テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#CP要素あり
70
127
45
物忘れのニオブヤスニーマ
のるち
プロローグ
俺の名前は杏美(あずみ)
中学生男子。
俺は最近…………….
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
梅雨の時期。山小屋のような木の甘い香り。俺はベッドから降りて、学校に行く。上履きに履き替える。
教室に入るとすっきりとしたやや苦い香りと、湿った空気が漂って来た。
今日はやけに教室がザワザワしている。
何かあったのだろうか。友達の中宮に聞いてみよう。
「なあ、今日何かあったのか?」
肩を叩く。
「…んぇ?僕?」
中宮のアホ毛が揺れている。
「ちゃうて。なんか今日、騒がしくね?」
キョロキョロと辺りを見渡してみる。
「うぅえ?うーん。ん?」
「まあいっか。」
中宮の視線に少し注意深さを感じた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
昼休み
「ね、ねぇ。」
中宮に声を掛けられる。
「ん?」
「これ、この間の写真。現像しといたよ。」
目の前に写真を差し出される。
夏休み前の学校帰り。いつもの駄菓子屋に三人。手をピースにしている俺が写っている。
「おお。あざぁす。」
その日はガムの当たりを中宮が連続5回引いた。
「豪運すぎるだろ!!」
と、騒ぎながらハイテンションで帰った日だった。
中宮が何か言いかけたが、チャイムがなってしまった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
下校時間になっていた。重いバックをしょい、学校を出て、中宮と別れ、気付くと駄菓子屋の前に来ていた。旨味と甘味の混じった匂いがする。その香りにツンと鼻先が熱くなる。悲しい気持ちになる。やがて目頭が熱くなっていき、いつの間にかボロボロ泣いていた。
「は?なんで?おれ、泣いてんの?なにこれ、止まんねえ。」
どれだけ涙を拭っても。抑えようとしても。とめどなく流れ落ちる。恥ずかしい。もう中学生だというのに。でも、涙が止まらない。顔が涙でグチャグチャだ。
幸い駄菓子屋のばあちゃんがハンカチを貸してくれた。
そのまま家に一人でトボトボ帰った。
家に着くと、味噌汁の良い香りがした。が、あまりお腹が空いていない。そのまま部屋に行き、制服のまま寝てしまった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
起きると、パジャマになっていた。母さんが着替えさせてくれたのだろうか。スマホを見ると、もう土曜日の午前10時だった。
飛び起きると、リビングの方向から母さんと…あと、聞き覚えのある、少し幼く、高い声が聞こえた。
気になり、髪もボサボサ、それにパジャマのまま、部屋を出て廊下を歩き、リビングに入った。
そこには、母さんと、中宮がソファに座っていた。そして、驚く間も無く中宮が俺に気付き、見たことない速さで抱きついてきた。
「うぉ!ど、どうしたんだッ」
あまりにもびっくりして、とっさに中宮の肩を掴み、引き剥がした。
中宮の顔を見てみると、目には涙が浮かんでいて、鼻先や目の下が真っ赤だった。申し訳なくなり、もう一度ゆっくりと抱きついた。
(なんだ?失恋でもしたのか?一昨日好きな子が出来たと言っていたのに。告白するの早いな。)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
一昨日
「う〜ん…」
中宮が腕に顔をうずくめている。
「どうしたんだ?」
「う、うわああぁ!ああ、何でもない。」
(白々し過ぎるだろ)
「何でも無くないだろ。俺に何でも言ってみろ。」
「んぇ〜〜?う〜ん…口軽そうだから無理!」
「何でだよ〜!ゼッタイ内緒にするからぁ!お願い!!」
手をパシッと合わせる。
「うーん…分かった。」
「よっしゃ!」
俺はガッツポーズを決める
「スーハースーハースーハー…」
「…。」
「やっぱ無理ぃ!」
中宮が再び顔をうずくめる。
「恥ずかしがらなくていいんだぞぉ〜?」
ちょっとイジってみる。
「そんなに気になるんだったら言うから!!!」
「…えーと、そのぉ、」
「なにぃ?聞こえな〜い!」
「むむむ〜ッ…」
「きーこーえーなー」
「僕は!隣のクラスの!よつ…あああああああ!」
「よつ、四葉?!あいつ?!」
四葉。可愛い名前をしているが、話かけにくいヤンキーみたいな女である。
「え?!どこ?どういう所が好きなの!?」
「ちょっと声デカい!(てかまだ好きとか言ってないんだけど、、、)…..もう。え、えーっと、前、屋上にいったら四葉さんしかいなかったんだ、景色を見に行っただけなのに、怖いし気まずくて…そしたら、話かけられて、『うちさ、自分の名前あんま好きじゃねーんだよ。なんか、自分にとってはキラキラネームみたいで。』って。でさ、『いや、そんな事ないと思う…!ぼ、僕は凄く良い名前だと思う。』って言ったら、四葉さんがこっち見て、『ありがと』って、太陽、っていうか、一等星みたいな凄く優しい笑顔を見せてくれたんだ。それで、」
「好きになったってわけか。」
「…そう…………..」
また顔うずくめてる。
そこからは、喋りかけても返事しなかった。1時的にタヒんでいたのだろう。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏…
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(まだ抱きついてる…足が疲れてきたんだけどな…)
しばらくすると、いきなり中宮が飛び上がった。
「ごごご、ごめん!び、びっくりしたよね!ごめん!」
中宮は顔をありえないほど真っ赤にし、俺の体を引き剥がした。
そして勢い良くリビングを飛び出し、廊下に駆け出していった。
靴に履き替えている中宮に、
「何だ?四葉に振られたのか〜?よしよししてやろうか〜?」
と言うと、中宮が口をへの字にしてこちらを睨んでくる。
「違う!!!!!!」
聞いたことがない程の大声に俺は首をすくめる。
中宮はそそくさと家を出てしまった。
家の中では沈黙が続いた。
食事中の時も、父さんが話しかけてくれたが、母さんとはひと言も喋れていない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
気まずいまま休日が終わってしまった。いや、やっと終わった?どちらとも言えない。
重いバックを背負い、学校に行く。金曜日と同じ匂い。
席着き、ふと、後ろを見る。
「なあ、杏美。」
聞き覚えのある低く、透き通った声が聞こえる。
「ねえ」
「うわぁ!!!!!!!!」
っっっっびっっっくりしたああああ。
「なんだ。中宮か。どうした。」
中宮が心配そうにこちらを見る。
「泣いてるよ?」
ハッとなる。手や、机、服を見ると、涙でビショビショになっている。突然悲しくなる。我に返り、もう一度後ろを見ると
菊の花が入った花瓶が机の上に置いてある。
「は?」
やや苦い香りがする。
その瞬間空白になっていた記憶が蘇る。
学校帰り一緒に駄菓子屋に行ったこと。一緒に話しながら、笑いながら、帰ったこと。
大切な人がいることーー
そうだ。俺が、忘れてしまった、大好きで、優しくて、時には可愛かった…
「黒葉ッッッッッ!!!」
勢い良く花瓶に抱きついた。なんで、なんでわすれちゃったの。なんで、なんで、なんでなんでなんでなんでなんで!
なんで…
「死んじゃったの…?」
寂しい苦しい辛い悲しいむかつく
「自殺なんかしたから。」
「なんで!なんで何も話してくれなかったの!死ぬまえに!遅い!この野郎!バカ!アホ!」
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで…なんで……なん…で。
俺のせいだった?おれ、なんかした?傷つけた?叩いた?蹴った?そんな覚えはない。でも、でも!これも忘れているのだとしたら、どうしよう。
「う、うぅ。」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
下校時間になった。運動靴に履き替える。誰かが死んだかのように重苦しい湿気が押し寄せる。静かな町を歩き、駄菓子屋に少し目をやり、家に帰る。
家に帰り、ベッドに上がる。ほんの少し曇った香り。梅雨の時期。手にとったロープを手に取り、ベットの上の柱に結びつける。大きな輪っかを手に取り、そこに
首を
「ッ!杏美!!!!!!!!やめろ!今すぐ!」
「は?」
中宮からこんな口調は聞いたことがない。
中宮が思いっきり眉間にシワをよせながら大粒の涙を流していた。
騒ぎを聞きつけた母さんが2階から降りてくる。
「何、やってんの…………」
母さんの顔が青ざめる。
何だよこれ、公開処刑じゃねえか。
「こっちくんなよ!!こっちの気持ちわかんのか?」
怒鳴る。中宮が首をすくめる。が、すぐに表情を戻す。
「わっかんねえよ!他人の気持ちなんか!!」
「じゃあ来んな!」
「嫌だっ!今すぐそんなとこに首をかけるのをやめろ!」
中宮が足を掴んで引っ張る。俺はバランスを崩し。ベットに倒れ込む。
「俺が,,,,,,,,,傷つけたのかもしらねぇじゃねえか。」
笑えてきた。涙がいきなり溢れ出る。隠そうとして目の上に腕を置く。
「違う。」
母さんが口を開く。
「え」
「私の杏ちゃんはそんな事しない!」
「はぁ?!」
(杏ちゃん?!)
「中宮くんが前に言ってくれたの。」
「黒葉くんはね、」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ピーンポーン
「しつれいしまーす。」
「あら黒葉くん!。中君なら部屋で寝てるわよ。」
「入って良いですか。」
「いいよ〜。あ。これ、あげる。アレルギーある?」
「あ、ありがとうございます。アレルギー、無いです。ありがとうございます。」
「入るぞ。」
「…。」
「その、今日はごめんな、色々、言っちゃって……..」
「………………………………いいよ。」
「俺さ。駄目なんだ。」
「え…な、何が?」
僕は布団の中から出て、黒葉くんと目を合わせる。
「何やっても、尽くしても、皆、怒って、泣いて、俺の事を嫌っていく。何をしても、いつもいつも都合悪くなってしまう。俺、どうしたら良いんだ?」
「自分の事が嫌い?」
「もううんざりだよ。」
「これからもそのままだと思う?」
「…ああ。」
「そっか。今まで、よ〜く。頑張ってきたね。」
優しく笑いかけ、黒葉君の頭を胸元にそっと押し寄せる。
背中に付く指がかすかに震えている。
「僕に言える事はたった一つ。生きて、生きて。いつかの幸せを見つける。それからもずっと。頑張っている自分を好きになるまで。僕がいるからね。」
「優しいな。お前は。」
背中を優しくポンポンする。黒葉君の泣き声に胸が痛くなる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「……………………………………..そうだったのか…..」
沈黙が走る。
「ハ、ハハ。」
「俺に、俺にも話してほしかった。」
口の形が歪む。それを抑えるために腕を口に置く。目がヒリヒリする。
「言ってた。言ってたよ。」
次は中宮が口を開く。
「黒葉君が、『まだ、杏美に打ち明ける勇気が出ない。早く伝えたほうが良いかな、まだボロを知られたくないんだけど。』って。」
「そっ、、か。よかった。」
「よかった…」
「よかった。」
安心する。黒葉がいないのは淋しいけど。「それ」とはいつかは向き合わないといけないのだろう。
コメント
3件
いやあ、読み終わった直後ちょっと呆然としてるわ…。最初の「物忘れ」ってタイトルと、教室で黒葉の机に菊の花が置いてあるシーンで全部つながった瞬間、ゾッとした。杏美の「黒葉ッッッ」って叫びにグッときたし、中宮が足掴んで引きずり下ろす場面はマジで声出そうになった。黒葉が中宮に「生きて」って伝えてたエピソードが最後に効いてくる構成、うますぎだろ。続き絶対読むわ🔥