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一人の少女が、薄い金髪のような黄色い髪を振って走っていました。少女の名前は、ナフサ。とても優しく、動物、特に鳥が大好きで、鳥の中で最も好きなのは、カラスとラナーハヤブサ。そんな鳥好きの彼女の姿は今、緑豊かな野山にありました。
「お姉ちゃん。鬼ごっこ疲れた。そこの川で石集めしようよ」幼い女の子の声が後ろから聞こえ、ナフサは駆け戻ろうとしました。
黒い塊の影が見えたのはその時でした。
樹齢1000年はあろうかと思われる大樹の下に黒いものはあった。思わず、ナフサの走る足が止まった。じっと食い入るように見つめると、大樹に向かって走り出した。
必死に走り、大樹までやっとたどり着いた。「はぁ、はぁ。やっと着いた。」思ったより大樹までの距離は遠く、ナフサは息切れしてしまった。そして、改めて、大樹の下をしかと覗き込んだ。
「カラス!?」
ナフサが悲鳴を上げるのも無理はなかった。そこには、ぐたっと力なく横たわる大きなカラスの姿があったからだ。そして、見たところ、そのカラスは息をしているようには見えなかった。自分が大好きなカラスが目の前で死んでいる様子を見るのは、とても辛いことでした。思わず逃げたくなるのを我慢して、そっと屈みこみました。
「死んじゃってる‥」ナフサがつぶやき、そっとカラスを抱きかけた。カラスは、一切動かなかった。だから、ナフサはそのまま、ゆっくりと持ち上げ、自分の胸元に近づけた。
と、その時。カラスがゆっくりとまぶたを開けた。
「生きてる!」ナフサは喜びで、目を涙目にした。そして、慌てて、立ち上がると、カラスを抱いて走ろうとした。
「待って。」
かすれた一声が、どこからか聞こえた。「え?」ナフサは、思わず下を見た。声が下から聞こえたような気がしたのだ。
見ると、カラスが薄目を開けていた。黒々とした目が、ナフサを見つめる。「あなたが喋ったの?」ありえないことだが、そう感じた。黒い目は、ナフサを見つめながら言った。「そうだよ。」
今度ははっきりとした声で、そう告げた。驚きはしましたが、不思議と怖くはありませんでした。「ありがとう。優しいナフサ。」カラスは両目をうっすらと開けた。そしてそのまま話を続けた。しかし、ナフサがそれを遮った。「ねえ。カラスさん。生きてくれる?まだ生きれるチャンスある?」涙目で訴えた。「ごめんね。ナフサ。私はもう生きてないんだよ。魂を体に結びつけて、仮りに生きている状況なの。」何を言ってるかわからないと思う人がほとんどだろう。だが、ナフサは自然と理解した。
「…」「ねえ。ナフサ。あなたの心優しい行動に私はなにか報いたい。だから、これを受け取って。絶対あなたの力になるはずだから。」
カラスはゆっくりと頭をもたげた。そして器用に首を回して、背中の小さな羽を一枚取った。そしてその羽をくわえたまま、カラスはぎゅっと目を閉じた。
閉じたまぶたからつやりと透明に光る涙が一粒だけつたって頬まで落ちてきた。
カラスは、顔を振って涙を口の方まで運んだ。そして羽をくわえたまま、器用にその涙を飲み込むと、また目をつぶって、涙を一つ、落とした。
ナフサはそれを呆然と見ているしかなかった。
カラスは涙を同じように口に運び、自分がくわえている羽に、ぽとりと落とした。すると、カラスの羽がぐにゃりと歪み、ぽこん、と音を立てて丸い虹色に光る珠が出てきた。
「綺麗だね。それ」ナフサはそのきれいなものに見とれてしまった。きれいなものは大好きで、幼い頃から色々集めてきたが、こんなにも綺麗なものを見るのは生まれて初めてでした。
カラスは、珠をくわえて、くいっと差し出した。「はい。あげるよ。」「え!いいの?こんなきれいなもの?」「ああもちろん。だってこれはあんたのために作ったんだよ。」カラスはそう言ってもう一度ナフサに向かって差し出した。「わかった。じゃあありがたくもらうね。」「そうしてね。ただ、一つだけ注意がある。」カラスは声を低くして言った。どこからか、カァ、と鳴き声がした。「これはね、あなたが今持っている袋。それに入れて持ち歩いて。」「う、うん。わかった。これをいつも持ち歩いていればいいのね。」
ナフサはカラスが差し出した珠を受け取り、ポケットから小さな濃い紫色の袋を取り出した。そして袋の中に珠を入れると、ポケットの中に戻しました。そして落とさないようにポケットのチャックも、きちんと締めました。それを見ると、カラスは目が少しうつろになった。もう亡くなるのだろうか。
「じゃあ、その珠の秘密、教えるね」
カラスはにこりと笑って言い、ナフサはドキドキしていました。