戦場の花

💪 第二章：調査兵団への誓いと過保護な指導訓練開始：二人の指導者

サクラが調査兵団の正式な入団を目指すことが決まると、エルヴィンとリヴァイは、彼女の訓練計画を立案するため、徹夜で話し合った。

「団長、あの子はまだ体格が…無駄なリスクは負わせられません」 「リヴァイ、君の心配は理解できる。だが、彼女がこの世界で生き抜くには、自分で戦える力が必要だ。我々が最も安全な方法で教えよう」

そして、早朝。調査兵団の訓練場にサクラの姿があった。広大な訓練場には他の新兵の姿はなく、そこにはエルヴィンとリヴァイ、そしてサクラの三人のみ。二人は、サクラのための**『マンツーマン特別訓練プログラム』**を用意していた。

「サクラ。君の体格（150cm）と体力は、他の新兵に比べると劣る。だが、君には**『機敏さ』と『柔軟性』**がある。それを活かす訓練を始める」エルヴィンが温かい視線を送りながら言った。

「いいか、サクラ。足手まといはゴミだ。だが、お前はゴミじゃねえ。だから、俺の言うことを一字一句聞き逃すな。訓練中にケガでもしたら、俺が団長を許さねぇ」リヴァイはそう言い放ち、エルヴィンは苦笑した。

基礎訓練：リヴァイの「清潔」指導

まず始まったのは、リヴァイによる体術と基礎体力訓練だった。

【体術訓練】

「おい、膝を曲げすぎだ。重心が安定しねぇ。もっと低い体勢を意識しろ」 リヴァイはサクラの動きを細かくチェックする。他の兵士なら一発殴られているような緩い動きでも、リヴァイは辛抱強く、サクラの背中にそっと手を添えて正しいフォームを教えた。

「こうか、兵士長…？」 「ああ、そうだ。…ただし、一つ言っておくことがある」

リヴァイは、サクラの顔を覗き込むようにして言った。

「訓練後の汗まみれの服を、そのまま放置するな。汚れは菌の温床だ。訓練と同じくらい、脱いだ服の洗濯と、体の洗浄も、迅速かつ完璧に行え。分かったか」

「…はい！」

体術の指導中に「清潔さ」の指導が入ることに、サクラは内心クスッと笑ってしまった。すると、リヴァイはポケットから真新しい白いハンカチを取り出し、サクラの額の汗を優しく拭った。

「無理しすぎだ。小休憩だ。エルヴィン、水だ」 「ああ、これだ。サクラ、飲みすぎないように」

まるで過保護な両親のように、二人はサクラの体調に過敏だった。

立体機動装置：エルヴィンの「理論」と庇護

次に、立体機動装置の基本操作訓練。最も危険が伴う訓練だ。

「サクラ、立体機動装置は、体幹と平衡感覚が重要になる。君は体が小さい分、姿勢制御に優れるはずだ」

エルヴィンは、まず装置の構造と、ガス圧、ワイヤーの張力に関する高度な物理理論から講義を始めた。サクラは転生前の高校生だったため、その内容を難なく理解できた。

「君の理解力は素晴らしいな。では、装置装着だ」

エルヴィンの指示で装置を装着し、訓練用のワイヤーに吊るされるサクラ。初めて空中に吊るされた体勢は、恐怖で体が硬直してしまう。

「い、維持できません…！」

サクラの体がブレて、今にも地面に落ちそうになる。その瞬間、エルヴィンは素早く動いた。彼はサクラのワイヤーの調整レバーに手を伸ばし、ガスの噴射量を調整して、彼女の体勢を安定させた。

「サクラ、慌てるな。呼吸を整えろ。訓練だ、落ちたとしても私が必ず受け止める」

エルヴィンは、他の新兵には決してかけない、甘く、絶対的な庇護の言葉をかけた。

その時、リヴァイが訓練場の隅で装置を構えながら怒鳴った。

「団長、甘やかしすぎだ！そんなことをしていたら、実戦で足手まといになる！」

「いや、リヴァイ。彼女を信じなければ、何も始まらない。私には、彼女の**『特別さ』**を信じる理由があるのだ」

エルヴィンはサクラをじっと見つめ、**「リヴァイ、彼女を不安にさせるな。私たちがいる限り、サクラに失敗はない」**と、リヴァイに強く言い聞かせた。

訓練の終わり：過剰な評価

日が傾き、訓練は終わった。サクラは全身の筋肉が悲鳴を上げているのを感じながらも、無事に初日のメニューをこなすことができた。

リヴァイはサクラの目の前に立ち、真剣な顔で言った。 「今日の動きは、新兵の平均より、…遥かにマシだ。特に、機動力は目を見張るものがある。合格だ」

エルヴィンはサクラの頭を優しく撫でた。 「サクラ。君は、驚くべき速さでこの世界の理に順応している。君が私たちの傍にいることは、やはり正しかった。明日からも頑張ろう」

サクラは、二人の異常なほどの高評価と、過保護な態度に圧倒されながらも、転生前の知識が、無意識のうちにこの世界の動きを理解させているのかもしれない、と感じていた。

彼女は、この二人の庇護のもと、調査兵団の兵士として、壁の外を目指すことになる。