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きっかけは、俺が最近ハマっていた個人VTuber、逆廻ロウの雑談配信だった。
顔出しもしている界隈では有名なイケメンで、たまたま抽選で少人数のオフ会に当選した俺は
舞い上がる気持ちを抑えきれずに玲於に相談することにした。
もちろん、玲於が激しい独占欲の塊だってことは分かってる。
だから、必死に頭を下げてお願いした。
「本当にすぐ帰るし、そんなに密着したりもしないから!ロウくんに会えるなんて一生に一度あるかないかなんだよ、お願い……!」
玲於は最初、あからさまに不機嫌そうな顔をして黙り込んでいたけれど
俺のあまりの必死さに最後は
「はぁ……。分かったよ。霄くんがそこまで言うなら仕方ない」
と、どこか呆れたように了承してくれた。
そして迎えたオフ会当日。
指定されたお洒落なカフェで、画面越しに見ていた「逆廻ロウ」本人が目の前に現れたときは
心臓が止まるかと思った。
整った顔立ち、柔らかい物腰。
カラオケに移動してからも、彼の歌声に酔いしれながら、夢のような時間を過ごした。
けれど、頭の片隅にはずっと、玲於の顔があった。
約束を破って彼をこれ以上怒らせたくない。
俺は後ろ髪を引かれる思いで、帰ることを切り出し
予定よりもずっと短時間で切り上げて自宅へと急いだ。
帰りの電車の中
ロウくんに撮ってもらった貴重なツーショット写真にメッセージを添えて、玲於に送る。
『そんな密着してないでしょ?他のみんなもいたし。もう解散して今帰ってるところ! 本当に短時間だったでしょ』
すぐに既読がついたけれど、返ってきたのは
『そっか。』
という、一言だけの淡白な返事。
(……あ、これ、まだちょっと機嫌悪いパターンかな)
そう思いつつも、約束通り早く帰ったんだから大丈夫だろうと自分に言い聞かせた。
しかし翌日
玲於と合流してデートをしている最中
並んで歩いていた玲於が不意に足を止め、俺の目を見て低い声で切り出した。
「ねえ、霄くん。あのロウってやつ……もう二度と関わんない方がいい…てか、関わんないで」
「え……? なんで急に。昨日、ちゃんと早く帰ってきたじゃん」
戸惑う俺に、玲於は冷え切った瞳を向ける。
その瞳の奥には、昨日送った写真を見た瞬間に彼の中で膨れ上がった
どろりとした負の感情が渦巻いているのが分かった。
「……とにかくダメ」
玲於の指が、俺の首に嵌まったままのチョーカーに触れる。
グイッと引き寄せられ、耳元で容赦のない釘を刺された。
「分かった? 霄くん。昨日のは『お試し』。結果、俺はあいつが嫌い。だから、もう終わり。次関わったら……分かってるよね?」
有無を言わせぬ玲於の言葉に、俺は喉の奥が引き攣るような感覚を覚えた。
いつもの嫉妬的なものとはどこか違って
焦ったような表情……
「なんか、怒ってる?っていうか、焦ってない…?」
「別に?…霄くんは知らなくていいことだよ」
「え、なにそれ」
玲於の独占欲は、俺が思っている以上に深く
そして鋭く、俺の自由を削り取っていくようだった。