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レベル1 大久保 徹
「うっぷ!」
コールタールの中は、意外にも透明な水が底辺りにあった。結構深いところまで潜ると、扉のある床へとつながっていた。今でも気持ち悪い。洋服のベタベタがなくなったけれど、口の中が重く。酷い吐き気を覚えた。
「うげーーー!」
おじさんも隣で床でもがいている。
「うげっ! ……あ、あれ? おじさん! あれは何?!」
「うん? うっ! あー、気持ち悪い……」
ぼくの目の前にある灰色で重そうな金属製の扉は、所々に「危険」と書かれた警告テープが貼られ……。そして……。
「レベル1……?」
そう中央に赤いペンキで書かれた扉だった。
警告テープをはがして、おじさんが力を入れるとガコンと音と共に扉は開いた。中は、真っ暗だった。明かりはないかな? 扉の傍に懐中電灯が三人分ぶら下がっていた。
「なんだか、トンネルみたいだ……」
「ああ、こりゃトンネルだな」
おじさんは懐中電灯で、トンネルの上を照らした。複雑なパイプが絡み合っている。
「ここを通るしかないな。徹くん。ほら、レベル2へって書いてある。奥へ行こうよ」
おじさんが興味を引かれたみたいだ。
「やっぱり、中は安全じゃないみたいだな? 徹くん。ほら、警告っていっぱい書いてある」
「うん?」
床は土だった。そして、両脇は石造りでできているトンネルだ。それと所狭しと警告という字が赤いペンキがぬりたくってあった。
「さあ、先に進もうか」
「どこまで歩くんだろう?」
トンネル内は、無音だった。真っ暗な空間で、おじさんとぼくの呼吸音だけしか聞こえない。両脇に続く石造りの壁や足元をおじさんが時々、照らしてくれた。ぼくも懐中電灯を持っているけど、使わなかった。いざという時のために明かりを取っておくことにしているんだ。
「な、何?!」
急に無音だったトンネル内の奥から、風の音が強くなった。ぼくは怖くて耳を塞いだけど……。更に強くなる風の音と共に何か巨大なものが回転する音がした。もう、耳を塞いでも無理! 轟音になっていて、ここまで風が吹いてきそう!
「ありゃ、なんだ?」
トンネルの奥へとおじさんが懐中電灯を照らしている。
「あ!! え?!」
おじさんが叫んで真っ青になった。
「おじさん! あ、あれは工場扇だよ! 父さんと一緒に見たことがある!
こっちを向いたら大変!!」
「ど、どうする?!」
おじさんは冷や汗を掻いていた。
無理もない。トンネルの東側を向いている工場扇がこっちに向いたら……。
「後ろは頑丈な扉だ! 一旦戻るか?! このままだと風で叩き潰される!!」
「うん!!」
冷やっとしたトンネル内で、一瞬。すぐそこの壁についたドアが開いたことに気が付いた。
「あ?! 誰かいるの?!」