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俺の後継者で、妹の独華は、無事に隠れ家のツリーハウスに戻れただろうか。ソビエト軍に見つかっていないだろうか。
こんな事を考えるだけ、きっと無駄だ。
独華は、俺と違って外の世界で自由に過ごして、運動もできる。活発なやつだ。見つかってもきっと逃げ切れる。
独華に、もっと沢山の事を教えて、次に生まれる化身を支える知恵を与えたかった。
独華、口には出せないが、お前は俺が誇れる凄い妹だ。愛してる。
視界が霞む。頬に生温い水が流れた。
「俺、泣い、てる…?」
きっともうすぐ迎えが来る。泣いてる暇なんて無い。俺に、泣く権利は無い。
そう思って涙を拭う。
今の俺に人間のような感情は不要だ。
泣いてなんになる。俺も、主も、そんな事では救われる事など無い。
気が付けば、主は俺の膝に頭を乗せて眠りについていた。
きっと、疲れたのだろう。
「主、今だけは、…ゆっくり、寝て下さい」
そう言いながら俺は体を起こし、主の頭を撫でる。優しく、そっと。
主の頭を撫でれるのはもしかしたらこれが最後かもしれないから。
最後かもしれない主との時間を過ごしていると、2人の巨人にも思える程の巨体が見えた。
そう、ソ連とそのドールの主炎が迎えに来たのだ。
ソ連は乱暴にこの地下室の扉を蹴り、開けた。