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眠りにつくと暗闇の世界へ誘われていく。
今宵の夜はいつにも増して肌寒く感じた。
「呪い」それは全ての人間必ず持つ。
「呪い」それを持たない人間等存在しない。
必ず何かしらの呪いは誰にも存在する。
「呪い」それは些細な言葉や、行動ひとつひとつにある。
赤谷蓮は昔、父から言われた言葉を思い出していた。
「お前の力は、誰かを傷つけるためじゃない。誰かを守る為に使うんだ。」
父から言われた言葉だが、いつこんな言葉を言われたのか全く思い出せない。
そして赤谷蓮は眼を覚ます。
赤谷蓮にとって3回目の夢が始まった。
「ん…きたか」
ベッドから起き上がり部屋を出ると
廊下には今泉花と橘美香が部屋から出てきていた。
「遅かったね」
今泉花が体調を伺うように顔を近づけてきた。
赤谷蓮は驚き一歩下がる。
「大丈夫だよ…早いとこ赤い扉探そう!」
赤谷蓮は頬を赤らめながらも3人は赤い扉を探しに行く。
また迷いの洞窟へ辿り着き、前回と一緒のルートで迷いの洞窟を抜け出す。
扉を開け、次の部屋へ入ると謎の祭壇へと辿り着いた。
もう行き止まりなのでここが最後の部屋だろう。
祭壇の前には大きな棺桶が置いてあり、部屋の中心には巨大な儀式の印が描かれている。
「ここが…最後の部屋?…」
橘美香が棺桶に近づくといきなり部屋全体が揺れ始める。
次の瞬間、赤谷蓮達が入ってきた扉が崩れ始め、出られなくなってしまった。
するといきなり今泉花が吹っ飛んだ。
何事かと思い、今泉花のいた方を見てみると、なんと怪物が姿を現していた。
橘美香はすぐ今泉花の方へ駆け寄ろうとするが、怪物は速い動きであっという間に回り込み、橘美香へ襲いかかろうとした。
それを見ていた赤谷蓮は怪物を倒そうと呪いを込めた言葉を使う。
「死ねぇ!」
だが怪物に変わりはなく、橘美香は喰われてしまった。
「そんな…」
次に怪物は今泉花の体を持ち上げ、大きく口を開け飲み込もうとしている。
「やめろ!やめろ!やめろぉぉぉお」
するといきなり、周りの景色、時間が戻り始め、逆行し始めた。
「え…力が勝手に…」
赤谷蓮の力は不安定ではあるが、今まで暴走することはなかった。
「なんで…」
気づくとこの部屋へ入って後ろの扉が崩れるところまで時間が戻った。
今泉花の後ろには煙のように怪物が姿を現した。
怪物が腕を振り下ろすが、赤谷蓮が今泉花に飛び込み怪物の攻撃をかわす。
「うっ…大丈夫!?」
怪物は羽を広げ、勢いつけ高くから足で思いっきり踏みつけてきた。
赤谷蓮はその攻撃を交わしきれずに怪物に踏みつけられ命を落としそうになる。
「ぐぁぁぁあ」
だがまた時間逆行が始まった。
「うっ…また勝手に…」
その後も何度も時間逆行は繰り返した。
何度も何度も殺される。だが殺され、命が途絶える寸前に時間逆行は繰り返される。
だが怪物を殺す呪いの力が全く使えない。
なぜ呪いの力が使えないのだろうか。
憎しみはこんなにもあるのに…
何か変だ…
…..
逃げるにしても怪物の動きは速すぎてすぐに追いつかれる。
「どうすれば…」
あたりを見渡し、何かこの状況を打開できる方法がないか探す。
「あそこだ!」
3人は棺桶の裏まで身を隠すと、さっきまで暴れていた怪物はピタリと動きを止めた。
「な、なんだ…」
すると怪物は土下座するように頭を下げる。
「え、なんなの?」
橘美香が覗き込もうとすると、いきなり棺桶の中から何かの呻き声が聞こえてきた。
「ウゥゥゥゥゥゥゥウ……」
びっくりした赤谷蓮や橘美香は腰を抜かしそうになる。
「び、びっくりした…なんなんだよ…何が起きるんだ…」
何かでてくるのか見ていると何本もの触手が棺桶の蓋を持ち上げる。
中から何か出てくるのかと伺おうとすると、触手の怪物が3人の体を縛りつけてきた。
とてもぬるぬるしていて気持ちが悪い。
「うっ、なんだこれ…」
すると普通の怪物が頭を上げ、自分達の方へ寄ってきた。
「くそ…今回も駄目なのか…」
赤谷蓮は今回も諦め、時間逆行するのを待つ。
普通の怪物が目の前までくると、橘美香が突然泣き出した。
「嫌…嫌だよ、死ぬなんて嫌!」
橘美香が手を伸ばし、赤谷蓮も手を繋いだ。
怪物が橘美香を飲み込もうと口を大きくあける。
「いやぁぁぁあやめてぇぇぇえ」
橘美香が大きな声をあげた。
すると怪物や周りの物や触手など、全てが橘美香を中心に吹き飛んだ。
赤谷蓮や今泉花も同じように壁の方へ叩きつけられる。
「ぐっ」
呪いの力が強い赤谷蓮と手を繋いだことで、橘美香に隠された呪いの力「拒絶」が開放された。
嫌な出来事は拒絶することで、なかったことにでき、
嫌な人や物には拒絶し吹き飛ばすことができる。
それが橘美香の呪いだ。
崩れて道を塞いでいた瓦礫も消え、触手の怪物は棺桶の中へ戻って行った。
壁の方へたたきつけられた怪物は起き上がり怒り狂っている。
赤谷蓮と今泉花は今のうちにこの部屋から脱出しようと試みる。
橘美香は呪いの力がうまく使いこなせずに波動のようなものが彼女からでている。
怪物は少しずつ橘美香の方へ近づいてきていた。
赤谷蓮は橘美香に逃げるように声をかけるが全く聞こえていないようだ。
怪物は徐々に橘美香へ近づく度に波動も強くなっていく。
赤谷蓮と今泉花は部屋から出ると、何故か本館の玄関ホールへとたどり着いた。
「えっなんで玄関ホール…」
赤谷蓮が最後の部屋へ戻ろうとするが玄関ホールから別館へ続く扉は無くなっていた。
「なんで…みか…」
橘美香が自分らを助けようと身代わりになってくれたのだろうか…
「嫌だ…戻れ!戻れ!!」
赤谷蓮は時間逆行の力を使おうとするが、なぜか全く力を使うことができない。
赤谷蓮の呪いの力は橘美香へ渡り、赤谷蓮は呪いの力を一切使うことができなくなってしまったのだ。
「見て!」
今泉花が指差した方を見てみると、玄関の頑丈な扉が赤い扉へと変わっていた。
「そんな…」
橘美香をおいて、脱出しろと言うのか。
赤谷蓮はまた後悔する。
「俺は…だれも守れないのか…」
目から涙がこぼれ落ちそうになる。
今泉花が寄り添う。
「まだ諦めちゃだめだよ…この夢の謎を解明するまでは…」
今泉花が赤谷蓮を支える。
「まだ終わっちゃだめだよ…もう…目の前まできてるんだから…」
今泉花が慰めてくれた。
赤谷蓮の心は崩壊しそうになりながらも
2人は赤い扉を開け、今回の夢を脱出することに成功した。
「さようなら…橘美香」
とある人物はクラス全員が書いてあるノートの橘美香の名前にばつ印をつけた。