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君が気づかせてくれたから

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君が気づかせてくれたから

7 - 第7話ー隠しきれない思いー

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2024年11月20日

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翌日、やまとは事務所に早く着いていた。


普段から仕事の時間には余裕を持って行動する方だったが、今日はなんとなく特別な気がして早めに来た。



どこか落ち着かない気分で、事務所の椅子に座って、早く来るはずのメンバーを待っていた。



心の中で何かがぐるぐると回っていたが、そんな自分の気持ちを整理する時間が欲しかった。



しばらくして、ゆうまとひゅうがが揃って事務所に入ってきた。


二人は明るく挨拶をして、軽く会話を交わしたが、やまとは突然、その口を開いた。




「おう、俺、彼女と別れたわ笑」




その言葉に、ゆうまとひゅうがは一瞬、言葉を失った。特にひゅうがは目を大きく見開いて、驚きの表情を浮かべた。




「え、えぇ!? まじで!?」



ひゅうがが最初に反応した。


その驚きが声にしっかりと現れていて、やまともそれを見て少し笑った。




「いや、別に何も大したことじゃないけどな。」



やまとは普段通りに笑顔を浮かべたが、その裏には少しだけ固さがあった。


それでも、ひゅうがとゆうまの反応を見ていると、ちょっとだけ気が楽になった。



「なんで急に!? だって、付き合ってたの、かなり長かったんじゃない?」



ゆうまが驚いた顔を隠せずに聞いた。



やまとの交際が長かったことをみんなが知っていたから、その突然の告白にみんな少なからず驚いていた。




やまとは少しだけ肩をすくめて、落ち着いた調子で答えた。



「まぁ、色々あってな。考えた結果、やっぱり…今は必要ないと思って。」



それを聞いたひゅうがは黙ってやまとを見つめていたが、やまとの目をじっと見返すことはなかった。少しの間、空気が重くなったような気がした。




「そんな…急すぎない?」




ゆうまが声をかけると、やまとの表情が少しだけ真剣なものに変わった。




「うん、急だったかもしれないけどさ、これが自分にとって一番だと思ったから。」



その言葉には、やまとの中で何かを決断した強い覚悟が感じられた。




「それって…ゆうたのこと?」



ひゅうががぽつりと呟いたその言葉に、やまとは少し驚いた顔をした後、少しだけ真剣に答えた。



「…まあ、そうだな。」



その一言が、ひゅうがの顔を一瞬で固まらせた。しかし、すぐに表情を戻し、何も言わずに黙っている。



「やっぱり…そうなんだ。」




ひゅうがは静かに言ったが、その目はどこか険しいものを感じさせた。


やまとの言葉を素直に受け入れることができない、そんな複雑な気持ちがひゅうがの中で渦巻いているのが感じ取れた。


ゆうまはその空気を感じ取ってか、少し気まずそうに言った。



「ま、まあ、なんだかんだ言っても、今はやまとの気持ちが一番大事だからさ。」



やまとはその言葉に少し頷き、そして少しだけ笑顔を見せた。




「やっぱり、今は自分の気持ちに正直になろうと思って。」




やまとの言葉には、決して後悔は感じられなかった。


ただ、その背後には深い思いがあるような気がして、ゆうまもひゅうがもそのことを感じ取った。




その後、しばらくの間、事務所の中は少し静かな空気が漂った。



だが、それぞれの心の中で、やまとの告白が何かを引き起こしたことは確かだった。



ひゅうがは言葉を飲み込み、ゆうまはその不安な気持ちを隠すように、わざと軽い話題を振った。




それでも、やまとの決断がどれほど重大だったかを、二人とも少なからず感じていた。







しばらくして、あっちゃんとゆうたが事務所に入ってきた。



その二人の登場は、まるで柔らかな風が吹き込むような感じだった。


あっちゃんの無邪気な笑顔と、ゆうたのふわりとした優しい雰囲気が、事務所の空気をほんの少し明るく変える。



二人ともどこかふわふわとした、まるで小さな夢の中にいるような存在感を放っていた。


そして、その瞬間、やまととゆうたの視線が交錯した。



「おはよー。」



ゆうたは軽く微笑んで、そして明るい声で言った。



彼の笑顔は、どこか柔らかくて、まるで太陽のようにやまとの心に温かさを注ぐ。



何でもないように見えるその一言が、やまとの心臓をギュンっと鳴らせる。




やまとはその瞬間、胸の中で小さな鼓動を感じた。今まで何度も感じてきたこの感覚。



ゆうたが笑うたびに、心の中で何かが揺さぶられる。自分がこんなにもゆうたの一言一言に反応してしまうことが、少し不思議でもあった。



それでも、その感覚がとても心地よくて、どこか安らぐような気がしていた。


「おはよ、ゆうた。」



やまとの声は少しだけ震えていたが、それを隠すことなく、普段通りに返した。


だけど、その胸の高鳴りはどうしても抑えきれない。ゆうたと目が合うたびに、心の中に熱いものがこみ上げてくる。




ゆうたはそのまま、やまとと目を合わせたまま、ほんの少しだけ微笑んだ。


それが、まるでやまとの心に届いたかのように、ふわりと温かなものを残していった。




「あれ?どうしたの?やまと、なんか顔赤くない?」



あっちゃんがそんなことを言うと、ゆうたは少し驚いてやまとを見つめた。



「ほんとだ。なんか、顔赤い。」



ゆうたも少し笑いながら言った。


やまとの顔は一瞬で熱くなり、すぐに顔をそらしてしまった。


自分でも気づかないうちに、頬が少し赤くなっていたことに驚いていたが、どうしてもその気持ちを抑えることができなかった。



「いや、別に…なんでもない。」



やまとの返答は、あまりにも不自然だったけれど、ゆうたはただ静かに微笑みながら、気にしないようにしていた。



ゆうたのその優しさが、やまとの胸をまた温かくした。


「それより、今日はどうする?みんなでご飯とか行く?」




あっちゃんは、やまとの赤くなった顔に気づきながらも、話題を変えて明るく提案した。



それに、ゆうまがすぐに賛同して、みんなで楽しく過ごそうという雰囲気になった。




やまとは、心の中でゆうたの笑顔が深く刻まれるのを感じた。


その一瞬、一言、一笑が、自分にとってどれほど大きな意味を持つのか、まだはっきりとはわからない。




でも、確かにやまとの中には、ゆうたに対する気持ちが少しずつ形になりつつあることを、否応なく感じていた。












…… ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ



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