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何を言ったら良いのか分からない。私がエリナである事を明かしても彼を困らせるだけ。聖女アルマの企みも確たる証拠がないのに、彼に話しても心配を掛ける。私は深呼吸して、決意を語る事にした。
「私、キルステンと離婚します」
「なんだと?」
彼にとって待ち侘びた一言を言ったはずなのに、キルステンの顔は険しいまま。
「私たちは一度も床を共にしていないし、白い結婚です。キルステンが心配しなくても、あっさり離婚できます」
「白い結婚?」
キルステンの機嫌はより悪くなった。私は事実を述べて、彼の心を軽くしたいだけ。
「私は大丈夫です。十二年間お世話になりました」
私はベッド上でそっと手をつき頭を下げた。
すると急に身体を反転させられる。
(えっ? 何?)
紐を引かれて、ガウンを脱がされ頭がパニック状態だ。
月明かりに自分の白い裸体が照らされている。
「キルステ⋯⋯」
振り向きざまに言った言葉は、彼の深い口付けに飲み込まれる。結婚式の時、軽いキスはした事があったが、こんな濃厚なのは初めてだ。口付けの甘さと深さに頭が朦朧として来る。
(なんで? どうして?)
私は訳が分からないまま、彼を受け入れた。そのまま、キルステンは私をがっちり抱き込み寝入ってしまう。基本的に、感情を露わにしないキルステン。私は初めて彼の激情に触れた。
♢♢♢
窓から差し込む朝の光が私を照らす頃には、私はまた猫の姿になっていた。私をしっかりホールドしていたキルステンの腕をすり抜ける。開け放ったガラス扉からバルコニーに出て、ズリズリと蔦を頼りに城壁を降りた。
「にゃー!(フェリクス!)」
どうやら、フェリクスには一晩中そこにいたようだ。少し疲れた顔をしていたが、私を抱き上げると柔らかい表情になった。
「行こうか、ビルゲッタ」
「にゃん(うん)」
私はフェリクスの判断に従った。ここにいても、猫の私はキルステンの役には立てない。
私は二階のキルステンの部屋を見上げる。
きっと、私と彼は離婚する事になる。でも、私は遠くからキルステンを守り続ける。
フェリクスは私を懐にいれると、馬に跨る。
「首都を出るまではこのままで我慢できるか?」
「にゃん。(もちろん)」
キルステンとは違う男っぽい香りに包まれながら、私はその温もりにうとうとしだしていた。徹夜明けで、流石に疲労が蓄積していた。
(にゃ、にゃーん⋯⋯。(流石に、寝不足⋯⋯))