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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第43話 〚沈黙の意味〛(海翔視点)
教室は、
静かすぎた。
昼休みの終わり。
いつもなら、まだ誰かが笑っている時間なのに。
俺は、前を向いたまま、
動かなかった。
——正直に言うと。
言えた。
りあに、
今すぐ何か言うことはできた。
止めることも、
かばうことも。
でも、
あえてしなかった。
理由は、
一つじゃない。
澪の様子を、
ずっと見ていた。
俯いて、
でも耳は塞いでいない。
震えてない。
泣いてもいない。
……あれは、
耐えてる顔じゃない。
「見ている」顔だ。
そして、
俺の隣で、
澪は動かなかった。
それが、
答えだった。
守るって、
前に出ることだけじゃない。
時には、
踏み込まないことも、
守りになる。
りあの声が、
小さく聞こえた。
陰口。
悪意。
自分で撒いた言葉に、
自分が絡め取られていく音。
俺は、
拳を握った。
正直、
腹は立っていた。
澪に向けた言葉。
過去の空気。
見下す視線。
全部、
許せない。
でも——
今、俺が声を上げたら。
りあは、
「叩かれた側」になる。
そうなった瞬間、
澪が“悪者”にされる未来が、
頭をよぎった。
……それだけは、
絶対に嫌だった。
澪は、
戦っていない。
ただ、
立っているだけだ。
それなのに、
これ以上背負わせるわけにはいかない。
チャイムが鳴る。
りあは、
俯いたまま席に戻った。
誰も声をかけない。
その孤独を、
俺は、
見届けた。
冷たいかもしれない。
でも、
必要な時間だ。
澪の心臓が、
今日は、
何も反応していない。
それが、
一番の証拠だった。
未来は、
まだ決まっていない。
なら。
俺は、
澪の隣に立つ。
声を荒げず、
拳も振り上げず。
ただ、
逃げ場を作る。
沈黙は、
無関心じゃない。
——選択だ。
俺は、
そう信じている。
そして、
この沈黙の先で。
必ず、
澪が自分の足で進めるように。
それが、
今の俺にできる、
一番の“守り方”だった。
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