赤 『ん…』
深夜2時。
隣の部屋からは何やら物音がする。
赤 『桃くん…?』
そう呟きながらドアをそっと開けると、ブルーライトに照らされながら真剣に作業する彼の姿があった。
赤 『桃くん』
桃 『なに』
少し怒っているような、疲れているような声で返事をする彼。
ここ4日ほど、ずっとこんな時間まで作業しては朝早く出かけて行く。
そろそろ彼の体が壊れてしまいそうで心配だ。
赤 『そろそろ休んだら…?』
桃 『はぁ…』
桃 『大丈夫だから、』
赤 『大丈夫大丈夫ってそればっかり…』
桃 『いいから、!』
桃 『…赤には関係ねえから、』
負けず嫌いで頑固な性格の彼のことだ。
ここでしつこく言ったところで無駄だろう。
そう思った俺は、夜食でも作ろうとキッチンへと向かった。
赤 『…よいしょ』
彼の好きな卵スープ。
胃に優しいしこれで温まるかな、なんて考えながら湯を沸かす。
卵を用意しようと冷蔵庫を開けると、卵が一つもないことに気づいた。
なんでこんな時に限って、とスーパーに行った時に卵を買わなかった自分を恨む。
赤 『買いに行くか、』
俺は仕方なく、近くのコンビニへと卵を買いに出かけることにした。
赤 『ただいま〜…』
静かに玄関の扉を開け、家の中へと入る。
リビングに何やら影が見えたので、「桃くん?」と声をかけてみたが、返事はなく、また部屋へと帰ってしまった。
赤 『ん…?』
桃くんのいた場所…
常備薬のある場所だ…
赤 『あ…』
嫌な予感がした俺は彼の部屋へと向かった。
赤 『入るよ、』
中に入ると、案の定うずくまるようにベッドに寝転がり荒い息をしている彼がいた。
そっと額に手を当てると、平熱とは思えない熱さを感じる。
赤 『やっぱり…』
なぜ気づかなかったのだろう。
彼はそういう人だとわかっていたのに。
しんどさも辛さも伝えず無理してしまうことなど、とっくにわかっていたのに。
気にかけなかった自分に腹立ちながら、看病セットを持ってくるためにリビングへと戻った。
赤 『よし…』
看病セットを持って部屋に戻ってくると、さっきの様子がまるで嘘かのように、パソコンと向き合う彼の姿があった。
赤 『ちょ…桃くん!』
赤 『熱あるんだから休みなって!』
桃 『熱なんてない、』
赤 『ないって…さっきベッドで苦しそうにしてたじゃん、!』
桃 『うるさい、』
赤 『ちょっとくらい休んでよ!』
桃 『お前には関係ないだろ…!』
肩に衝撃を感じたと思えば、ガシャン、という大きな音と共に、俺は尻もちをついてしまった。
彼を見上げる姿勢になっていたことから、肩を押されて転んだことがわかった。
赤 『、!』
桃 『俺だって必死なんだよ…!』
桃 『俺の気持ちもわかれよ、!』
彼は声を荒げそう言うと、頭を掻きながらまた椅子に座った。
赤 『ごめん、』
呟くように言った俺の声は、聞こえていないようだった。
リビングに戻り、常備してある頭痛薬の数を確認すると、しっかり4日分減っていた。
こういうところだけ隠すの上手いんだから…などと考えていると、「赤」と呼ぶ声が聞こえてきた。
桃 『赤…』
少し火照った顔で俺を呼ぶ彼は、今すぐにでも倒れてしまいそうだった。
赤 『どした…?』
桃 『さっきは…ごめん…』
少し俯きながらそう言う彼。
そうやって気にしすぎるところも、昔から変わらない。
赤 『気にしてないよ、笑』
体調の方が心配な俺は「でも…」などと言っている彼を宥めながら、ベッドへと誘導する。
なんとか辿り着いたベッドに彼を寝かせ、冷えピタを額に貼る。
赤 『桃くん』
桃 『……』
赤 『俺は本当に怒ってないよ』
桃 『…、』
赤 『でも、体調悪い中こうやって頑張りすぎちゃって、結局出来なくなっちゃったら意味ないじゃん?』
桃 『ん…』
赤 『だから、俺がいいよって言うまではちゃんと休んでくれる?』
桃 『でも…』
赤 『でもじゃない』
赤 『これは俺からの“命令”ね?』
どうせ言うこと聞かないけどね。
まあいっか。笑
『命令』
コメント
3件
ぶくま失礼します!!
桃赤ちょいと地雷だがこういう系めっちゃ好き😭
このお話好きです😖💞 謝ってる桃くん偉い👏🏻