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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第44話 〚助けを呼べない理由〛(りあ視点)
……誰か、
助けて。
喉まで出かかったその言葉は、
結局、声にならなかった。
教室の隅。
笑い声が、やけに遠い。
——違う。
遠いんじゃない。
私が、そこにいないだけ。
少し前まで、
声を出せば誰かが振り向いた。
可愛いって言えば、笑ってもらえた。
強い言葉を使えば、空気を握れた。
……はずだった。
今は、ひそひそ声だけが残る。
止まる会話。
刺さる視線。
「……三軍のくせに」
その言葉に、心臓が跳ねた。
昔、私が誰かに投げた言葉。
形を変えて、戻ってきただけ。
胸が、ぎゅっと潰れる。
助けを呼べばいい。
先生に。
誰かに。
頭では分かってる。
でも、できない。
私が言えば、
「今さら被害者ぶってる」って思われる。
泣けば、
「自業自得」って笑われる。
一度“上”にいたから。
見下ろす側の景色を知ってしまったから。
今さら、
弱い側に戻れない。
澪の顔が浮かぶ。
静かで、揺れなくて。
何も言わずに、立っていた。
——ずるい。
そう思った瞬間、
自分がどれだけ脆いかを知った。
私は、助けを呼べない。
呼んだ瞬間、
「弱い自分」を認めることになるから。
誇りなんて、
もう残っていないのに。
それでも、
手放せない。
だから私は、
一人で座っている。
声を出せず、
誰にも届かず。
助けを呼べないまま、
沈んでいく。
——これが、
私が選んだ場所。
そう思わないと、
立っていられなかった。