「ここは…?」
牢屋のような場所で、アリシールは目を覚ました。暗くて辺りはよく見えない。
「やっと起きたのかい?待ちくたびれたぞ。」
聞き覚えのある気がする声に、アリシールはゾッとした。
「ガレット…さん…?」
「ハハハ、正解。」
アリシールは状況の整理が追いつかない。
「私を捕まえて何がいいの?魔女はすぐに始末するものでしょ?」
アリシールがそう訊くと、ガレットは少し考えて、
「いや、君だけは特別扱いになったんだよ。」
と言った。
「もう何日歩いた…?」
炎天の昼下がり、アルレイドが呟いた。
「さあ…?一週間ぐらい?」
ヨーラは空を仰ぎながら答えた。ここしばらく雨は降っていない。
「あ”づ い”!どんだけ歩けばいいんだよ!」
「急ごうアルレイド!あともう少しで着くよ!」
列車と徒歩での移動で、二人はシーブルー・タウンまで来ていた。ヨーラによると、あと少しで組織の本拠地まで着くらしい。
「呑気なこと言うけど、シーブルー・タウンに来たの初めてだ。」
アルレイドは、遠くに見える町を眺めながら言った。
「ここまで来て、迷うとか無いからね。」
ヨーラがアルレイドに言った。シーブルー・タウンは、この前迷ったノースディオルよりも道が複雑になっている。
「私はそんな奴じゃねーよ!心配すんな!」
アルレイドはヨーラにニッっと笑って見せた。
「それじゃあ、題して!姉妹救出作戦!」
ヨーラは目をキラキラさせながら言った。
「静かにしろ!魔女狩りにバレたらどうすんだ!」
アルレイドが叫ぶように言った。
「あー、ごめんごめん!」
「気を付けろよ!」
アルレイドも静かにしていない。
「…あれ?アルレイド、作戦考えて無くない?」
ヨーラがそう訊くと、アルレイドは不敵な笑みを浮かべて、
「正面突破あるのみ!」
と言った。
「心配だ…」
アルレイドの言っている事では、何かする前に捕まる気がする。
「あれがアジトか?思ったより目立つな…」
石のレンガでできた大きな建物は、遠くから見てもよく目立つ。
「行こう、アルレイド!」
「ヨーラ!足手まといになるなよ!」
二人は走って建物へと向かった。
「イメージ!」
アリシールが叫んだ。何も起きない。
「この牢屋の中では、魔法が使えないんだよ。」
見張っていたガレットが、アリシールに言った。
「逃げようとしたって無駄さ。もし誰かが助けに来ても、魔法が使えないなら意味が無いだろう?」
ガレットは気味悪く微笑んだ。