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これは、「雨花」、「桃時」、「兎白」が二年生の後半に差しかかる前、つまり、「生徒会誕生」の話である。
???「段々と署名集まってきたな」
???「そうね。でも……」
???「高等部は中々集まらないねぇ」
「雨花」、「桃時」、「兎白」は署名活動を行っていた。
雨花「それに人間と妖怪との共存を行う組織を作るには、人間の署名も集めなきゃだし」
桃時「その点は問題ないわ。実は人間用の署名活動は橙たちがやってくれてるから。アタシたちは妖怪の方の署名活動に専念した方が良いかもしれないし。」
兎白「それもそうだな」
雨花「でもどうだろう。妖怪は人間を知ろうとすることで、自分たちが救われるかもしれないから行ってくれるけど、人間は署名したら自分たちの嫌な存在である妖怪と関わることになるからやらないんじゃない?」
兎白「どちらも課題だな」
雨花たちは考える。
雨花「…………あっ」
桃時「どうしたの?」
雨花「押してダメなら引いてみれば良い……簡単な話だよ」
兎白「どういうことだ?」
雨花はニヤリと笑う。
雨花「ちょっと待っててくれる?」
数分後
雨花「はぁーい連れてきました!」
「こ、こんにちは」
「う、うす」
「ちっす」
「何の用だよ……」
連れてこられたのは、雨花が初めて署名を貰った妖怪たちだった。
桃時「この妖怪たちが何なの?」
兎白「こんにちは。俺は兎白だ」
「は、はぁ……」
「そうですか」
桃時「(全然信頼されてないけど、確かに共存したいという意志は感じるわね。不器用そうだけど)」
妖怪たちはたじろいでいる。
雨花「あなたたちに頼みがあるんだー!」
兎白「それって……」
桃時「まさか……!」
雨花「あなたたちに……」
「「人間の署名活動を手伝って欲しいの!」」
「…………」
桃時「ちょっと雨花!何で妖怪たちなのよ!アタシたちですら無理なのに……」
雨花「わたしたちで無理なら一旦引いて違う者に手伝ってもらう。これってすごく共存してることに繋がってない?まぁ嫌なら仕方ないけど。でも……」
「「救いって優しさだけじゃ成立しないからね」」
雨花は、少し瞳のハイライトを低くして、言った。
「!」
雨花「救いには「暖かさ」、「優しさ」も必要だけど、時には「痛み」という感性も必要になってくる。だって「優しさ」だけだったらそれは「救い」じゃなくてただの「甘え」だよ。あなたたちは「甘え」が欲しい訳じゃないでしょ?なんてことの無い日常には、「負の感情」も含まれてる。だからあなたたちに来るであろう「負の感情」も少しずつ少しずつ受け入れていく必要があるんだよ。厳しいかもしれないけど、「救い」にはそれらが必要なんだよ」
「…………けっ」
「……お前はやっぱり一味も二味も違うなぁ」
「優しいだけじゃないなら信用くらいは出来るかもしれないな」
「分かった……」
「「俺たちも手伝うよ」」
桃時・兎白「!」
雨花「はぁーいありがとう!」
桃時「ま、マジか……」
兎白「さすが一番最初に妖怪に署名させただけあるな」
雨花「はいはい。……じゃあ早速やろう!」
「「はーい・あぁ・おう」」
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???「署名をお願いします!」
???「署名をどうかお願いします〜」
桃時「橙!瑠璃人!」
???「あっ!桃時さん!こんにちは」
???「雨花に兎白さんもいるんすね。ちっーす」
靴箱の先の渡り廊下で署名活動をしているのは、「橙」、「瑠璃人」だった。
瑠璃人「全然人間たちからの署名集まりませんよ〜みんな「誰が妖怪なんかと……」とか「ただ偉そうな組織を作りたいだけでしょ」とか言いたい放題クスクス言われるんすよ?もう嫌っすよ」
雨花「うん!だから橙ちゃんと瑠璃くんは一旦休んでくれて構わないよ!」
橙「でも私たちが休んだら……」
雨花「妖怪の皆さん!こっちだよ!」
「大声で呼ぶな。恥ずかしい」
「俺たち人間の靴箱にはあんまり来ねぇからな」
「朝ってこんな感じなんだな」
「知らなかった」
瑠璃人「えぇ!?妖怪にやらせんの?!」
橙「大丈夫ですか?」
雨花「それは妖怪たち次第だね」
「俺たち少し考えがあるんだ」
「手伝ってくれないか?」
雨花「分かった。橙ちゃんと瑠璃くんは休んでて!わたしは妖怪たちの支援するから!」
瑠璃人「はぁーい了解」
雨花「分かりました」
こうして、妖怪たちの署名活動が始まった。
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雨花「はい持ってきたよ。拡声器」
「ありがとな。早速使わせてもらうぜ」
「あいつら二人には中で署名活動の宣伝をしてもらってる」
ここは、『トウヒガ学園』の校庭。雨花と妖怪たちは署名活動の準備をし始めた。
「よし、準備満タンだ」
「じゃあ……行くぞ」
雨花「頑張れ!」
『全校生徒の皆さん!!!!耳だけで良いのでこっちを向いて下さい!!!!』
「「!」」
突然、大声がきこえて生徒たちが驚いていた。
『俺たち妖怪は、悲劇ぶる訳じゃないですが、世間からつまみ出され、現理事長がここに集めてくれたおかげで今俺たちは食うものにも困らず、生活できています。しかし、人間たちに対して、憎しみや、何より恐さがあって、人間のことを見下していました。今も、正直人間のことは憎いし、恐い。でも……』
「「その気持ちを抱えたままで良いから、一緒に過ごしたいと想っています」」
「!」
雨花「(あっ)」
「(視線が妖怪さんたちの方に集まった)」
『俺たちは憎くても、恐くても、憎しみを抱かれても、恐がられても、それでもその先にある俺たちを救ってくれるもの……それが何かは今は分からないけど、俺たちはそれを人間と一緒に手に入れたい。だから……』
「「俺たちに人間と救い合うチャンスをくれませんか?」」
しばらく沈黙が続くと……
「良いよ」
「え?」
一言声が聴こえた。
「妖怪たちってそんな風に想ってたんだな」「めっちゃ意外」「俺たちも結構決めつけてたんだな」「俺妖怪に前に殴られて痛かったし、憎いけど、その気持ちを抱えたままで良いなら……俺も妖怪たちと一緒に救い合いたいな」
少しずつ賛同の声が挙がる。
一方校内では……
瑠璃人「心配でみてきたけど……」
橙「まさか……」
「「列ができてるなんて……!」」
署名活動場所には、長蛇の列ができていた。
「ありがと」
「お前らって案外面白いんだな」
「良かったら今日放課後遊ぼうぜ」
「い、いいのか?」
「良いから誘ってるんだぜ?」
「そ、そうか。良いのか」
「じゃ!また放課後な!」
雨花の作戦は、上手くいったのだった。
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???「なるほど。署名活動は無事完遂したんだね」
ここは、校長室。雨花、橙、桃時、兎白、瑠璃人は雫に署名活動の報告に来た。
雫「これだけの署名があれば、もう組織は作れるだろう」
瑠璃人「でも組織なんてどうするんすか?」
橙「学校内で作る生徒による組織」
桃時「何かしら」
雨花「…………」
兎白「うーん……そうだ!」
「「生徒会なんてどうだ?」」
橙・桃時・瑠璃人「あぁ!」
雨花「え?マジでみんな「生徒会」って考え出てこなかったの?「学校内で作る生徒による組織」なんて「生徒会」ぐらいしかないでしょ」
雫「生徒会……我が校には生徒会制度はないけれど、良い機会だ。作るのを許可するよ。」
「「生徒会……今日の日から誕生だ!!」」
橙・桃時・兎白・瑠璃人「はい!!!!」
雨花「あっその件は辞退させて頂きます」
橙「え」
桃時「な、何でよ」
瑠璃人「オレたちとやるの嫌なのかよ」
兎白「……雨花。お前……どうしていつも……」
「「俺たちから自分を遠ざけようとするんだ?」」
橙「確かに……」
瑠璃人「何でなんだ?」
桃時「…………」
《……ごめん。今は……》
《言えない》
《ごめん》
《ごめん》
桃時「雨花、あんたが過去何したか知らないけど、アタシたちにとってあんたは必要な存在なの。あんたが署名活動なんて始めなかったらアタシたちは生徒会なんて作れなかった。あんたのおかげなのよ。だから……お願い。生徒会に入って」
雨花「…………」
桃時は知っていた
雨花は「お願い」に弱いと
それに何より……
雨花を独りにさせたくなかった
だから汚い手も使うのだ
雨花「……………………はぁ……分かったよ」
「「入るよ」」
兎白「良かった」
橙「雨花さんが入らないなんて絶対嫌です」
瑠璃人「オレは橙さえ良ければ別に……」
桃時「何照れてんのよ」
瑠璃人「う、うるせぇ!」
その後、全校生徒から役決めを行った。
桃時「ちょっと……雨花が副会長なんて良いの?あいつ全く生徒たちの見本らしいことなんてしてないけど」
雨花「わたしやっぱり辞退しようかな」
瑠璃人「今更そんなこと出来るわけないだろぉ……」
兎白「俺が会長なんて良いのか……?」
雨花「兎白くんみたいに人望に熱い人はリーダーに向いてるんじゃない?兎白くん男女どわず人気高いし!」
桃時「女からも人気が高いのは…………」
橙「桃時さん!落ち着いて下さい!」
瑠璃人「ぷっぷぷ、桃時紙をグシャッてしたからしわくちゃになってる」
橙「その紙をしわくちゃにしちゃダメですよ!先生方に渡すんですから!」
雨花「…………」
兎白「どうしたんだ?」
雨花「ん?いやわたしは……」
ここにあって良いですか
雨花「…………」
兎白「?」
瑠璃人「兎白さん!この項目なんすけど」
兎白「あ、あぁ」
兎白たちは笑い合いながら、生まれたばかりの生徒会の仕事を行っている。
その姿を何も闇も届かない漆黒の目がみつめていた。
その目には一体どんな感情が込められているのか、果ては何も込められていないのか。
それは雨花すら分からないものであった。