傷跡は残ったものの生活には支障はなかっためすぐ家に帰れた。
そして今日は轟君の制御訓練の日だ。燃えるものがなく人気もない空き地の場所に僕はいく。
するとそこに小さな女の子が座っていた。
あれは…… 渡我被身子!?
よく見てみると渡我は泣いていた。
「ぅう、ひくっ、うぇえ」
体を縮こませ小さく泣いている。僕は渡我被身子に近寄ってみることにした。
「どうしたの?」
小さな背中の背後から声をかける、すると渡我はびくっと動いて後ろを振り向いた。
「アナタ、だぁれ?」
「僕は緑谷出久、どうして泣いているの?」
「……言いたくない」
悲しい顔で俯いてそう一言発した。
「あ、ごめんね勝手に人のプライバシーなこと聞くようなことをして」
「…ううん大丈夫」
「話せないなら、いいよ、だけど僕から見た君はとても悲しそうな顔をしていたからつい声をかけちゃったんだ、だから少しでも悩みを言ってくれると嬉しいな」
「……わたしね、血が好きなの …それでね、わたしって普通じゃないってお母さんたちにずっと言われたの、血が好きなんて変だって、ばけもの産んじゃったって……言われたの
みんなの普通が私には分からないの、血が好きでかぁいいものが 好きで、それでわたしの笑顔は不気味だって言われたの、周りのコたちはとっても笑っててもお母さんたちは笑顔になるの。
……なんでみんなと違うのかな?どうしてわたしの普通を受け入れてくれないのかな?誰にも理解されずに死んじゃうって思ったら怖くて…怖くてだから自分を押し殺した時期があったの。だけど抑えきれなくて…ついに家を出たの。 だけど家を出た後からもわたしはかわらなかったの、変われなかったの、やっぱりお母さんたちだけじゃなかったの、血ぃちょうだいって言ったらかぁいくないって言われたの、わたし普通じゃないの」
俯いて喋っていた渡我は僕の方を向く。
「出久くんはどう思うの?やっぱりわたしヘンなのかなぁ」
泣きながら僕に問いかけてくる。渡我がヴィラン連合に入った理由が分かった。自分らしく好きに生きたかったからなのか。けどきっと理解者がいると知ってくれたなら未来も何か変わるんじゃないか。
「変じゃないよ」
「!」
「それは自分というものを構成してる大切な個性なんだよ、それを押し殺したら自分じゃなくなる。」
「でもじゃあどうすればいいの、わたしの欲望はどうやって発散すればいいの」
「……僕の血でよければあげるよ」
「!!いい…の?」
「いいよ、僕のでよければだけど」
「ううん、欲しい!だけどどうしてわたしにこんなによくしてくれるの?」
「君が困ってたし泣いてたから」
「……ありがとう」
僕の腕から血を啜る音が聞こえる。数分経つと渡我は満足したようで腕から口を離した。
「そうだ!名前を聞いてなかった、お名前は?」
「わたしトガです。渡我被身子って言います。トガちゃんって呼んでください!」
トガちゃんは笑って手を振って走って帰ってしまった。
「すごい偶然だったな…」
姿が消えるまで振っていた手を止めて呟いた。
「何が偶然なんだ」
「うわぁっ!」
背後から僕の目を覗き込む様にいつのまにか見つめていて、思わず体を震わせた。
「と…轟くんかぁ、吃驚したぁ」
「制御訓練今日であってるよな?」
「うんあってるよ、えっと後ろにいる人は連れの人かな?」
轟くんの後ろに一人大人の女性に目を向ける。
「もしもの時のストッパーって言ってた」
「そっか、じゃあ始めようか」
根本的な問題は前世の僕と同じなんだ。僕の場合は力が強大すぎて体が耐えきれない、轟君の場合は高温すぎて体が焼けてしまうなんだからイメージをつければ制御はできる様になる筈。
「じゃあまずは火力の調整からにしよう」
僕は背負っていたリュックの中から盥を取り出し近くの蛇口に水を入れて轟くんの目の前に置いた。
「これは?」
盥に指を刺して言った。
「その水に手を入れて個性を使ってみて、注意事項としては炎は指先に集中させること」
「それだと炎はすぐに消えるけど」
「制御訓練なんだから、それに手のひらだとどうしても炎が大きく出ちゃうと思うからね」
「わかった」
それから轟君は3日間であっという間に指先からの放出に成功した。
「すごいね! 轟君!! こんなに早くできるとは思わなかったよ、どう?指先熱い?」
「いや、大丈夫」
「それなら訓練はおしまいだね、凄いよ僕の予測は1週間は掛かってた」
「…会えなくなるのか?」
「ん?」
「緑谷とはもう会えなくなるのか?」
「…そうだね、寂しいけどずっと一緒にいるわけにもいかないし君の家族も心配していると思う」
轟君は俯いてしまった
「もうちょっとだけなら一緒にいようか」
「!うん!」
後ろにいる女性に目をやると頷いてくれたので僕は安堵した。
「緑谷はどんな個性を持ってるんだ?」
唐突な質問。だけど多分僕の返答でこの場の空気は悪くなる。
「うーん秘密」
僕は話題を変える。
「轟君の炎は蒼炎で綺麗だね」
「…そんなことないよ、僕の炎は最初は赤色だったんだ、だけど何故か赤色だった髪がつむじから白くなって炎も蒼くなった、温度も下がっちゃったんだ」
「それでも綺麗なのは変わらないよ」
「そうだね」
「……轟君は夢とかあるの?」
「僕はヒーローになりたい」
「!!」
「テレビでオールマイトの映像を見たんだ、それですごい憧れたんだ」
「僕もねヒーローになることが夢なんだ、それで君と同じでオールマイトにいっぱい憧れた……
もういっか、…僕にはね『個性がないんだ』」
コメント
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フォロー失礼します!!逆行系大好きなんですよ!!もし良ければ続きが気になります!!