この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません
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宮舘side
彼を家に上げたのはこれで何回目だったかな。両手で数えられる…くらいなら、よかったんだけど。生憎俺には両手合わせて10本しか指がない。それっぽっちじゃきっと数えきれないくらい、俺は彼に絆されてしまっている
『で?いつまでこんな関係続けるつもり?』
「やめるつもりなんかないですけど」
『…いやそろそろバレる可能性出てくる頃でしょ、』
「バレたら付き合えば良いじゃん。俺舘さんのこと好きですよ」
『またそんなことばっか言って…』
相変わらずのらりくらりと躱し続ける彼。この口先の上手さは、彼がアイドルだからか。それとも、出会ってから今の関係に至るまでの何もかもが、俳優 “目黒蓮” の演技のうちに組み込まれた何かだからか。何れにしろ、そのアソビに引っ掛かってしまった俺はきっと馬鹿で哀れに見えている。それでも良かった、始めから終わっている関係だったんだから
「ほんとですよ?」
『口ばっかの癖に…てか来たってことはそういうことでしょ?』
「まあ、何の目的もなく来るわけはないですよね」
『はぁ…やるなら早くシよ、先シャワー浴びてくるからちょっと待ってて』
国宝級、とまで言われた程の色男とこんなにも淫らで危険な関係性に堕ちてしまっている。彼に恋情を抱いていた数年前の自分自身に今の関係を伝えたら、どんな反応をするだろう。どのみち一緒になれることなんて無いんだから、そんな条件飲むなと言うかもしれない。あるいは、互いに合意の上だしそれで諦められるのであれば後腐れなくて良いじゃん、なんて言う可能性もあるのかもしれない
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シャワーを浴びようとツマミを回すと、俺の心模様とは裏腹に勢い良く熱すぎるくらいのお湯が出てきた。前に使った人は寒がりだったんだろうか。まあ人の温もりが足りてる人は、こんなところには来ないよな
『…熱、』
最初は、彼からの特別が欲しくてどうしようもなかった。あの黒蝶真珠のような瞳に映るのは俺だけが良かったし、あの唇から紡がれる言葉を受け取れるのも俺だけが良かった。「貴方だけ」という言葉に憧れていた。だけど実際に手に入れた関係はただのセフレで、そういう目的で呼ばれる以外にはなくて。「貴方だけ」なんて言葉はもういらない、これ以上のことは望んではいけない。今引き返せばきっと元に戻れる、そう思ったのに
『…俺じゃダメ、なのかな』
結局口から出るのは未練がましい、いつからか押し込めた本心だけ。その空気も、纏い続けている嘘の匂いもすべてお風呂で流しつくす。念のために、と後孔に中指を沿わせると抵抗することなくどんどん飲み込んでいった。今日もきっと、上手くやり過ごせるはず。一時的でも、どんな形であろうと、愛してもらえるんだからそれでいい。身体で繋ぎ止めているような脆い関係だけど、俺には、俺たちにはそれしかなかった。それだけで良くて、それだけで俺は幸せなんだって、
『嘘なのにね』
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目黒side
『またそんなことばっか言って…』
俺の好意はいつもその一言で流される。こっちは口だけじゃないのに、彼は俺の気持ちを本気にしたことなんて一度もないんだろう。彼への気持ちを自覚したのは、確か丁度1年ほど前。不仲だった時期を越えてわかりあえるようになってから鮮明に見えてきた彼の意思の強さや、強さ故の弱さ。その裏の葛藤をも全て魅力に変えてしまうキャラクター性にどうしようもなく惹かれてしまった
セフレにならないかと提案したのは俺からだった。提案したあの日、本当は彼に告白するつもりだった。だけど彼に恋人や思い人がいないか探る度に微妙な反応が返ってきて、彼の隣に居るべきは俺じゃないんだと思った。
よっぽど辛い恋をしていたのか泣きじゃくる彼をその時初めて見て、慰めた後勢いで一線を越えてしまって。1回キリにしようと思っていたのにその関係は途切れることを知らなかった。ずるずると続けてしまって既に数ヶ月。彼への恋はもう届かない
「…あ、これ…」
俺が何年も前にあげたネックレスを彼は着けてきてくれていたらしい。ベッドサイドに置かれたそれを見て口元を緩ませる。でもこれを着けているからと言って彼が俺を視界に入れてくれるかなんてわからないどころか、そんな可能性はほぼ無い。これからも、何してももう意味なんてないんだろうな
『…ごめんね、ちょっと時間かかっちゃった。目黒も入る?』
「あー…うん。軽く汗だけ流してくる」
浴室に入るとふわっと湯気に包まれる。若干彼のシャンプーの香りがしたような気がした
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『頭洗わなかったんだ?』
「うん、今日そこまで汗かいてないし」
『羨ましい、代謝良いとこういうとき困っちゃうね』
「舘さんの汗は汚くないしえろさの底上げしてるだけだから大丈夫だよ」
『褒…められてる、?笑』
「褒めてる褒めてる笑」
ちゅ、と乾いた音が俺の口元から鳴る。俺のものじゃないから、印はつけたくてもつけれない。だからせめて、匂いだけでもうつしてやろうかなんて。誰に対しての牽制で、なんの意味があるのかもわからないけれど辞められない。彼は俺のものだけど、俺のものじゃないから
『ねぇ目黒』
「ん?」
『…なんでもない、』
「何、気になるじゃん」
『なんでもないって、呼んでみただけ』
あぁもう、好きだなぁ
「そっか、笑」
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また今日も、一方的な愛を乗せた快楽は彼の身体を蝕んでいく。何度目かわからない絶頂を迎えた直後、彼は息も絶え絶えにストップをかけてきた
『ぁ、♡…も、おわり、もう無理、♡』
「もう無理なの?」
『め、ぐろは、っぁ…、絶倫過ぎるんだって、』
「そうかな…」
好きな人の乱れた姿が目の前にあったら、男たるもの誰しもこうなるとは思うけれど、無理はさせたくない。こんな関係を選んでおいて変な話だが、本当に愛しているからこそ自分のせいで彼が辛い思いをするのは嫌だった
「…抜くから力抜いててね」
『ん…』
「…寝たかったら寝てて良いよ、後処理俺がやるし」
既に閉じかけている目蓋を必死に開けようとしている彼にそう声をかけると、スッと目が閉じられた。もう何処に何があるか把握しきった彼の家で、タオルを借りようとベッドから降りた
「…好きだよ、ほんとに」
嘘じゃないから流せなかったこの声は、きっと誰にも届かない。そして俺はこれからも、同じ過ちを繰り返す
コメント
9件
はじめまして。 🖤❤️好きなのでドキドキしました🥺 面白かったです!
最後結ばれるといいなぁ…めめだて好き😊🖤❤️
えっへ、最高ですね、めめだてはまってるんです、もう、ころさないでくださいよ、 続きが気になりすぎて夜しか眠れないじゃないですか‼️