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「この……卑怯者おおおおおおおおおおおおお!!」
ミノリはそう叫びながら観客席から闘技場に飛び降りた。(ミカンも慌ててミノリのあとを追った)
ミノリは彼のところまで全力で走ると、彼の腹に両足蹴りをくらわせた。
ミノリは実況の『トワイライト・アクセル』さんのところへナオトを運んでいくミカンの姿を肉眼で確認すると『オメガ・レジェンド』に目を向けた。
「いやあ、私としたことが、まともにくらってしまったよ。はははは」
頭を掻《か》きながら歩いてきた彼は、ミノリを見るなり、こう言った。
「吸血鬼型モンスターチルドレンよ。今すぐ謝れば、許してやる。だから……私に土下座しろ」
ミノリは眉ひとつ動かさずに、こう言った。
「あたしがあんたに謝る理由に心当たりがないから、あたしは自分のしたいようにさせてもらうわ。ということで、あたしと戦ってもらうわよ? 『オメガ・レジェンド』」
「化け物にしては、少しは知恵があるようだな。よし、では少し遊んでやろう」
「それはこっちのセリフよ。ナオトとの戦闘であんたが体力のほとんどを使い切ってることくらい、あたしにはお見通しよ?」
「貴様のような穢《けが》れた存在にやられる私ではない。さぁ、かかってこい」
「そう……なら、本気で行くわよ!!」
ミノリは闘技場の床を思い切り蹴ると、自分の親指の先端を噛み、血液を【日本刀】の形に変化させた。
「どおおおおおりやああああああああああああ!!」
ミノリ(吸血鬼)は彼の身長の二倍ほどジャンプすると、そのまま血液製の【日本刀】を振り下ろした。
「ふんっ!!」
しかし、彼はその一撃を【真剣・白刃取り】で受け止めていた。
彼はその刀を握りつぶすと、ミノリの腹を殴った。
しかし、ミノリは彼が攻撃する前に瞬時に固有武装『|光を喰らう黒影製の翼《ブラックイカロス》』を背中から出して、それを防いでいたため大きなダメージにはならなかった。
その後、ミノリは、まっすぐ後ろに飛行すると、ゆっくりと着地した。
「ねえ、あんたの拳とあたしの翼……どっちが強いか勝負しない?」
「私はただ、貴様を全力でねじ伏せたいだけだ。そんな勝負に応じるつもりはない」
「あら、そう。なら、そろそろ、あたしの怒りを爆発させてもいいかしら?」
ミノリはニコニコ笑っていたが心からの笑みではなかった。
「もう貴様のことなど、どうでもいい。さっさと化けの皮を剥《は》がしてやる」
その時、ミノリは翼を体の中にしまいながら、こう言った。
「あっ、そう。なら、あの時と同じ……いや、それ以上の力をあんたに見せてあげるわ。覚悟しなさい!」
吸血鬼型モンスターチルドレン製造番号《ナンバー》 一の『ミノリ』。又の名を『強欲の姫君』。
あの日、モンスターチルドレン育成所で彼女は自《みずか》らの力を暴走させてしまった。
そのせいで、そこで働いていた研究員を百六十人も殺してしまった。
その時の力以上のものを使うと言ったのだから、彼の敗北は、もう決まったも同然であった。
大丈夫。今のあたしは、あの時のあたしじゃない。ナオトと出会ったおかげであたしの心は幸せでいっぱいになった。
ちょっと不安だけど、ナオトなら、きっとこう言ってくれる。
『暴走した時は俺が止めてやるから、お前は気にするな』って。
ミノリ(吸血鬼)は目を閉じて深呼吸した後《のち》、ゆっくりと目を開けた。
「我に宿りし、禁忌の力よ。今こそ、その封印を解き放ち、我にあらゆる災厄を滅ぼす力を与え給え!!」
その直後、ミノリは突如として出現した金色《こんじき》の繭《まゆ》に包まれた。
数秒後、その繭《まゆ》が消え、中から姿を現したのは明らかにいつものミノリではないミノリであった。
黒髪ツインテールは金髪ツインテールになり、黒い瞳は金色の瞳になっていた。
そして、いつも着ているメイド服(?)っぽい服は『金色《こんじき》のドレス』に変わっていた。
「これが、あたしの禁忌の力。発動時に走馬灯を見るから感情をコントロールできないと暴走するけど、今のあたしの心は幸せで満たされている。だから……もうあの時のような失敗は繰り返さない!! あたしの『|強欲の女王の形態《グリード・クイーン・モード》』の恐ろしさをその身で味わいなさい!!」
彼はそれを無視して、ミノリ(吸血鬼)の方に前進した。
「ちょっと、あんた! 何、無視してんのよ!!」
ミノリは彼の拳を躱《かわ》すと彼の顎を殴った。
「人の話は……! 最後まで……! 聞きなさいよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ミノリはそう叫びながら、ジャンプ。
その後、彼の顔面を思い切り殴った。
ミノリは地面に着地すると、腕を組んだ。
「あら、もうおしまい? あんたの力はそんなものなの? あんた、それでも『はぐれモンスターチルドレン討伐隊の司令』なの? そんなんじゃ、あたしと同じ大罪持ちには勝てないわよ!」
その時、彼の周囲に黒いオーラが出現した。
「まさかモンスターチルドレンごときに、私の本当の力を見せることになるとは思わなかったよ」
その直後、彼の瞳は赤く染まり、背後には黒い何かが腕を組んでいた。
「この気配……あんた、まさか!!」
「そうだ。私は『闇の精霊』の加護を受けし者だ」
その時、彼の背後で腕を組んでいた『黒い何か』が彼の全身を覆うと『漆黒の鎧』と化した。
牛のような角と赤い瞳が特徴的であった。
「さあ、第二ラウンドを始めよう」
はたして『闇の精霊』を身に纏《まと》った彼にミノリは勝つことができるのだろうか……。