と俺がしてること歌われてるじゃん笑…
壁によりすぎ、下手したら聞こえちゃうかもよ?」
「手でおさえてるっ…泣、ん’…やばっい、泣
ちあき、っ…?もう、むり、、」
名前しか呼べないほど余裕がなくて初めてこんなに息があってた。
ずっと海の中にいるみたいだった。
嫌いだったはずの息苦しさがだんだん塗り替えられていた。
最初に喋ったときみたいに洗剤をまた口に入れられたようだった。
ずっと塞がれたまま。
幸せがあふれた。
コメント
1件
ああ、読み終わりました…。めちゃくちゃ良かったです。 「洗剤」とか「塩素」っていう、一見きつい比喩が、環くんの心のモヤや痛みを鮮やかに描いてて、編集者の心をぐっと掴まれました。そこに「炭酸みたいな男」の千秋くんがぶつかって、少しずつ色が変わっていく感じが、もうたまらないですね。カラオケのシーン、息苦しいのに塗り替えられていく幸福の描写、本当に繊細で美しかったです。続き、めちゃくちゃ気になります…!