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「捜査員に任命されてないのに何で嗅ぎまわってるの。」
「ちっ。バレたか。」
「皆潜入捜査のプロですから。ヴィランにバレないか、恐怖におののいてたそうよ。」
反省してない様子の爆豪に、鋭い視線を送る。
「顔にシワ寄ってるぞ。」
小夜は呆れたため息をつく。
「さらなる情報が手に入ったことは良しとします。」
「もっと感謝してくれても良いんだぜ。潜入は簡単だった。連中も見た目雑魚っぽい。」
「日本の半グレ集団だからよ。それを牛耳るチャイナマフィアは半グレの非じゃないわ。さ、仕事行くよ。」
違法カジノ店を運営していたのは半グレで、その大元がチャイナマフィアであることが判明。この街全ての半グレを傘下に治め勢力を拡大しつつあった。それはカジノだけでなく風俗店にも手が伸びつつある。
この事務所はチャイナマフィアを直々に叩くこととなり、着々と準備を進めていった。
「(今日はアイツのラジオの日だったな…。)」
非番のある日、卒業してからは聴いてなかったラジオを聴くことに。
「(落ち着くな…。)」
あれこれ物思いに耽る。
「(別に好きなわけじゃ…。)」
ふと浮かんだ小夜のこと。舌打ちして思わず雑念を払うため新月の夜に飛び出した。
ついに対峙する時。向こうが合わせてくれたかのような、絶好の満月。
強襲班と誘導班それぞれ配置につき、目指すは最上階スイートルーム。
「5m先に敵。」
「その部屋、まだ人がいる。」
階が上がるにつれ敵の守りも硬くなる。
見つけましたよ。アルテミス。
頭に響く声。同時に頭痛が小夜を含む全員を襲う。
「誰…!?」
「貴女と同じような個性を使う者です。マントラを唱え、精神汚染していきます。」
「思い出した。シャーマンの末裔、個性で脳内に干渉してマントラで精神を壊す…!!」
その間も頭痛に苦しみ嘔吐する人、うめき声をあげる人の声が小夜の頭にこだまする。
「鍾波!!」
鍾波はマントラの言葉を変えた。
「あ…!?」
小夜のコスチュームが黒くなりはじめ、頭痛と吐き気も襲ってきた。
「おいしっかりしろや!!」
「ダイナマイト…!!」
「俺は、ボスをフルボッコにしてるところだぜ!!」
「マントラを聴いてもなお、まともな人間がいるとはな。」
「ダイナマイト、鍾波は私が倒す…!!」
「俺はこいつをブッ飛ばす!!」
「そんな頼もしい君のために私も一肌脱ぐよ!!」
やめろ!!そんなことしたら…!!
「(誰だ今の声。俺にだけ聞こえたのか!?)」
不思議な声が聞こえるも、考える暇すら与えてくれない。
「つくならもう少しマシな嘘つきな。」
「嘘じゃねーよ。」
その言葉にボスは明らかに苛ついていた。
I know, I know I’ve let you down
I’ve been a fool to myself…
聞こえてきた歌が頭痛と吐き気を消してくれた。不利だった状況を覆し、再びこちらが優位に立とうとしていた。
「(クソが!!なんつー歌詞だよ!!)」
甘い声とは裏腹な悲しい歌詞。
小夜は鍾波のもとにたどり着いた。
「今日は何の日か分かる??」
鍾波の頭ではまだあの歌が聞こえている。
「満月だよ。私にとっては最高の舞台。」
緊張か恐怖か、冷や汗を流す鍾波を気にせず小夜は距離を詰める。黒く染まったコスチュームが元の色に戻りだす。
It all returns to nothing, it all comes tumbling down, tumbling down, tumbling down
「マントラが効かない!!」
「月、綺麗よね。」
コスチュームが剥がれ、6枚の羽が出現。小夜は赤い目をした天使に変貌。
「でもその半面、人の精神を惑わす恐ろしいものでもある。」
怯えて膝から崩れ落ちた鍾波の頬を優しく包む。
「やめろっ!!」
頭にこだまする歌はもはや呪いである。
「一緒に堕ちる??」
口づけをしようとした瞬間、羽が壊れる音がした。