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𓏸𓏸の体調は、夜が明ける頃にはますます悪くなっていた。顔色も青白く、時折咳き込みながらベッドに力なく横たわる。
涼ちゃんは𓏸𓏸の横顔を見つめて、どうしていいのか分からず、
ただその場から動けずにいた。
そんな涼ちゃんの不安に気づいたのか、𓏸𓏸はなんとか顔を上げて、
かすれた声でそっと伝える。
「……ねぇ、涼ちゃん……薬、あの茶色い棚の二段目……ピンク色の箱に入ってる……。名前は、これね……。飲むのは、朝と夜……ごはんのあとにね……」
そう言い終わると、もう力が尽きたように𓏸𓏸は目を閉じ、静かに眠りはじめた。
誰も頼れない朝。
涼ちゃんはひとりで立ち上がり、ふらつきながらも棚の前へ向かう。
「……ピンクの箱……」
𓏸𓏸の声を思いだしながら、薬を見つける。
名前を箱の文字で何度も確認し、水を用意して、必死で自分に言い聞かせるように飲み込んだ。
口いっぱいに苦味が広がったけれど――
𓏸𓏸がもう少し休めるように、できるだけ自分のことは自分でしようと頑張った。
ベッドの𓏸𓏸は、眠りの中でうっすらと涼ちゃんの姿を感じていた。
ぼんやりした意識の奥で、「ありがとう」と何度も何度も繰り返している。
涼ちゃんは、窓の外を見つめるその時間を短くし、
𓏸𓏸の枕元の水が減っていればじっと見つめ、
部屋の温度調整やカーテンまで、ぎこちなく整えるようになった。
ぎくしゃくしてはいるけれど――
涼ちゃんは自分なりのやり方で𓏸𓏸を助けようと、
小さな手と静かな勇気で、今、この時だけは必死に動いていた。