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[国見編]
玄関の鍵が回る音。
のそっと入ってきた国見は
リビングの明かりを見るなり、ぼそっと言う。
「……まだ起きてたの?」
ソファから顔を出した🌸が
ぱっと笑顔になる。
「おかえり、英ちゃん!」
「うん。ただいま」
そのテンション差はいつも通り。
でも、靴を脱ぐ動きが少しだけ早かった。
キッチンにあった鍋を見つけて
蓋を開けた瞬間、ふわっと湯気。
「……肉じゃが?」
🌸「英ちゃん好きでしょ?作ってみた!」
国見は一瞬言葉を失い、
バツが悪そうに視線を逸らす。
「……別に、俺のためじゃなくていいのに」
🌸「え、じゃあ食べない?」
「食べるけど」
即答。
椅子に座らせて盛り付けると、
無言でぱく…もくもく…
「……」
「味、変だった?」
国見は箸を止めて、
ほおを少しだけ赤くしながら言う。
「……美味いから黙ってる」
照れ隠しすぎる。
食べ終わる頃には
疲れた目が緩んでいた。
🌸が皿を下げようと立ち上がると、
国見の指先がそっと手首を掴んだ。
「……ねぇ。こっち来て」
座ったまま、
自分の膝の上に引き寄せる。
🌸「え、あの…英ちゃ…」
「動かないで。疲れたから」
ぼふっと肩に顔を埋めてくる。
息がかかる距離。
不意の甘えは心臓に悪い。
「待ってたんでしょ。俺のこと」
🌸「……うん」
「じゃあ、ちゃんと甘えさせて」
声は低いのに
態度は完全にワンコ。
ぎゅっと抱きしめながら、
ひょいと顎を上げさせて、視線を合わせる。
「あのさ。…ありがと」
ふっと目を伏せて、
小さな声で続ける。
「俺のために作ったの、嬉しい」
耳がほんのり赤い。
そして、
少し不器用に唇を近づけて…
「待っててくれると、…頑張れるから」
短く触れるようなキス。
でも胸の奥まで響く。
「好き。……離れんなよ」
無気力な男の
一番熱い告白だった。