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光が、差し込む。
石の壁に反射して、ぼんやりと部屋を照らす。
「……ん」
ゆっくりと目を開ける。
「……朝か」
体を起こす。
昨日の疲れは、まだ少し残っている。
だが。
それよりも――
「……」
違和感。
何かが、引っかかる。
「……?」
視線を動かす。
部屋。
ベッド。
いつも通り。
「……」
だが。
一つだけ。
違う。
「……近くねぇか」
ぽつりと呟く。
ノスフェラトゥ。
いつもは、部屋の端。
壁にもたれているはずだった。
それが――
今日は、違う。
ベッドのすぐ近く。
椅子に座っている。
「……」
視線が合う。
赤い瞳。
静かに、こちらを見ている。
「……」
数秒。
沈黙。
「……何だよ」
先に口を開く。
「距離バグってんぞ」
軽く言う。
だが。
完全には軽くない。
「……」
ノスフェラトゥは、少しだけ視線を逸らす。
ほんのわずか。
「……問題ない」
短く返す。
「……いやあるだろ」
即ツッコミ。
「いつももっと離れてたぞ」
「……」
沈黙。
だが。
否定しない。
「……」
少しだけ、間があって。
「……夜」
ぽつりと。
「近づいた」
「……あ?」
眉をひそめる。
「何で」
「……」
答えが、遅れる。
ほんの一瞬。
「……確認だ」
低く言う。
「状態の」
「……はぁ?」
明らかに怪しい。
「それでその距離かよ」
「……問題はなかった」
淡々と。
「……」
じっと見る。
嘘ではない。
だが――
それだけでもない。
「……」
ため息をつく。
「……まぁいいけどよ」
完全には追及しない。
それ以上踏み込むと、何か変わりそうで。
「……」
ベッドから降りる。
少し伸びをする。
「……で」
ちらっと見る。
「まだ見てんのか?」
「……」
ノスフェラトゥは、答えない。
だが。
視線は逸らさない。
「……」
一瞬、間。
そして。
「……近い方が」
ぽつりと。
「管理しやすい」
言い訳のような言葉。
「……」
数秒。
「……はは」
思わず笑う。
「言い方、雑すぎだろ」
頭をかく。
「……まぁ」
小さく、息を吐く。
「悪くはねぇけど」
ぼそっと付け足す。
「……」
その一言で。
空気が、少しだけ変わる。
ノスフェラトゥの瞳が、わずかに揺れる。
「……」
だが、何も言わない。
言えない。
「……腹減ったな」
軽く話を変える。
「パンか?」
「……用意する」
すぐに立ち上がる。
動きはいつも通り。
だが。
「……」
ほんの少しだけ。
距離の取り方が、変わっていた。
その朝。
何も起きていない。
戦闘も、衝動も、衝突もない。
ただ――
距離が、変わった。
ほんの少しだけ。
だが確実に。
元には戻らない位置へ。
#見捨てられた