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事務所内でのやまとの少し不安定な様子を見て、ひゅうがは一層、ゆうたに対してアプローチを強化し始めた。
普段のひゅうがは、どこかおおらかで軽い雰囲気を持っていたが、ゆうたに対する態度が少しずつ変わっていくのを、やまとは敏感に感じ取っていた。
ある日、みんなで集まって大食い系の撮影をすることになった。
みんなが楽しそうに話している中、ひゅうがはわざとやまとを見ながら、ゆうたの隣に座った。
軽く肩を寄せるような仕草をし、ゆうたに話しかけながらも、明らかにやまとの反応を見ているのがわかった。
その時、ひゅうがは何気なく言った。
「そっちもその気なら、俺もその気で行くから。」
その言葉には、何とも言えない圧があった。
何かを宣言するような、そう、確信的な感じが漂っていた。
それはまるで、ひゅうがが自分の領域を確立しようとしているような印象を与えた。
やまとはその言葉を聞いた瞬間、胸がざわついた。
ひゅうがの視線が自分を直接的に捉えていることに気づいたからだ。
ゆうたのことを本気で考えているからこそ、ひゅうがの言葉に鋭さを感じてしまう。
今までの自分がどれだけ、ゆうたに対して無自覚だったのか、少しだけ痛感する。
その圧力に押されるように、やまとの気持ちがますます強くなるのを感じた。
ひゅうがは、まるで「負けない」とでも言うように、確実にゆうたとの距離を縮めていた。
自分もその場にいて、ただ見守っているだけではいられなくなった。
やまとは、胸の中で自分の気持ちを整理し、改めてゆうたにどう向き合うべきかを考え始めた。
ひゅうがは、ただの冗談のように言ったかもしれない。
しかし、その言葉には確かな意志が込められていた。そして、その意志に対してやまとの心の中で何かが弾けたような気がした。
「ひゅうが…」
やまとは心の中でつぶやきながら、少しだけ視線をひゅうがから外してゆうたに向けた。
ゆうたは楽しそうに話をしていて、そんな彼を見ていると、やまとの胸が締め付けられるような気がした。
ひゅうがの発言に、やまとは少し圧倒されているような気もしたが、それでも、今更引き下がるわけにはいかない。
自分の気持ちを、ゆうたに伝える覚悟を決めなければならないと感じた。その瞬間、やまとの中で何かが決まったようだった。
撮影が終わり、みんなが片付けをしている最中、ひゅうがはいつものようにゆうたを誘った。
「ゆうた、帰りにちょっとどこか行こうよ。今日も」
ひゅうがは気軽に声をかけ、まるで何も考えずに振る舞っているようだった。
しかし、ゆうたはその誘いにいつも通り甘えるように、笑いながら「うん、いいよ」と返すつもりで振り向く。
その瞬間、背後から冷たい感触がゆうたの腕に伝わった。
「待って。」
その声には、思いもよらぬ強さがあった。
ゆうたが振り返ると、そこにはやまとが立っていた。
目を合わせると、やまとの表情は普段の軽い雰囲気ではなく、どこか真剣で、少し険しい顔をしていた。
その手は、まるでゆうたがひゅうがと一緒に行くのを阻止するかのように、ゆうたの腕をしっかりと掴んでいた。
「やまと?」
ゆうたは困惑した表情を浮かべ、やまとの腕を軽く振り払おうとした。
普段のやまとなら、こんなふうに手を握ることはなかったからだ。
心のどこかで、やまとの気持ちを理解しているつもりだったが、今のこの状況は、ゆうたをさらに混乱させていた。
「どうしたんだよ、やまと?」
ひゅうがが少し冷ややかな目でやまとを見ながら言った。その声には明らかな挑戦的なニュアンスが込められていた。
ひゅうがはその瞬間、やまとの反応を感じ取り、すぐにライバルとしての意識が芽生えたのだった。
やまとはゆうたを見つめたまま、ひゅうがには一切目を向けない。
ゆうたの手を離すことなく、ただ静かに、しかし確実に、何かを言いたそうにしていた。
ゆうたはその沈黙の中で、やまとの気持ちに何かが変わったことを感じていた。
今まではどこか余裕を見せていたやまとが、突然、強くて真剣な態度を取るなんて、予想していなかったからだ。
「やまと…?」
ゆうたは再び、やまとの目を見つめながら、少し困惑しつつも声をかけた。
その目には、いつもの軽やかな笑顔ではなく、何かしらの決意と強さが感じられた。
ひゅうがはその様子を見て、少し息を呑んだ。
そして、やまとの変化に気づいた瞬間、自分の中でも何かが動き始めた。
彼もまた、ゆうたを自分のものにしたいという気持ちを、以前よりも強く感じるようになっていた。それは、ただの感情ではなく、もはや競争心として、強く芽生えていた。
「やまと、俺が先にゆうた予約してんだけど」
ひゅうがは、わざと強気な口調で言う。
目の前の状況をどう処理すべきか、やまとはしばらく迷った。
しかし、やまとの中で、今やまさにその瞬間が自分にとって大切であることを悟った。ゆうたに対して自分の気持ちを確かめるべきだと、心の中で決心していた。
「…行かせない。」
やまとの声は低く、力強かった。今までにない強い意志が込められていた。ゆうたはその言葉に驚いたが、心の中で何かが弾けるような音がした。
「…え?」
ゆうたはやまとの手を見つめ、少し戸惑っていたが、その目はやまとに向けられたままだった。
ひゅうがはその場の空気を感じ取り、少しだけ冷ややかな笑みを浮かべた。
「なるほどね、」
そう言って、ひゅうがは全てを察したかのように黙った。
ゆうたはその時、初めてひゅうがの真剣な顔を見て、少しだけ胸が痛くなった。
けれど、やまとが自分に示している強い気持ちに、どこか安心感も覚えていた。自分がどちらを選ぶべきなのか、その選択を迫られる瞬間が来ていることを、今やっと実感していた。
「やまと、どうして?」
ゆうたはもう一度、やまとの手を見つめながら静かに問いかけた。その目の中には、どこか切なさと戸惑いが混じっていたが、それでもやまとの視線を外すことはできなかった。
やまとはゆうたに向かって、静かな声で言った。
「ちょっと、二人で話したい。」
その言葉は、ゆうたの心にまるで重たいものが乗ったように感じさせた。ゆうたは少し戸惑いながらも、やまとの真剣な表情を見つめた。
彼が何かを決心したような顔をしていることに、ゆうたは少し驚き、そしてどこか心がザワザワとした。
「でも…」
ゆうたは自然に、ひゅうがの方へ視線を移した。ひゅうがは少し眉をひそめたが、その後、すぐに肩をすくめてため息をつきながら言った。
「いいよ、行ってこいよ。」
その声は、どこか気だるげで、少し冷ややかな響きがあった。
ひゅうがの目にはわずかに悔しさが見え隠れしているようだったが、それを表に出すことなく、すぐに切り替えたようだ。
ゆうたはひゅうがの答えに少し驚きながらも、やまとに視線を戻した。
やまとの目はまだその強い意志を感じさせており、ゆうたはその目を避けることなく見つめ返した。
そして、ゆうたはやまとの手を取り、少しだけ戸惑いながらも、そのまま歩き出した。
やまとはゆうたの手を引いて、静かに玄関へと向かう。
ひゅうがの目が背中に感じられるその瞬間、ゆうたは心の中で何かを決めるように深く息を吸った。
「じゃあ、行こうか。」
やまとの声が、ゆうたの耳に優しく響く。
それだけで、ゆうたの胸の中で少しずつ、迷いが薄れていくのが感じられた。
ひゅうがの姿を目で追いながら、ゆうたは心の中で、自分が今どんな気持ちを抱えているのかを整理しようとするが、どうしてもその答えは見つからない。
ただ、目の前にいるやまとに、強く引かれている自分がいることだけは、確かなことだった。
そして、やまとと二人きりになったその瞬間、ゆうたの胸の中で、あふれるような感情が膨らんでいった。
その様子を見守っていたあっちゃんとゆうまは、何も言わずにお互いに視線を交わし、少しだけ肩をすくめてから、ひゅうがの方に歩み寄った。
「ドンマイ。」
あっちゃんは、少し気まずい空気を和らげようとして、優しくひゅうがの肩に手を置いた。
ゆうまも少し笑顔で、ひゅうがに「ドンマイ」とでも言いたげな目を向けた。
ひゅうがはその二人の反応に、やや力なく笑ってみせたが、すぐに顔を引き締めた。
「まだ負けてねーよ。」
ひゅうがは冷静な声でそう言った。
その言葉には、どこか力強さがあり、少しだけ悔しさを込めていたようにも聞こえた。
しかし、その表情はどこか挑戦的で、まだ諦めていないという強い意志を感じさせた。
…… ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ