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⚠️ワンク⚠️
※赤桃
※あほ
※解釈不一致注意
※口調迷子さん
※ご本人様に関係なし
「わ、雪だ…。莉犬!雪積もってる!」
まるで小さな子供のようにはしゃぐ恋人は、さっそく小さな雪だるまを作り始めている。
今年で31歳というのに、はしゃぐ姿は誰よりも子供だ。
吐く息は少し白くて、雪に触れる細く長い手は赤く染まっている。
べしゃりと音がして、顔にとてつもなく冷たいものがつく。
「つっめた、!?」
くすくすと笑いながら雪玉を沢山作っている。なるほど、戦争がしたいわけだ。
足元の雪を掴み、雑に丸のような形に固める。それを、思いっきりさとちゃんの顔へ向かって投げる。
雪玉は見事さとちゃんの顔へ命中_はせずさとちゃんの胸の辺りにぶつかり、黒い上着に白を残しただけだった。
くそ、もう少しコントロール能力があれば。
さとちゃんからの猛攻撃が開始。足元に置かれた大量の雪玉が絶え間なく俺へと向けて投げつけられる。
全身が雪まみれになったであろう頃合に、ぴたりと攻撃が止む。
反撃のチャンスだと雪玉を作ろうと顔を守っていた手を外す。
すると、雪玉でも何でもなく、さとちゃん本人がこちらにやってくる。
「ちょ、!?」
数mばかりの距離が縮められていく。雪に足を取られ逃げることも叶わず、そのままさとちゃんが俺へと突っ込んでくる。
どんという衝突音と共に、視界がぐるりと回り、少しばかり空かちらばった青空が眼中に広がる。たった一晩ばかり降っただけの雪は、ほんの数cmしか積もっていない。
そんな所に倒れれば、当然痛いわけで。きっと背中には、少し土がついている。
「ちょ、重いんだけど…」
自分より10cmは大きい男が上に乗りかかっていれば、それは重いに決まっている。
どかそうと体を動かすと、じゅくりと服が音を立てた。とけた雪か服にしみこんできたのだ。
俺今日白い服なのに!
「さとちゃん!服しみてきたから!汚れてる!」
「えー?」
「えーじゃなくて!」
仕様がないなとでも言いたげに、さとちゃんはのそのそと起き上がる。全く。本当ににこの人30代か?
3歳の間違いだろう。
ふと、手ぶくろもつけていない手が、真っ赤に染まっているのが目に止まった。
「さとちゃん手真っ赤じゃん。手ぶくろつけないで雪触るから」
両手でさとちゃんの手を包んで、はーっと息をかける。
白くもない息は少し揺れて、手にふわりと生湿さを感じさせる。これでは、一体何度息をかければ温まるのか。
仕様がないなと、自分のつけていた手袋とろとマフラーをさとちゃんにつける。
少し寒いが、まぁ俺はさとちゃんより若いので風邪を引いてもすぐ治せる。それ程問題はないだろうと思う。
「莉犬耳真っ赤じゃん」
ぱふりと、ふわふわの手ぶくろで両耳を包まれる。毛が耳に入ってきて、少し擽ったい。
「あったかい?」
「…うん」
少し茶色まじりの、お世辞にも綺麗とは言い難いような雪達が、さらさらと鳴く。
しばらくのでじっとと、少しの鳴き声は、シンと俺達を回ってた。
「寒いし、帰ろっか」
「えー、もう?」
「雪つっこんだのさとちゃんでしょ!もう…。早く帰ってお風呂入ろ」
さとちゃんの手を引いて歩き始める。
「お風呂?お湯入れてんの?」
「……帰ってから入れる」
「すぐ入れないんじゃん」
げらげらと笑うさとちゃんに、少しばかりの苛立ちと、愛おしさを感じる。
どこがツボなのか全くわからないところは、もはや呆れを通り越している。
ただ、本当に楽しそうに笑う顔が、好きなだけだ。
高音混じりの引き笑いは、本当にどうかと思うが。
「じゃ、お湯溜まるまで色々話してようよ」
「ハハ、ふっ…。うん、んふふふふ…」
本当、何がそこまで面白かったんだろうか。このロリ三十路が。
ようやくさとちゃんの笑いが引いたのは、マンションのエレベーターに乗ったころだ。
「莉犬、どっち先に入る?」
「え? 一緒に入ればいいじゃん」
「え、また?…まいっか。莉犬ちいせぇからそこまで変わんないし」
「はぁ?ばかにしないでくんない?」
はぁ、と溜息を吐く。本当、何なんだこの横顔おじさん。
エレベーターの扉が開いた。
「とにかく、お風呂は一緒ね。わかった?」
少しぽかんとしたあとに、さとちゃんはにやーと、心做しか少し嬉しそうに笑った。
「…しょうがねぇなぁ」