「1つ聞いてもいいかな?」
「葵ちゃんの能力の事ですか?」
「まっ‥まぁ、そんな所かな。亜季ちゃんはどう思ってるの?」
「子供の時から見てきたから何とも思いませんけど、葵ちゃんの見ている未来は、ほぼ100%当たります。でも、葵ちゃんは悪い未来を変えようと頑張っているんです。実際に変えられた未来もありました」
希望に満ち溢れた明るい話とは裏腹に、亜季ちゃんの表情は曇っていた。
「それなら僕が見た未来も…‥」
「葵ちゃんに触れた時に未来の映像を見ちゃったんですね?」
「そうみたいなんだ。同じクラスの仲村が…‥」
それ以上は僕の口からは言えなかった。
「交通事故にあって…亡くなってしまう」
「どうしてそれを?」
「葵ちゃんは、数日前から見えていたようです。具合が悪くなったのも、ちょうどその頃だと思います」
葵さんが学校を休んだ理由って…‥
「仲村さんの未来を見てしまったからです。ショックもありますし、能力を使うと体力を相当消耗するみたいなんです。ひどい時は1週間くらい寝込む事だってあるんですよ」
「それじゃあ、さっきまで僕の目の前にいた葵さんは、体力は全然回復してなかったって事?」
「かなりシンドかったと思います」
「そうだったんだ…。僕が家に行ったから、葵さん無理して出て来たんだ…」
「瑛太さんのせいではありませんよ。きっと葵ちゃんは、瑛太さんに会いたかったんですよ…」
「それともう1つ質問なんだけど、あきっ‥」
「私は、違います」
「そっ‥そうなんだ」
まだ何も言ってないのに…。
「それに、例え私は能力者だったとしても何もしないと思います」
意外な発言だった。
何故なら僕の知ってる亜季ちゃんは、困っている人やお年寄りや体の不自由な人がいれば、放っておけずに助けに行くような優しい女性だったからだ。
「どうして?」
「人間に特殊な能力なんて必要ないんです。そんなものなくたって人助けは出来るし、悪い未来だって…きっと変えられます。こんなにツラい思いもせずに済んだんだから…」
亜季ちゃんは今にも泣き出しそうな顔をしていた。
それに、今のは明らかに能力を持ってるかのような言い方だった。
「ちっ‥違います。もし私が能力者だとしたらって事です」
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