テラーノベル
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久しぶりの短編の投稿
登場人物「〇〇・涼ちゃん」
「じゃあ俺たち、別れるってこと?」
涼ちゃんと夜景を見ていたら、となりのカップルがそんな事を話していた_私はすぐに「ねぇ、この展望台にカップルで来たら別れるってほんと?」と、横にいた涼ちゃんに聞いた_涼ちゃんは遠くを見つめて「らしいね」とつぶやいた_「もしかして、知ってて誘った?」「まぁ有名だからね」「それなら私、来たくなかったんだけど…」顔を伏せると、彼氏の左腕にはお揃いのブレスレットが付いていなかった_私は顔を上げて、「今すぐ出たい」と涼ちゃんの腕を掴んだ_涼ちゃんは私の顔を見て「今ここで、話しておきたいことがある」と言った_私はすぐに「ごめん……」と謝った_昨日の夜、私は涼ちゃんのスマホを見てしまった_彼氏は寝ていたから気づいていないと思っていた_でも、「やっぱり、見たんだね……」涼ちゃんは気づいていた_夜景を横目に「こうなった以上、もう恋人ではいられない」そう涼ちゃんは言った_私は首を振って、嫌だ、そう言いそうになった_でも、そんな資格はなかった_昨日の夜、開いてしまった涼ちゃんのスマホ_浮気の証拠なんか一つもなかった_ただ私は二人の信頼関係にヒビを入れただけだった_「ごめんね」涼ちゃんはそう言って背中を向けた_「待って」歩き出す涼ちゃんを、私は呼び止めた_涼ちゃんは振り返って「バイバイ」と笑った_涼ちゃんがここ数日、笑顔を見せなかったのは、私が常に疑いの目を向けて冷たく接していたからだと気づいた_たとえ、スマホをお風呂に持ち込もうとも、スマホを裏向きで置かれようとも、信じてあげるべきだった_涼ちゃんのスマホを開いた時、待ち受けには私の寝ている姿が映っていた_カメラを疑う私に隠れて、涼ちゃんはこっそり私を待ち受けにしていた_ただ、それだけだった_「下まで送るよ」私は、車の鍵をポケットから出した_涼ちゃんは首を振って「大丈夫」と言った_「暗いし、危ないよ?」「平気だよ」「心配しちゃうから……」「じゃあこれ以上の会話は禁止ね」涼ちゃんはそう言って、私との距離を一歩ずつ戻した_私を追い越して「飲み物買ってくる」そう言って自動販売機に向かった_私は車の鍵を開けて、運転席で涼ちゃんを待った_フロントガラスが明るく照らせれて、助手席の窓から花火が見えた_遠くで打ち上がる花火が、何組ものカップルを照らしていた_「みんな、ほんとに別れちゃうのかな…」私は、花火を眺めながらつぶやいた_人影が見えて、その影の形だけで私は「来たっ」と、つい口角をあげた_すぐに口角を戻して、もう彼氏じゃないんだと前を向いた_助手席のドアが開いて、涼ちゃんがいちごミルクを差し出した_私は涼ちゃんの目を見つめて、いちごミルクを受け取った_シートベルトを締めて、エンジンを掛けた_唇を噛み締めて、私はゆっくりとアクセルを踏んだ_山道を下っている間、涼ちゃんは何どもいちごミルクを口にして空を見上げた_美味しそうにいつも飲むから、自然と私もいちごミルクを選ぶようになった_膝に置かれた涼ちゃんのスマホは、表を向いていた_もう、隠し事のない二人は、まっさらな空の下で手を振った_涼ちゃんの背中を見届けたあと、私はハンドルに顔を伏せた_さっき信号待ちをしていた時、一瞬だけ涼ちゃんのスマホが光った_そこにはもう、私の姿はなかった_いちごミルクを理由に、涼ちゃんは待ち受けを変えていた_私もスマホの待ち受けを変えようとした_すると、一件の通知が来ていた_それはさっき、涼ちゃんの画面も光らせた_カップルアプリからの通知だった_『おめでとうございます』_涼ちゃんが記念日に選んだ最後のデートは、恋人と来ると別れる場所だった_さっき涼ちゃんを呼び止めた時、涼ちゃんは左腕で顔を拭いていた_もしかしたら、涼ちゃんは自分じゃ嫌いになれなかったから、ここに私を連れてきたのかもしれなかった_私は窓の外に目を向けた_暗くなった山の頂上を見上げて「どうか神様、涼ちゃんの事を幸せにしてください」そう願いを込めてまぶたを閉じた_閉じたスマホに涙が落ちて、待ち受けが光った_そこにはまだ、一件の通知が残っていた_『今日は二人が付き合って1000日記念日です』_それは、ふいに二人を光らせた、最初で最後の消せない通知だった_
終わりです!
彼氏目線見たい方いますか?
コメント
3件
うわーーん。゚(゚´Д`゚)゚。 やば、、最高過ぎ‼︎