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荒野を駆ける足音が止まる。咲莉那(さりな)の視界は朦朧としており、息は荒く、身体のあちこちにある傷からは鮮血が溢れでていた。遠くから数人の足音が聞こえる。自分を殺そうという…殺意のこもった足音だ。やがて目の前に数人の武器を持った人達が現れた。白い衣で金の刺繍が入っており紺色の帯を巻いた人達…一人が言った「火龍(ひりゅう)使い、咲莉那め…今日こそお前を殺し、罪を償ってもらう!」それに呼応するかのように白い衣を着た人達が叫ぶ。咲莉那を殺せと、広範囲の術が展開され咲莉那に降りかかる。ああ、避けられない…そう心のどこかで諦めた声が響き咲莉那は目を閉じた。その瞬間、主様(あるじさま)と咲莉那を呼ぶ、聞き慣れた声がした。
九年後・・・
日が沈みかけた森の中は、冷たい霧が立ち込め、不気味な静けさが辺りを支配していた。瑛斗(えいと)は足を進める度に、背筋を走る寒気を振り払おうとした。しかし、耳元で何かが囁くような声が聞こえ、彼の胸は高鳴るばかりだった。突然、木々の間から大きな影が現れた。その目は赤く光り、鋭い爪が瑛斗に向けられる。彼は恐怖に震えながらも身を守ろうとしたが、足がすくんで動けない。影が唸り声を上げながら近づいてくる中、彼の心は絶望に包まれた。影が瑛斗を飲み込もうとしたその瞬間、突如として鮮やかな光が森の中を照らした。炎のように舞い上がるその光は妖怪を退け、森の静寂を破った。視界が鮮明になり、瑛斗が目の前を見ると、そこには月光に照らされた一人の女性が立っていた。彼女のそばには、赤く美しい龍の姿があった。