Happyend
名前を呼ばれたのはいつぶりだろうか。
ずっとずっと、ずっとずっとずっとずっとずぅっと待ち望んでた自分を呼ぶ声。罵倒では無い、名前を呼ぶ声。
「あぁ、ランスっ、」
配慮など出来なかった。力任せに抱き上げた。
「すまなかった…謝って済む事ではないのは重々承知の上だ。」
「ほんと、謝って済む話じゃねぇよ、許さねぇからな。」
口ではそう言いつつもやっぱり胸の中に広がるのは安心感と嬉しさで、こいつのことが好きになっちまったんだなぁって自覚する。
あれ?好き…?そういえば…
「ランス、お前俺の事好きなのか?」
“ツンデレの究極体”
『 ツンデレの究極体とは、自分が想いを馳せていた相手に対し強い憎悪が湧き上がり、逆に腸が煮えくり返る程嫌いな奴に愛を囁くようになったりしてしまう事である。(自社調べ) 』
あいつが元に戻るまで、俺こいつにめっちゃ気色悪がられてたよな?
ランスに目を向けると目を見開いて驚いている。え?何その反応。やっぱり好きじゃなかったの?
「…俺が、お前を好き、?」
そう口にした途端顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。栄養不足で顔が青白がったのもあり今の表情との差は一目瞭然だ。
「ゔ、うんっ!!」
大きな咳払いが聞こえそちらに目をやると先生が立っていた。
「クラウンさんの様態を調査しますので他の方は一度退室願います。」
「あ、はい。」
促されるままに外へ出る。マッシュ、フィン、いつの間にか来ていたレモンちゃんと顔を合わせる。
「ランスくんは大丈夫だった? 」
「ああ、今先生が調査してるってよ。」
以前よりも穏やかになった皆の表情を見て安心する。俺だけじゃない。皆辛かったもんな。
そのまましばらく時間が経ちやっと中に入れるとのことだ。マッシュ達は気を利かせてかまず俺一人で会うように勧めてきた。俺としても二人で話したいことがあったのでお言葉に甘えさせてもらった。
ガチャリ、扉を開け落ち着いた様子のランスと目が合う。
「ドット、改めて話を聞いた。たくさん傷つけてしまって本当にすまなかった。」
申し訳なさそうに言うランスの顔は苦しそうで、痛々しくて。見たくなかった。
「そんなの気にしないでいいぜ。しょうがないだろ?お前の意思じゃねぇんだから。お前のそんな申し訳なさそうな顔見るのも嫌だしよ。」
なるべく明るい声で、励ますように。本心をしっかりと伝えた。それはランスにも伝わったようで次に出る言葉は謝罪ではなかった。
「そうか。ドット、好きだ。」
謝罪ではなく、告白。と呼ぶものだろう。
いや、あまりにも急すぎる。この流れで告白するか?普通。
「あ、え?いま…?」
「確かに、今ではなかったな。それで?返事は?」
なんて傲慢なやつだ。綺麗に流したぞ。
「っ、あぁ…」
うぅ、否定するつもりはないし、なんならYESと答えたい。しかし声に出そうとするとどうしても意味の無い音になってしまう。
だうしようかとランスの瞳を見ると深い碧に刺される。そのまま吸い取られていくかのような、思考を強制停止されたような、不思議な感覚に引っ張られる。
「…おれも。」
あ、言えた。よかった。
「そうか、じゃあ付き合おう。 」
柔らかく微笑むランスに心臓が跳ねる。ああ、もうだいぶ重症かもしれない。
「二度と俺のこと拒絶するなよ、」
「もちろんだ。」
頬にキスを落とされそこから熱い何かが広がっていく。
きっとこれを幸せと呼ぶのだろう。
コメント
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この表現の仕方が好き!ノベルって書くの大変なのに、なんでこんなに出来るんだァァ!しかも上手いし、小説作ればなんでも売れるんじゃね!?モカさんの作品見るために私は生まれてきたと言っても過言では無い!