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サトツを後を追い走っていたゴン、キルア、クラピカ、クロロ、レオリオの5人。
途中でゴンとキルアの勝負魂に火がつき、2人はどちらが先にゴールをするかを競うため先に進んで行った。
今この場にいるのは、クラピカ、クロロ、レオリオの3人である。
変わらずサトツの走るスピードは速いのだが、3人は会話をしていた。
「レオリオ。お前、船の中で金が欲しいと言っていたな。あの時は欲にまみれた事を言っていたが実際はどうなんだ?」
クロロがレオリオに尋ねた。
短い付き合いだが、レオリオは誠実な男だと思っている。だからこそ、何故そのような事を言ったのな気になるのだ。
「アレは別に嘘なんか付いちゃいねぇよ」
とレオリオは言う。
すると会話を聞いていたクラピカは
「嘘は付いていないが本当の事も話していないのだろう?」
とレオリオに尋ねた。
それにレオリオは肯定した。
レオリオは幼い頃に友人がいた。
その友人は病を患っていた。
レオリオはその友人を助けたい、そう願い医者を目指した。
しかしその願いも果たされることはなかった。
ある日、友人は死んでしまったのだ。
医者に掛かれば、死ぬ事のなかった病。
貧困な土地で生きている人間に、病院で診察ができる程の金銭などない。それが悔しくて堪らない。
だからこそ、金が欲しい。金さえあれば何でも出来る。そう言ったのだ。
一度は夢見た医者という職業。心の奥底で今も燻っているソレに目を逸らしてレオリオは自身についてを語った。
「立派な理由があるじゃないか」
話を聞き終えたクロロはレオリオにそう言った。
クラピカもクロロも、レオリオが心の奥底で医者なる夢を諦めきれてない事など分かっていた。
キリコ一家の家で、真っ先に怪我人の手当をしていたのはレオリオである。
そして、その手当は殆どが完璧なものであった。
何度も繰り返し勉強していなければ、咄嗟に判断することは出来ないはずである。
医者になる夢を叶えられればいいな。とクラピカとクロロは密かに思うであった。
自身のことを語ったレオリオは、クラピカとクロロについてを尋ねた。
クラピカはクルタ族の少女。
クルタ族は緋の目を持った一族で、その目の輝きは世界七大美色とも言われている。
そんな少女に突如として悲劇が襲う。クラピカが里の外へ出ている間に、里が襲撃に見舞われたのだ。
里へ帰ってみればそこは火の海。
クラピカは必死に走った。
父や母、大切な幼なじみの安否を確かめるためだ。しかし、家に向かっている途中、里の者が倒れているのを見つけてしまう。
慌てて近寄ってみれば、その者は絶命しており、本来目があるべき場所には何も収まっていなかった。
呆然と立ち尽くしていたクラピカだったが、家へと急いだ。
あぁ神様。どうか私から全てを奪わないで。
不安な気持ちを抑え家に入ってみれば、父や母が倒れている。近寄ってみれば、やはりそこに目はなかった。
泣いて叫んで、ただ絶望した。
大切な幼なじみを探さなければ…
覚束無い足取りで、幼なじみの家へと向かう。
幼なじみはパイロという少年だ。しかし、昔に事故で自力では動けなくなっていた。
パイロの家へと向かえば、パイロの両親が倒れていた。もちろん目は無い。
パイロがいつも寝ていたベッド。そこには誰の姿も見えない。しかし、大量の血液の跡が残っていた。これではきっと助からない。
クラピカは一夜で、里を、家を、両親を、一族を失ってしまった。
あとから知ったのは、襲撃してきた組織が骸と呼ばれているという事だ。
お前たちが生きている限り、私はお前たちを狩る復讐の鬼となろう。
クルタ族の生き残りの少女が復讐の鬼となった日である。
クロロには両親の記憶はない。
クロロが育ったのは流星街。存在自体が抹消された場所。ここでは人間が最低限の生活を送るのさえままならない。
死体や生きた人間、ゴミなどが捨てられる。
明日死ぬかもしれない、そんな生と死の狭間で生きてきた。
友人は病死だったり、殺されたり。とにかく死因は色々である。
生きるためには盗みだってした。でもそれ以上の事はしないようにして来たはずだったのに。
当時10歳そこそこのクロロは、1人のギャングに襲われそうになった。その時、咄嗟に隠し持っていたナイフで男の首を刺してしまったのだ。
大量に吹き出る血飛沫。頭の良いクロロは自分の犯した罪の重さを理解した。
その後ギャングは死んだ。もう元には戻れない。そしてクロロは流星街から姿を消したのだった。
話し終えた2人。その場の空気は非常に重い。
3人は無言でサトツを追った。
しばらくして気づいたのだが、走っている人数がだいぶ少なくなっていた。
恐らくゴールも近いだろう。とクラピカは思う。
そしてクラピカが思った通り、集団は最後の坂に突入した。
スピードが落ち始めたレオリオに、クラピカとクロロが声援を送る。
「頑張るんだレオリオ」
「あと少しの辛抱だぞ」
レオリオは一生懸命に走り、やがてゴールにたどり着くことが出来た。
一足先にゴールしていたゴンとキルアがこちらに向かって手を振り駆け寄って来る。
「お疲れ様!!」
全く疲れた様子を見せないゴンに苦笑いを浮かべるしかないレオリオであった。