ルシファーが里妬の家に来て数日経った頃
里妬は寝起きで寝間着のまま、ミニテーブルの前に座りルシファーに貰ったあと一個良いことをすれば満タンになる幸せ貯金箱を見ている。そんな里妬流の幸せ貯金箱の貯め方は、毎朝父親に新聞を届けるだけで一つ貯まる。父親がチョロいので里妬にとっては扱いやすいらしい。
「次のお願いどうしようかな…」
里妬が眠たげな顔でそう呟くと
っと羽を広げる音がすると同時に、黒くボサボサの綺麗な羽がヒラヒラと舞う。里妬はもう慣れた様子で上を向く、上を向いた瞬間鼻が当たる距離でルシファーの顔が間近にあった。ルシファーは腰を屈めて里妬の顔を見おろしている、その顔は先程まで里妬の後ろで寝ていたとは思えないほどのいい笑顔だった。里妬はルシファーを顔を見つめている。
「おはよう、何?」
「おはよー里妬ちゃん!、今日はいい天気だし、また一緒に外に行こうよ!里妬ちゃん勉強ばっかしてて俺つまんないからさ!」
里妬は少し重い瞼を擦り、顔を伏せると同時に立ち上がる。ルシファーは里妬から少し離れ扉の前に立ち里妬を待つ、その目は今から遊びに行く子供のようだ。里妬は呆れた顔をして顔を洗いに行く、ルシファーは里妬が背中を向けるのを確認するとニヤリと微笑んだ。
里妬はいつもと同じ私服に着替え、ルシファーが横で気分が良さそうに歩いている。里妬はルシファーとあって少し不思議に思っていた。神話に描かれていたとうりルシファーは本当に神に反逆して堕天したのか…反逆した理由は単純、自分の待遇が不満だったから。だが本当はどうなのか、他に神に反逆した理由、本当はどうして神に反逆したのか。それが知りたかった、何故ならそれを知ってる自分なら、誰も成し遂げられない様な誰も知らない様な事を知れば、自分だけが出来る特別になれる。今日は歩きながらそれを聞こうと思った、口を開こうとした瞬間ルシファーが先に言葉を発する。
「里妬ちゃん!」
里妬はあ…という顔をしながらルシファーの話を聞いてやる。
「あそこ行きたい!アレ!アレやりたい!」
ルシファーが目を輝かせる。その視線の先にあったのは公園にあるただのブランコ、里妬は公園自体そこまで行かないので気まぐれでルシファーの初公園に付き合ってやることにした。
ブランコに乗ったルシファーは、やはりブランコのチェーンが掴めず器用にバランスを取りブランコを漕ぐ、里妬は普通に両手でチェーンを握りキコキコ漕いでる。昨日まで外は寒い寒い言っていたのにどういう風の吹き回しだろうか。里妬は正直ルシファーの考えていることが分からない、数日しか一緒に暮らしていないからそりゃそうだろう。里妬が色々聞き出そうと思い口を開き喋ろうとしたら、また里妬より先に喋るルシファー、まるで里妬の話を遮るかの様だ。
「ねぇ里妬ちゃん〜、寒いからなんか買ってぇ〜?肉まんとかぁ…」
「はぁ?何で私が…」
「おねがぁい!帰りおんぶしてあげるからぁ!」
「やだよ。…仕方ないな、一緒に来る?」
「俺ブランコ漕いでる〜」
ルシファーの身勝手さには困らされるものがある里妬、仕方なく肉まんを買いに行きコンビニに足を運ぶ。
コンビニの前のステンレスパイプ柵に座り、先程買った肉まんが入ってるビニール袋を片手にジュースを飲んでいる。そんな中でも考えていた、ルシファーが堕天した本当の理由や、他にも堕天使が居たりするのか…まだ眠気が取れなくあくびをしていると前からゴツっと聞こえ、音のする方に視線を移すと子供が居た。どうやら転んで足を擦り剥いて泣いているようだ、里妬はジュースのストローをプッと口から吐き出すと、ズボンに付いてるミニポッケに手を突っ込み昔兄に貰った、戦隊モノのバンソコウを出す。里妬も我ながらまさか使い道があるとはと思っていた。里妬は子供の所に行きしゃがむと、子供に喋りかける。
「怪我、見せて?」
里妬は慣れない事をしているのと、子供なら大丈夫と思い愛想笑いせず見下ろしていた。そんな中子供が見ていたのは里妬の綺麗な足だった。
「早く怪我見せろ」
「あ、はい」
バンソコウを張り終えると子供が里妬にお礼を言い、手を振って走って行った。その瞬間里妬はルシファーを公園に放置していたことを思い出した。急いでルシファーの居る公園に向かい始めた…何より早く向かわないと1人で揺れる奇怪なブランコになってしまうからであるため、里妬は早足で向う。
ようやく公園に付いた里妬、人が居ないので大声でルシファーを呼ぶ。
「ルシファー?ルシファー!」
いくら呼ぼうが返事をしないルシファー。何故だろうと首を傾げ、もう一度ルシファーを呼ぼうとする。
「ルシフ___
ルシファーを呼ぼうとした瞬間、里妬の足元にルシファーの生首が転がって来た。
「は…?」
里妬は一粒の汗を流す。それはそうだろう、さっきまでブランコに乗っていた居候の生首が突然足元に転がって来たのだから。里妬は一瞬思考が停止したが、咄嗟にルシファーの生首を両手で抱える。
「ルシファー!どうしたのアンタ!!何!?死んだ!?てか堕天使って死ぬの!?」
里妬は混乱のさなか、耳に入って来たのはルシファーの返事では無く異国語の言葉だった。里妬は勉強で聞いたことのあるような気がして記憶を探っている、確かヘブライ語だった気がする。だがそんな思考は一瞬で消える、その言葉が聞こえる方を見ると大きな目玉に白い羽と大きな白い服、そして神秘的な見た目をしている槍を持っている。最初は何か分からなかったが、頭らしき目玉の上に天使の輪があった、どうやら天使らしい。里妬は武器を持ってる時点で敵意があることは把握したらしい。
「ルシファー何アイツラ!?天使!?ていうかアレ何喋ってんの!?ねぇ本当何アレ!ねぇ返事してよ!!」
いくら喋りかけようとルシファーの生首は黒い血を流して黙りこくるだけだ。
「っ………ねぇっ!ルシファ゙ーッ!!」
里妬も返事が無いのイラくのと同時に自分も襲われるのではないかという焦りに涙目になりながら特大の大声で堕天使の名前を叫ぶ。
「何里妬ちゃん〜うるさぁい、せっかくアイツラだまくらかして帰ってもらおうと思ったのにぃ!ムゥッ」
突然喋ったルシファーの生首を見て目を丸くする。それと同時に生首が喋るという気持ち悪い状況に驚きついキャッと言う珍しく女の子らしい声をあげるとルシファーの生首をすこし離して、慌てて浮いた生首をキャッチする。そしてギョロッとこちらを向く大量の天使の視線に即座に気づき片足を後ろに擦り逃げようとしていた。
その羽を広げる音を立てたのは天使達の中心に居たルシファーの首から下の身体だった。ルシファーの身体は中を舞い、天使を蹴り倒し足で器用に槍を掴んで上に投げて袖越しに槍を掴む。それと同時にルシファーの生首はボソリと呟く
「今からこの槍は天使を殺せる道具」
その言葉を発したあと、ルシファーの身体は周りの天使の腹をその槍で掻っ捌き、辺りに生物とは思えない青い血を撒き散らす。ルシファーの身体は優雅にその血しぶきを避けて里妬の前に舞い降りる。
「里妬ちゃんの言うとうりあれは天使、気持ち悪い見た目してるよねぇ〜!ニャハハ」
ケラケラと笑うルシファー、里妬はその状況について行けずルシファーの言葉を聞きながら目の前の光景を見ているだけだった。
「まぁ簡単に言ったら俺の敵だね♡」
そう言うとルシファーの身体は天使の群れに突っ込んで行く。
「里妬ちゃ〜ん肉まん頂戴♡、天使達は胴体に任せて俺達は此処で見てよ」
「改めてアンタの感性を疑うよ」
次々と天使の身体を切り刻んでいく。首がない身体が謎の生物を切り刻む光景はあまりにも奇妙で、青く飛び散る血はあまりにも神秘的だった。
「でも見てよ、綺麗じゃない?飛び散ってるの」
「思ってるのはアンタだけだよ、私は分かんない」
「それは悲しいねぇ…でも里妬ちゃん、君にはこの光景に慣れてほしいなぁ〜、俺と一緒に居るなら天使と戦うことになるのは必然的だよ?里妬ちゃんが嫌なら出ていくけどさ?」
気づくと槍を持ったルシファーの胴体がスタスタとこちらへ向う。
「里妬ちゃん死ぬかもだし」
その発言と同時にルシファーの身体が里妬の顔の横に槍を投げると、さらに顔の横スレスレに天使の攻撃した槍が飛んできた、その天使はルシファーの投げた槍により頭部の目玉を貫かれ床にくたばった。
「で?どうする?」
里妬に持ってもらってるルシファーの生首は里妬の顔を見つめる。するとルシファーは子供のように純粋な笑顔を向ける
「里妬ちゃん、俺が居なかったら特別じゃ無くなっちゃうし、俺は出ていっても良いけど里妬ちゃんは特別で居たいもんね」
ルシファーの身体は里妬の手から生首を取ると頭にくっつける、すると子供の様な笑顔から一変、堕天使らしい笑顔を向ける。
「でも里妬ちゃんも死にたくないでしょ?どっちを取る?死ぬかも知れない中特別で居るか、命優先にするか…どっちがいい?」
里妬はそのルシファーの言葉を聞いた途端フルフルと震え始める。ルシファーはやっぱ怖いか…と思ったが里妬がルシファーに見せた顔は笑顔だった。頬を赤らめて、口角がピクピクと震え冷や汗がダラダラと流れている。
「それって…私も天使に狙われてもっと特別になるんだよね…?」
ルシファーはいつもの笑顔とは違い、驚いたような顔を向けている。
「ねぇ…幸せ貯金箱貯まってるでしょ…?」
「ん…?」
ルシファーは何もない空間から幸せ貯金箱を出す。すると先程少年にバンソコウを貼ったので貯金箱は満タンになっていた。
「アンタの言うとうり特別でいたい…だから、今回の願い事決まった!」
ルシファーは少し見慣れない顔で里妬を見つめるが、いつもの怪しげな笑顔に戻る。
「お願いってなぁに…?」
人々は神々に祈りを捧げる。それは安全で楽しく、平和な日々を暮らす為…
だが彼女が求めるのは他人が味わえないような特別な経験である。彼女は危険で楽しく、奇々怪々な日々を暮らす為に神とは反対の堕天使に無垢な笑顔で、両手の指を結びもせず目を合わせ堂々と願う。
堕天使はそんな、奇々怪々な子供の願いを無垢な笑顔で受け入れた。
次の日の朝…
「里妬ちゃ〜んまだ見ちゃだめぇ?」
「いいって言うまで駄目」
「え〜?」
里妬は昨日の夕方届いた制服を着用し、リボンを結ぶのに手こずっている。まず結び方すら分からないのだ。
「ルシファー、そこにあるスマホ取って」
「ハーイ」
里妬はネットにある動画を見ながら見様見真似でやってみる。うまく結べたが見た目が変じゃないか確かめるためルシファーの方を見る。
「ルシファー」
彼女が堕天使の名前を呼ぶと、堕天使もその名前に反応し、後ろを振り向く。
「変じゃないかな」
「聞かれても俺セーフクなんて分かんな〜い」
里妬は少し心配だが、まぁいいかと自分で納得して床に置いてあるカバンを持つ。
「じゃあ行こうか」
「うん!」
里妬とルシファーは玄関に行き、扉を開けると眩しい日差しが差してくる。ルシファーは少し目を瞑り、里妬は誰も居ない玄関に向かい言う。
「いってきます」
コメント
3件
肉まんいいな、、、