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午前3時15分。
刑事たちは動物園の倉庫裏にある古い休憩室に向かっていた。
そこには、かつてパンダ「メイリン」の担当だった元飼育員、**高木彩(たかぎ あや)**が待っていた。
「ご無沙汰しています……山科刑事、日下部君」
高木は緊張した面持ちで挨拶した。
「メイリンの失踪、かなり深刻な事態ですね」
山科が切り出す。
「ええ……あの子はただのパンダじゃなかったんです。
実は数年前から、博士たちの実験で、遺伝子操作を受けていて……」
高木は息を呑み、続けた。
「メイリンは徐々に、人間のような行動や知能を持つようになりました。
でも、動物園側はそのことを隠し続けて……」
日下部が驚いて尋ねた。
「それで、今回の事件は……?」
「博士の研究が進みすぎて、メイリンの“第2形態”が完成間近だった。
でも、それを危険視した一部の関係者が、実験を中止させようとしていたんです。
そして、何者かがパンダを“連れ出し”、その能力を悪用しようとしている……」
山科は厳しい表情で言った。
「この事件は単なる動物の失踪じゃない。
科学と倫理の境界線を越えた、大きな陰謀かもしれない」
その時、高木の携帯電話が鳴った。
画面には「不明番号」と表示されている。
「……はい、はい、わかりました」
通話を切った高木は震える声で言った。
「今すぐ来てほしい場所があります。
市川市の、あの廃工場です」
次回:第7話「研究の本当の目的」
博士の研究室と隠された真実。廃工場に隠された秘密が明らかに。