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月曜日、予想外の大雨に見舞われながら傘をさし、学校に向かっている時のことだ。杉山は絶対的な違和感を感じていた。
(大野の様子がおかしい……。)
雨音の五月蝿い中でも話を聞き取り、会話はしているのだが。なんというか、反応が遅いのだ。言葉のキャッチボールがスムーズにできないもどかしさがあった。こいつ、意外と態度に出やすいんだよなあと思いながら、杉山は大野に向かって話しかける。
「おい、大野。お前今日ちょっと変だぞ?」
体調でも悪いのかと問いかけると、驚きの混じったような声をえ、と漏らす。
「体調悪いなら、学校休んでもいいんだぞ?」
「いや、そういう訳じゃ……」
返事に含まれる歯切れの悪さを不審に思いながらも、体調は平気だと言う為それを信じてみる。あんまりしつこいのも良くないしと杉山は話題を変え、話を始めた。密かに大野は安堵した。
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体調に問題は無いとばかり、杉山は思っていたから。だからこそ、今現在困惑を隠せずにいた。
「大野くん、体育の授業を見学だなんて、どうしたんだろうね。」
「ねぇ、杉山くん何かしらないの?」
たまえとまる子の会話にも、杉山は首を振るだけだった。
「あいつ、何でもないの一点張りで俺にも何があったか教えてくれないんだよ。」
「大野くんが杉山くんに隠し事だなんて、珍しいね。」
「ああ。おれも、ちょっとショックだぜ。」
信用されてないような感じがしてさと、少しばかり悲しそうにする杉山を見て、暫くすると笛の音が鳴り、皆が整列した。
大野は体育を見学中である。
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授業が終わると、何だか教室が騒がしい。杉山がトイレから戻った時、ドアを開けると大野が質問攻めに合っていた。よく聞くと、そこからは大野に対する心配の声や、単純な疑問が含まれている。
「大野、なんで今日体育休んだんだよ。」
「もしかして、日曜日にどっか怪我でもしたのかブー? 」
「おいおい、大丈夫かよ?!」
はまじやブー太郎に、関口といった声を始めとして段々と声の大きさが上がり、何だどうしたと人が集まってくる。
(これは、ちょっと不味いんじゃないか。)
それを見た杉山が止めに入ろうと、又、大野が口を開こうとした時だった。
「僕、日曜日に大野くんが病院に入っていくところ、見たよ。」
確か、君のお母さんと一緒じゃなかったかい?と、続く 長沢の話に、その場にいた全員が驚く。
「は、まじかよ長沢?!」
「どこの病院だブー!?!?」
「あの大野がか?!」
病院。しかも親と一緒という言葉に、これは大事なのではと騒ぎが広まる。どこかで嘘を疑う声もあったが、その殆どは飲み込まれていった。
一方で空いた口は閉じ、大野は固まっている。反論もしてこなかった。
「そうだな。本当大きくて、総合病院って書いてあったよ。 」
あんな立派な病院、僕も入ったことないねと話し終えた長沢は、杉山から見て少しばかりの優越感に浸っているように感じた。
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長沢の話した総合病院。
総合病院どころか普通の病院にすら 馴染みの無い杉山は、そこに大野が行ったという事実に驚愕した。
どうして病院に行ったのだろう。
どうして話をしてくれなかったのだろう。
朝から様子が変だったのはそのせいなのか。
大野の好きな体育の授業だって、今日は見学をしていたから。見学の前の日に病院に行ったということは、お見舞いとかでは無く、本人に理由があるのだろう。何故。どうして病院なんかに。
次から次へと浮かぶ疑問に、頭をぐるぐると動かす。
段々と混乱してきたところで、杉山はでもと思い返す。
(少なくとも、大野はそれを隠そうとしていた。俺にもってのは納得がいかないけど、この状況は良くないよな。)
杉山は自分のいた入り口から一歩前へと出た。
「おい、お前ら!!」
突然の大声に、皆が一斉に杉山の方を見る。
「本人が言いたくなさそうにしていることを、無理矢理話すなんて良くないぞ!!!!」
それにお前と、今度は長沢の方を向いて杉山は言った。
「お前も、病院なんてプライベートの事、勝手に人に話すなよな!!そういう事は黙ってるのが礼儀だぞ!!!」
杉山の叱りで事態は収まり、杉山は席につく。はまじ含めた三人は、申し訳無さそうに謝罪し、 機嫌の悪くなった長沢は、藤木へと当たり始めた。