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川崎紙業の件が無事解決して1週間が過ぎた。

新規事業は本格的に動き出すことになり、専務も益々忙しくなった。


「青井君、午後からの資料は準備できてる?」


「はい、先ほどお持ちしましたが」

「ああ、あった」

デスクいっぱいに書類を広げ、電話を片手に資料をめくる専務。


最近はお昼をとる時間もなくて、おにぎりやサンドウィッチ片手に済ませてしまうことが多い。

最初のうちは「体に良くありませんから」と反対したけれど、「時間がないんだ」と言い切られると強くは止められない。

しかたなく、少しでも栄養のあるものをと毎日私がお昼を作ってくるようになった。


「専務、せめてお弁当にしませんか?」


できればお弁当を食べて欲しくて、お弁当とおにぎりやサンドイッチの軽食も両方を用意してきている。

しかし、「こっちがいい」と軽食の方をとられてしまう。

本当はもう少し、ちゃんとした食事をして欲しいんだけれど。


「ああ、そうだ。午後からは河野副社長も同行の視察だから、君は残っていていいよ」


「はい」

河野副社長と聞いて、声のトーンが落ちてしまった。


川崎紙業の騒動の黒幕である河野副社長は、なぜか責任追及されることもなく会社に残っている。

それが私には気に入らない。

しかし、その話をしようとすると専務はすぐに不機嫌になり、黙ってしまう。

それでは私も仕事にならないから、結局その話題は避けている。


***


専務が社外に出て行った午後、私は一人残務をこなした。


専務がいなければ来客もないし、用事を言いつけられることもない。

こんな日には普段できない片付けをしてゆっくり過ごせる。


トントン。


ん?


ノックされたのは専務秘書室のドア。

専務不在なのはわかっているだろうに、何だろう?


「はい」

ドアを開けると、そこにいたのは徹だった。


「お疲れ様」

「お疲れ様です。どうしたんですか?」


まずそう聞いてしまうほど、厳しい顔をしている。


「ちょっといい?」

「はい」


普段ならこちらの都合なんて聞くことなく、もっと言うならノックさえせずに入ってくる徹が、今日はおかしい。



「どうぞ」

徹に秘書室のソファーをすすめ、私も向かい合って座った。


「どうかしたんですか?」


何もなければ、こんな顔でやってくることはないと分かっていても、まずはそう聞くしかない。


「青井さん」


いきなり名字で呼ばれて驚いた。


「はい」


普段2人の時には『麗子』と呼ばれているから、きっと今はプライベートではないって事だろう。


「いくつか聞きたいことがあります」

「はい」


きっと良くない話しだろうと感じ、私は姿勢を正した。


***


「まずは、これを」


徹が出してきた1枚の書類。


私は受け取りサッと目を通した。


「これは?」


「秘書室からの要望書です」


えっ。


そこには、専務専属秘書である私が秘書課としてのチームワークを乱す為、業務に支障が出ていると書かれていた。


「そんな、私は・・・」


「分かっています。君は専務との同行で外出も多いし、勤務場所も他の女性達とは違うから、なかなかスムーズなコミュニケーションがとれないとは思います。特に、君以外の専属秘書はみんな男性だから、余計に悪目立ちするのかもしれないし。それについて責めるつもりはありません。ただ厳しいようだけれど、こんな意見が上がってきているんだということは知っておいてください」


「はい。これから気をつけます」


「気をつけたところで、どうなるとも思えないけれどなあ」


「そうですね」

確かに。


私から見ればいわれのない言いがかりにしか思えないけれど、彼女たちには気に障ることがあるんだろう。

そこは甘んじて受け入れよう。


「で、本題はこっちなんだ」


私の前に並べられた数枚の書類。


それを見た瞬間、私は息をするのを忘れそうになった。


***


「君は社内システムへの上級アクセス権を持っているよね?」

「はい」


先日専務に許可してもらった。


「これは、君のアクセス記録だ。専務秘書としての業務からはかなり逸脱した部分があるようだけれど」

どういう事なんだと、徹が聞いている。


「それは・・・」


どう説明したところで、言い訳にしかならないだろう。

私が河野副社長の動向を探る為に、不要なアクセスをしたのは事実なんだから。


「これは越権行為だね?」

「そうかもしれません」


ここに乗っているのは私が見た記録のほんの一部。

それも、当たり障りのない内容ばかり。

と言うことは、私が何をしたのか河野副社長側はすでに知っている。

その上で、こんな物を出してきたんだ。


「君の処分については、専務と相談させてもらいます」

「はい」

何を言われても反論はできない。



フウー。

徹が大きく息をついた。


「上司としての顔はここまでだ」


「え?」


「ったく、危ないまねしやがって」

さっきまでの冷めた顔から一転、徹は不機嫌そうに眉間にシワを寄せた。

その迫力に、

「・・・ごめんなさい」

私は思わず謝ってしまった。


「お前のことだから、これだけじゃないんだろ?」

うっ、

「それは・・・」


「孝太郎は知っているのか?」

「・・・うん」


「はあぁー」

ガックリと肩を落とす徹。


「今回の件、河野副社長を追い込むチャンスだったんだ。証拠だってそろっていたのに、最後の最後になって孝太郎が『これ以上追求するのはやめた』なんて言うから、おかしいと思ったんだよ」


ええええ。

「それって、私のせいで?」


「それはわからないが、河野副社長ならお前のことを持ち出して脅すくらいのことはするだろうな」


「そんな」

これじゃあ、私は専務の足を引っ張っただけじゃない。


それからしばらく、徹はブツブツと文句を言っていたけれど、私の耳には入ってこなかった。


***


その日の夕方、私は定時をすぎても会社に残っていた。


・・・6時。


・・・7時。


普段できない細々した雑務をこなしながら、専務を待った。


どんなに遅くなっても、専務は1度会社に戻るはず。

明日からの出張の準備もまだのはずだし、夕方にはアメリカ支社からのメールも来ると言っていた。

気の毒なくらい仕事は山積みだから。


・・・8時。


専務は夕食を食べたかなあ。

副社長も一緒だから、きっとどこかで食べているわよね。

もしかして、今日は戻らないかも。

そんなことを考え始めたとき、


バタッ。

専務室のドアが開いた。


「あれ?」


いるとは思っていなかった私がいたことで、驚いた顔をした専務。


「お疲れ様です」

「ああ」


いつもはきちんとまとめられた髪が少しだけ乱れて、疲労感をにじませる表情。

オーバーワークで疲れ切っているのは一目瞭然。


「大丈夫ですか?」

答えのわかっている質問をしてしまった。


「大丈夫だ」


穏やかな声で答えた専務は、私の元に歩み寄る。

そして、


ギューッと、私を抱きしめた。


「せ、専務」

本当なら大声で叫びたいのに、声が出ない。


就業時間外とは言え職場で抱き合うなんて考えられないのに、突き放すことができない。

私はただ、その場に立ち尽くした。


「悪い。文句なら後でいくらでも聞くから、少しだけこうしていてくれ」

背中に手を回し、私の肩の顔に埋めた専務の体が少しだけ揺れている。


私も専務の体に手を回し、そっと抱きしめた。


***


「こんな時間まで残っていたのか?」


どのくらい時間が経った後だろう、専務が私を見下ろしながらいつもの口調で聞いてきた。


私は今日、専務に文句を言いたくて残っていた。


今回の件は河野副社長を弾劾できるチャンスだったのに、なぜそれをしなかったの?

なぜ私をかばって、河野副社長を許すようなことをしたの?

なぜ私に、何も言わないの?

そう言って問い詰めるつもりだった。


しかし、専務の疲れきった表情を見てしまったら文句なんて言えない。


「どうした?」

そう問いかける声はいつもより優しい。


「私のせいで、河野副社長に脅されたんですよね?」

「・・・」


返事は返ってこなかった。

でも、これは肯定って事。


「離してください」

さっきからずっと抱き合ったままだった体を、そっと押し戻す。


「イヤだ」

専務はギュッと回した腕に力を込めた。


***


その後、私達は一緒に会社を出た。

迷いもためらいもなく、私の本能がそう求めた。

今夜は一緒にいたいと。



「すごい部屋ね」


さすがに私の部屋のシングルベッドでは狭いし、ムードもなさ過ぎると一流ホテルのスイートをとってくれた。


「たまにはいいだろう」


たまにどころか、私にとっては一生の記念になるかも。

そう思ってしまうくらい豪華な部屋。



「わあー、見て。夜景がすごく綺麗」


高層階の窓から見下ろす街は、まるで宝石箱のよう。


「美人のくせに、ちっちゃな事で喜ぶんだな」

ポツリと呟かれた言葉。


「美人に生まれたことが幸せとは限らないわ」


こんな事人前で言えば、非難の嵐だろうな。

でも、これが正直な気持ち。


「そうだな、金持ちが幸せとは限らないしな」

「そうね.」


どんなに幸せそうに見えたって、人にはそれぞれ苦労があるのよね。


***


「河野副社長が、私の不正アクセスの件を持ち出したんでしょ?」

シャワーを浴び、バスローブ姿でベットに腰掛けながらやっと口にした。


「ああ、そうだ」

「私のせいで、専務が」

「オイッ」

ギロッと睨まれた。


そう言えば、ホテルに向かう車の中で、仕事を離れたら「専務」と呼ぶなと言われたんだった。


「ごめん。でもね、私のせいで孝太郎に迷惑をかけたくないの」

「分かっている。でも、誰がなんと言おうと俺はお前を手放す気はない」

「孝太郎」


不覚にも、涙がこぼれそうになった。

でも、泣かない。

どんなことがあっても私が孝太郎を守る。


自分を失ってもいいと思えるほど、人を愛したことはなかった。

この人のためになら、何でもできると思える人に初めて出会った。

髪の毛1本までもが愛おしくて、孝太郎を思うだけで胸が苦しい。


その夜、私達は感情のままに求め合った。

初めての時には痛みの方が強かったけれど、今夜は違う。

その温もりも、匂いも、感覚も、すべてが幸せを実感させてくれた。




「孝太郎」


「ん?」

まだ眠そうに返事をする孝太郎。


「明日から5日間の予定で香港出張よね?」

「ああ。もう日付が変わったから今日な」


そうか、しばらくお別れなのね。


「河野副社長のことは俺が話を付けるから、何もするな。何を言われても気にするな。いいな?」

「うん」


「まだ早いからもう少し寝ていろ」と布団を掛けられ、私はもう一度抱きしめられた。


***


専務が出張に行って数日。

私はいつも通り日常業務をこなしていた。


トゥルル トゥルル。

内線電話の呼び出し音。


「はい、専務秘書室です」


「秘書課の山田です」


それは、意外な人からの電話。

普段挨拶程度しかしない秘書課の山田早百合さん。


「お疲れ様です」

「お疲れ様です。突然ですが、今日のお昼に付き合ってもらえませんか?」


え?


山田早百合さんは秘書課の3年目。

確か、銀行の頭取のお嬢さんだと聞いた。

私との接点なんてまるでないのに、なぜだろう。


「ダメですか?」

「いえ」


なぜ誘われたかはわからないけれど、断わる理由もない。

この機会に、他の秘書さんと親しくなれるなら、悪くはない。


「いいですよ。ご一緒します」

「本当ですか?」

「はい」


「よかったー」

嬉しそうな山田さん。


何がそんなに嬉しいんだろ。

何かあるのかな?

多少疑心暗鬼になりながらも、私はランチの約束をした。


***


「ここ、とっても美味しいんです」

ニコニコと笑いながら高そうな和食店へ入っていく山田さん。


「え、ここ?」


OLのランチにはあまりにも高級そうで、足が止った。


「大丈夫ですから。さあ行きましょう」

「え、ええ」


山田さんに腕を引かれ、私も店に入った。



通されたのは奥まったところにある和室。

着物を着た仲居さんに案内され、板張りの廊下を歩きながら何かおかしいと私も感じ始めた。


「失礼します」

音もなく引き戸を開けた山田さんは、ぺこりと頭を下げてから部屋へと入って行く。


私もそれに続いた。



部屋に入り、私は固まった。

その衝撃は強すぎて、立派なお部屋も、豪華すぎるランチも目に入らない。


「突然で申し訳ない。驚かせてしまったかな?」


人の良さそうな穏やかな声。

本性を知っている私でさえ騙されそうになる優しい笑顔。

こういう人が、本当の悪魔だと思う。


「青井さん、ごめんなさいね」

小さな声で、山田さんが謝った。



私と山田さんが通された部屋には、すでに2人の先客がいた。


1人は河野副社長。

できることなら顔を見たくない相手。


もう1人は、50代に見える女性。

少しグレーがかった髪を綺麗にセットし、色白の肌にナチュラルメイク。

服も落ち着いていて上品。

いかにもいいところの奥様って感じの人。


誰だろう?

少なくとも会社では会ったことがない。


河野副社長の奥さん?

イヤ違う、写真で見た奥さんは別人。

それじゃあ・・・


「そんな所に立ってないでお座りなさい」

注意するように口を開いた女性。


「はい」

反射的に山田さんが動いた。


私は一瞬立ち止まったけれど、このままでいるのも大人げないと席に着くことにした。


***


「青井君、急に呼び出して申し訳ないね」

そんなこと全く思ってもいないくせに、口先だけで詫びてみせる河野副社長。


「いえ」


そもそも、私は呼び出された覚えはない。

河野副社長がいると分かっていたら来なかった。

私は、騙して連れてこられた。


「そんな怒った顔をせずに、さあ食べなさい」


「・・・」

まるで何の確執もないように、笑顔で食事を勧める河野副社長に私は返事をしなかった。


口をきくのも、顔を見るのも、同じ空気を吸うのもイヤ。

河野副社長とは関わりたくない。

そんな気持ちで無視を貫いた。


なぜこんな事をするんだろう。

また何か企んでいるんだろうか?

考えれば考えるほど、自分の目つきが悪くなっていくのを感じる。


「青井さん、せっかくだからいただきましょう?」

この空気に耐えきれなくなったのか、山田さんが声をかけた。


目の前に並べられた豪華な食事は、普段の私の昼食には絶対に出てこないような手の込んだ物ばかり。

河野副社長は憎いけれど、この料理にも作った人にも罪はない。


「いただきます」

私は手を合わせ、食事に手を付けた。


***


「で、早百合ちゃんはいくつになったの?」

上品な婦人は山田さんと知り合いだったようで、にこやかに話しかけている。


「もう25ですわ。おばさま」

山田さんの方も笑顔で答える。


「あら、そろそろ結婚してもいい年頃ね」


「ヤダ、おばさまったら」


楽しそうな山田さんと婦人の会話を聞きながら、この場にいる自分に対する違和感が膨らむ。


私はなぜ、ここにいるんだろう?


「青井さん、仕事の方は慣れたかね?」

食事の手を止め、意味ありげに私を見る河野副社長。


フン。

私の仕事を邪魔しているのは、あなたじゃないの。


私は返事をせずに、見つめ返した。


「専務は君のことを随分気に入っておられるようだね」

「・・・」


嫌みな言い方。

河野副社長は、きっとそのことが気に入らないのよね。


「でなきゃ、君のために私に頭を下げたりはしないだろう?」


「「えっ」」

私と婦人の声が重なった。


河野副社長は、私を試している。

公にできないとはいえ、秘密を知っている私を牽制したいんだと思う。

実際、あのプライドの高い専務が、頭を下げたなんて信じられないし。


「ねえ、あなた」

1人考え込んでいた私は、急に呼ばれて顔を上げた。


「あなた、青井さんとおっしゃるのね?」

「はい」


婦人がジッと私を見ている。

なんだか、冷たい視線。

どうやら、私はこの人にも嫌われているらしい。


***


「随分綺麗な方だけれど、上の者に対する礼儀がなっていないわね」

冷静に淡々と私に向かって話す婦人。


確かに、この場での私の態度は褒められた物ではない。

それは自分自身が一番よくわかっている。

しかし、それにはそれなりの理由があって、


「こんな人を秘書にする神経がわからないわ」

呆れた顔で、今度は河野副社長の方を見る。


「生意気さを補って余るほど、この美貌は魅力的なんでしょう。専務もまだ若いって事です」

全くフォローには聞こえないことを言って、河野副社長は笑って見せた。


何だろうこの2人。

河野副社長は敬語を使っているようだし、夫人も社内事情に詳しそう。


「いつまでも黙っていないで、挨拶くらいなさい」

まるで子供を叱るような口調でピシャリと言われ、私はやっと我に返った。


この場に連れてこられた経緯も、河野副社長と同席だったことも、すべてが不満でしかない。

でも、目の前の婦人には関係のないこと。

一体どこの誰かわ知らないけれど、人として最低限の礼節はわきまえるべきだ。


「鈴木専務の秘書をしております、青井麗子と申します。失礼な態度をとり申し訳ありません」

膝の上に手をそろえ、頭を下げた。


「確かに、仮にも自分の会社の副社長に対する態度ではないわね。でも、一応ご挨拶いただいたので」

そう言うと、夫人は少し姿勢を正して私の方に向いた。

「はじめまして青井麗子さん。私は鈴木華子と申します。鈴木孝太郎の母です」


えっ。


瞬間、私の周りから音が消えた。


どうしよう・・・どうしよう・・・

私は取り返しのつかないことをしてしまった。


この後どんな話をしたのか、どうやって会社に戻ったのか、私には記憶がない。

それだけ衝撃的な出来事だった。


***


久しぶりに落ち込んだ。

自分の浅はかな行動と、我慢できなかった性格を呪った。


家に帰りベットに入ってもなかなか寝付けず、結局朝を向かえた。

しかし、あと2日は帰ってこない専務の留守を守るためには仕事を休むわけにいかないし、家にいて悶々とするくらいならといつも通り出社した。


トントン。


ん?

誰だろう?


専務もいない日に、来客の予定はなかったはず。


「はい」

ノックされたドアを開ける。


そこにいたのは、昨日の昼に会った専務のお母様だった。




「昨日は突然ごめんなさいね」

「いえ、私こそ申し訳ありませんでした」


コーヒーはいいから座ってくれと言われ、私は向かい合って腰を下ろした。


「あなたって、有名人なのね」

「え?」

意味がわからず問い返す。


「随分な経歴をお持ちのようね」


パサッと、放られた書類がテーブルに落ちた。

それは私に関する調査書。


「学生時代から派手に遊んでいたようだし、勤めた会社も3ヶ月で解雇。不倫と情報漏洩が原因ですって?それに、うちに来る前は水商売をしていたらしいじゃない。綺麗な顔をして素行が悪すぎるわ」


「それは・・・」


全部嘘ですと言えば信じてもらえるだろうか?

きっとダメだろうな。

奥様は私のことを完全に嫌っているんだから。


「あと1ヶ月足らずで辞める契約らしいけれど、できればすぐにでも辞めてちょうだい。あなたがこの会社にいると思うだけで気分が悪いわ」


こんな時泣けるようなかわいい性格なら良かったと思うけれど、私は違う。

ただ無表情に奥様を見返していた。


「孝太郎のことを思うなら、黙ってここから消えてちょうだい」


「・・・」

何も言えなかった。


私はきっと、ここにいたらいけない人間。

いくら専務のことが好きでも、私がいることで誰かが傷つくのを見たくはない。


迷いはなかった。

これが一番専務のためと思えた。


私の恋なんてそんなものよと心の中で呟きながら、会社を辞め専務の下から消える決心をした。


氷の美女と冷血王子

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