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ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜
第149話 - 〇〇は『ケンカ戦国チャンピオンシップ』を観に行くそうです その20
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2024年01月19日
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2024年01月19日
ナオトは『オメガ・レジェンド』のところへ行くと彼の頬に『おうふくビンタ』をし始めた。
「ほらほら! さっさと起きろよ! おっさん!」
「う、うーん……痛みを感じるということは、私はまだ生きているのだな」
ナオトは『おうふくビンタ』をやめると、彼を指差しながら怒鳴った。
「ああ、そうだ。あんたは生きている。けど、これから俺がぶっ飛ばす! だからさっさと立ち上がれ!」
「己《おのれ》の力を暴走させてしまうような輩《やから》に喝《かつ》を入れられるとは、私もまだまだだな」
『オメガ・レジェンド』はそう言いながら、立ち上がると彼の瞳をしっかりと見ながら、こう言った。
「少年よ、今度は正々堂々、戦おうではないか」
「ああ、そうだな。でも、今度はちゃんと『第三形態』の力を使いこなすから本気で戦わねえとマジで死ぬぞ!」
「そうか。では望み通り、本気で戦ってやろう。まあ、私の頭の中ではあの世で泣き叫ぶ君の姿が思い浮かんでいるがね」
「ふん! そんなことを言っていられるのも今のうちだぜ!」
両者は、ほぼ同時に闘技場に上がると、己《おのれ》の内に宿る力を全て解放した。
『|身体能力超強化・改《スーパーレインフォース》』!!」
「『|大罪の力を封印する鎖《トリニティバインドチェイン》』第三形態……」
その時のナオトの瞳からは殺意や憎悪ではなく、純粋に戦いを楽しみたいという思いが感じられた。
「『|黄色い無邪気な香雪蘭《イエロー・フリージア》』アアアアアアアアアアアアア!!」
ナオトは黄色の鎧を身に纏《まと》うと同時に、瞳の色を暴走時の真紅ではなく水色に染めていた。
その後、彼の背中から黄色の鎖が十本飛び出した。
「今度は鎖も使うから、気をつけろよ?」
「ふん、そんなもので私に勝てるわけがなかろう」
「はは、言うじゃねえか」
「少年こそ、いい目つきになったではないか」
ミノリ(吸血鬼)とミカン(翼が四枚生えている天使)は観客席から二人の試合を観戦するようです。
「ただいまより『ケンカ戦国チャンピオンシップ』決勝戦を開始します! 皆さま! 心ゆくまでお楽しみください!!」
『トワイライト・アクセル』さんが開始の合図を送ってくれたのは予想外だったが、両者はそんなことなど気にせず相手の出方を窺《うかが》い始めた。
観客は二人。実況は一人。バトル形式は一対一。
どちらかが気を失うまで戦い続ける。
場外に出ようと、それは変わらない。
さあ、舞台は整った。戦士たちよ、思う存分戦いに身を投じるがいい!
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
両者は闘技場の床を思い切り蹴ると、ただ一直線に突っ込んでいった。
ぶつかり合う拳と拳。
時間が経つにつれて勢いと威力が増していく両者の攻防は、今大会で最も激しいものだった。
雷と光が戦っているかのような戦いは、さらに激しさを増していく。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
両者の攻防は、すでに人の域を超えていた。
しかしそれでもなお、両者の攻防は止まらない。
二人の激しい攻防からは痛みや疲れなど微塵《みじん》も感じない。
しかし、お互いの拳が顔面に入った瞬間、戦況は大きく変わった。
両者は、ほぼ同時に後退すると遠距離戦を開始した。
「鎖よ、我の前に立ち塞《ふさ》がる敵を攻撃せよ!」
「我が拳に宿りし、聖なる光よ。今こそ、その力で行く手を阻む敵を討ち滅ぼせ!」
「『十鎖《とうさ》の連撃《れんげき》』!!」
「『連続光速拳《れんぞくこうそくけん》』!!」
両者の連続攻撃は、どんどん、どんどん、その勢いを増していった。
二十秒ほどで両者は急に連続攻撃を中断した。
その後、数歩、後退した。
「このままじゃ埒《らち》が明かねえから、そろそろ決着と行こうぜ?」
「そうだな。君との戦いは実に面白かったが、そろそろフィナーレだ」
「考えてることは同じなのに、あんたが言うとなんか腹立つな」
「それは君の精神レベルが子どものままだからではないのか?」
「見た目で判断してると、負けるぞ?」
「見た目が子どもだろうと私は容赦などしない」
「そっか。なら、もうそろそろ俺のことを名前で呼んでくれてもいいんじゃないか?」
「残念だが、私は強者の名前しか覚えられないのだ」
「へえ、それじゃあ、あんたの脳みそに俺の名前を刻み込んでやるよ!」
ナオトは闘技場の床を思い切り蹴ると『オメガ・レジェンド』がいる方に向かって走り始めた。
「君にそんな隙など見せないがな!」
『オメガ・レジェンド』もナオトとまったく同じ動作をすると、ナオトめがけて走り始めた。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
両者の拳がお互いの顔面に刺さる前に、ナオトは少しだけ身を低くして、それを未然に防いだ。
「俺の名前は……本田《ほんだ》 直人《なおと》だあああああああああああ!!」
ナオトの拳が彼の顎《あご》に直撃した直後、ナオトはそのまま彼をぶっ飛ばした。
「ぐあああああああああああああああああああ!!」
彼は空中を数秒間、舞った。
ドサリとうつ伏せで倒れた彼には意識がなかった。
ナオトは天に拳を掲げると、深呼吸をした後《のち》、こう叫んだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
その時、観客席に座っていたミノリ(吸血鬼)とミカン(翼が四枚生えている天使)が抱き合いながら、歓喜の声をあげ始めた。
「試合終了! 『ケンカ戦国チャンピオンシップ』決勝戦を制したのは『本田《ほんだ》 直人《なおと》』選手だあああああああああああああああ!!」
しかし、ナオトがミノリたちのいる方に行こうとしたその時、悲劇は起こった。
「『絶対凍結《アブソリュートフリーズ》』!!」
彼に向けて放たれた魔法が彼に直撃し、一瞬で彼を凍らせてしまったのだから……。
その魔法を発動したのは……。
「はーはっはっは! 油断したな! 少年! いや、『本田《ほんだ》 直人《なおと》』!!」
ついさっき意識を失ったはずの『オメガ・レジェンド』だった。
右手から放ったその魔法は氷系の魔法。
故に、炎系の魔法なら溶かすことが可能であろうが残念ながら、この会場内に炎系魔法を使える者はいなかった。
彼はゆっくりと立ち上がった後も笑い続けている。
彼のその姿を見たミノリ(吸血鬼)の怒りは限界を超えてしまった。
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