レベル 1 畠山 里香
雨が降りしきる中で、私は泣いて歩いた。まさかね……。 きっと、別人で……間違いよね……。
なのに、父さんの言ったことが頭から離れなかった……。
私って、不幸よね……。
ほんと、つくづく……。
さあ、事務所へ戻って書類を束ねて、実家へ帰ろう。 もうこの町には戻らないつもりだ。
もう……。辞めよう……。
別の仕事を探そう……。
こんな町なんて、もうどうでもいいんだわ。
西村さん……。
何故、私にこんな依頼をしたのだ。何故なのだろう?何故、私に……。
死んだとされる西村の一人娘は一体?
西村 研次郎は私の正式な依頼人だった。ゴミ屋敷をどうしても調査してほしいと……。今では、買い手はいるが、当時はいなかったのだ。
最初に出会った西村さんは、やたらと早口で何事も急いで決めてしまうようなお調子者のような性格で、まったく落ち着きのない印象だった。
私は愛車に乗って雨の中を走った。雨に濡れた車窓から見えるゴミ屋敷は、どこかシュンと寂れているかのように思えた。西村さん……何故……。そして……私は……。
この依頼自体に、どうしようもないどす黒い悪意を感じずにはいられなかった。
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