私には大好きな人がいる。名前は松村北斗。
『先輩!おはようございます!』
「あ、おはよ」
1年の頃に入学式で見かけた彼に一目惚れしたのだ。それから毎日話しかけ、松村先輩に振り向いてもらうため日々努力している。
だけど、今日も相変わらずの塩対応だ。3年生はあと2ヶ月で卒業となってしまうのに、
お昼休み、3年生の教室に行って彼を呼ぶ。
『先輩!一緒にお弁当食べましょっ!』
「うん、わかった」
松村先輩はどうやら友達が少ないらしい、女子からはモテモテなのにいつもひとりで過ごしている。だからお昼はほとんど私といる。
私といて嫌じゃないのかな、時々感じる。
けどそんなことは聞かない。きっと、好きじゃないとか言われるんだ。面倒臭い後輩だ、って。
私は一緒に話せるだけで幸せだから。
『今日もお弁当美味しそうですね!』
彼はいつも手作りのお弁当だ。色とりどりで野菜もちゃんと入ってる。私のとは大違い。
「ありがと」
冷たい言い方だけど、ほんとは嬉しいんだ。
『卵焼き綺麗!』
もっと話したくて、そう言ってみた。
「よければ、食べる?」
予想外の対応にちょっと驚く、けれど私はすぐに頭を勢いよく縦に振った。
『うんまっ!!』
「そう?」
『はい!とっても!!』
松村先輩が作った卵焼きはすごく美味しくて、つい大きな声を出してしまった。
それに対し先輩は、よかったと微笑んだ。
たまに見せる笑顔、私の大好きなこの笑顔ももうすぐ見れなくなってしまう。
するとチャイムが鳴った。
「教室戻るか」
『はい』
それから毎日同じことの繰り返し、何度も告白を試みたがやはり言えない。
あっという間に卒業式になってしまった。
私たちの学校では好きな人に女子はリボン、男子はネクタイをあげる風習がある。
松村先輩は誰かにあげるのかな、と思っていたらちょうど彼を見かけた。
卒業おめでとうございます、と声を掛けようとした。だが、やっぱりやめることにした。
なぜなら、ネクタイがなかったから。誰かにあげたのかな。もちろん自分は無理だとわかっていたが、少しは憧れるものだ。
告白もしないで振られたような気持ち。
もう帰ろう、そう思い校門を出た時、
「待って…!」
振り返ると、肩で大きく息をする松村先輩の姿が。
『どうしたんですか?』
そういうと黙って右手を差し出してきた。
「これ、渡したくて」
見ると、赤と青のストライプ柄のネクタイだった。
『ふふっ』
私は思わず吹き出してしまった。
『先輩もこういう事するんですね』
「う、うるさい」
先輩は少し顔を赤らめて、ん、ともう一度手を突き出した。
私はそれを受け取り、思いっきり彼の胸へ飛び込んだ。
『先輩、大好きです!』
先輩も強く抱き返してくれて、俺も、といい手を繋いだ。
それから目を合わせれば微笑んで、肩を寄せあった。
この幸せがいつまでも続きますように。
~fin~
コメント
22件
最高でした!北斗可愛すぎるー😍
北斗可愛すぎ
最高です✨なんでそんな素敵なこと思いつくのぉ⁉️