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氷
が降る。
それはとても静かな雨だ。
降り続ける氷の粒たちの中で 雪になる前に溶けてしまう 水滴たちの涙たちが きっとこんなふうにして 静かに泣いているんだろうなあ なんて思いながら ただただ見上げているうちに ふと自分の頬を流れる雫があった。
ああそうだ、これはわたしのものだ。
ずっと前からこうなることがわかっていたみたいに すんなりと納得した自分に 少しだけ驚いた。
世界が終わることよりも 自分が泣く理由の方がわからなくて でも、それでもいいと思った。
泣き方を忘れてしまった声にならない声で泣くんだ きみに聴こえないように この部屋はとても狭くて まるで宇宙みたいだ 星々のように光るものたちが 音もなく流れていく ぼくの心臓の音だけが 聞こえているような気がした いつの間にか眠りについていた 目が覚めたときには 太陽が昇っていた 朝になっていた そしてぼくの隣には もう誰もいなかった きみがいたはずの場所が ひどく冷たかったから 泣かないでと君は言ったけど 無理だったよ 涙は流せなかったけれど あの日からずっと 胸の奥底が痛かった きみがいないだけで こんなにも苦しくなるなんて思わなかった きみは今どこで何をしている? きみが無事ならそれでいい ただそれだけを願っている きみがいる場所は暖かくて明るいだろうか そこにぼくはいないかもしれない それでも構わない どうか幸せになってくれ ぼくはそれだけを願い続ける もしもまた会えたら伝えようと思う 今度はうまく笑えるように頑張ろうと思う だからそれまでさよなら
あぁ、なんだっけ 忘れちゃった。
でも 覚えてるよ。
ほら、今も ぼくの心の中で 歌っている きみの歌
ねぇ、どうして そんな顔をするの? 大丈夫だって 言っているじゃないか どうしたら信じてくれるの? わからないよ ねぇ、教えてよ ねぇ、教えてくれよ どうしていつもひとりで抱え込むのさ どうしてそんなに優しいのさ どうしてそんなに強いのさ ねぇ、教えてよ ねぇ、答えろよ! ねぇ、教えてよ ねぇ、お願いだから……っ! ねぇ、教えてよ ねぇ、教えてよ ねぇ、教えてくれよ……っ!! ねぇ、教えてよ ねぇ、教えてよ ねぇ、教えてくれよ……っ!!!
「あぁ、わかった。君は僕のことなんか何も知らないんだ」
「僕も君のことがよくわからなくなってきた」
「もういい加減、冬なんて終わればいいんだ」
とか言った途端、 この部屋は今すぐにでも 冬の終わりを迎えるらしいから 二人とも急いで布団に入りましょう! あしたになったらまた 二人で楽しく過ごせるように。
ぜっさんぶろ さむさにまけて ぬっくぬくに なったまま 寝たらだめだよって 言われても どうせ朝が来たらぼくらは起き上がるんだから いまくらい ゆるしてくれよ。
こわいなら 僕もいっしょに 寝てあげるよ。
だから安心していいよ。
ほら、こうやって。
ひとりじゃないんだから。
お布団被れば大丈夫だって。
あったかいよ。
ね? きみの隣にいるよ。
だから、ほら、だいじょうぶ。きみはいつも 大丈夫じゃないときに 大丈夫だよって言うから 不安になるんだ。
ぼくはきみのことが好きなんだけど、 君はどう思ってる? こんなに寒い日なのに どうしてぼくの部屋に来たの。
答えたくないならいいけど。
なんにも言わなくていいけど、 でも、ちょっとだけ、寂しいよ。
いま何考えてるか当てようか。
「さみしい」とかそういうことじゃなくて、 もっと違うことを考えてるんでしょ。
それくらいわかるよ。
ねぇ、本当にわかってほしいことは、 言葉にしなくても伝わるなんて、 そんなの嘘だって思う。
声に出してくれなきゃわからない。
でも、声を出したって伝わらないことのほうが多い。
だから、うまくいかないことばっかだし、 ずっとこのままなんだと思う。
それでもぼくは、君のことを想っている。
それだけは本当なんだよ。
それは信じてほしいんだ。
あの、ぼくは、本当は、 君と一緒にいたいと思ってる。
でも、君は、ぼくのことなんか嫌いかもしれない。でも、ぼくは大丈夫だから きみはだいじょうぶだよね? ぜつべろっほぐわぁぬんあぉれと まぃやらおぱぅらるうおなあぁああ! まぁめおぱぁらるうおなぁあう! ふたりは一緒ならさみしくないから。
ぜつべろっとも、まぃやらも。
みんな、みんな、 凍っているんだ。
この部屋だけが、凍っていない。
それだけなんだ。