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ある夏の夕方。
練習終わりの5人は、スタジオの控え室に残っていた。疲労と達成感が入り混じる中、ちょっとしたことで空気が変わり始めた。
「だから、それはお前が勝手に考えてるだけで――」
「じんちゃんこそ、ちゃんと話聞いてくれへんやん!」
突然、仁人と太智の声がぶつかり合った。
それまでソファに座っていた勇斗が眉をひそめ、隣で柔太朗もそっと飲みかけの水を置く。
「え、え…?なんか始まった?」
舜太がソワソワと立ち上がる。
「もう太智なんか大っ嫌い!」
仁人の怒りがピークに達したその一言で 部屋の空気が凍りついた。
太智の動きが止まり、目の光がスッと失われたのを、全員がはっきりと感じた。
「……なんでそんなこと言うん?」
太智の声は震えていた。
その様子に舜太は思わず「えっ…」と声を漏らし、勇斗も「…ちょっと言いすぎじゃない?」と低くつぶやく。
「俺はこんなにも仁人のことが大好きやのに…冗談でも、そんなこと絶対言わんといてや…」
その表情はあまりに切実で、普段の明るい太智とはまるで違っていた。
柔太朗がすっと立ち上がり、仁人の方へ歩み寄る。
「よっしー…いったん落ち着こ?オレら、話ちゃんと聞くからさ」
仁人は焦って、口をパクパクさせながらようやく絞り出した。
「ごっ、ごめん…オレ…本気で言ったわけじゃなくて、ただ、勢いで…」
太智の表情がふっと緩み、ゆっくりと仁人に歩み寄る。
「ううん、俺の方こそごめんな」
そして、ぎゅうっと、力いっぱい仁人を抱きしめた。
「……ちょっと、不安になっただけや」
そう笑う太智に、勇斗がニッと笑って声をかけた。
「でもさ、そうやってちゃんと本音ぶつけられるって、ある意味おまえらすげーよ。オレなら無理」
「なぁなぁ、けどこれ映画ならここでキスするやつやんな?なぁ?」
「舜太、黙っとこか」
即座に柔太朗に制され、舜太は口をすぼめる。
仁人は太智の胸の中でぼそっと呟いた。
「……言ったあと、もう太智が喋ってくれなくなると思った…嫌いにならないで…」
「アホやなあ、仁人のこと嫌いになるわけないやん」
そう笑って、太智は仁人の頭をぽんぽんと撫でた。
その空気を察して、勇斗が手を叩いて場を明るく切り替えた。
「じゃあ!お互い謝ったってことで、今夜は仁人のおごりで打ち上げな!」
「はやちゃん、そういうとこ抜け目ないよな…」
と呆れたふうに柔太朗が笑い、舜太も「やったー!じんちゃん、焼肉がいい!」と無邪気に便乗する。
「えっ、ちょ、ちょっと待って!?なんでそうなんの!?」
仁人の抗議もむなしく、メンバーたちは笑いながら荷物をまとめ始めた。
さっきまでの重たい空気が嘘のように、部屋には再び笑い声が戻っていた。