俺と雷夏は幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもない関係のはずだった。
だがいつからだろう、雷夏の体温を愛おしいと思うようになったのは、名前を呼ばれる度に心臓がうるさくなるようになったのは。
これが恋なのだとどこかの誰かは言っていた、けれどこれまで読んできたどんな本だって、最後結ばれるのは王子様とお姫様のような異性同士で同性の俺と雷夏は付き合うなんてできないと半ば諦めていた。
ある日、俺は突然結人に呼び出された。断るか迷ったが雷夏が
「 いいじゃん、行ってきなよ。 」
と笑顔で言っていたので待ち合わせである屋上に来た訳だが…
結人は呆れたような顔で俺に言った。
「 脳筋ゴリラって本当に脳筋なんですね。 」
と、呼び出しておいてこの言葉はないだろう…と思いつつそう言われる心当たりもないので悩んでいると
「 雷夏くんのことですよ、本当は自分何も言うつもりはなかったんですけど……ふたりが両思いオーラ出しておきながら全然付き合ってないのが気になったんです‼︎ 」
「 それは雷夏が俺なんかが相手なんて嫌がるだろうから……ってまて、両思いって言ったか⁇ 」
「 いいましたけど⁇脳筋過ぎてついに海馬までやられちゃいましたか〜⁇ 」
「 …は…⁇いや…両思いなんておかしいだろ‼︎…雷夏はきっと俺の事なんて好きじゃない… 」
「 そうですか…まぁそれは本人に直接聞いてみたらいいんじゃないですか?ね、雷夏くん。 」
「 …雷夏はこの場にはいないだろう、先程ここに来る前に別れたばかりなんだからな。 」
「 雷夏くんが気配消せること、忘れてたんですか⁇ 」
もしかしてずっと聞かれていたのか、だとしたら俺が雷夏のことを好きなことがバレてしまう、両思いだと言うのも結人の嘘でもし俺の片思いだった時には引かれるに違いないだろう。
「 …結人……バラすのはもっと遅い時間の予定だったでしょ⁇ 」
そうため息をつきながら雷夏は気配を消すのをやめて俺の前に立つ、その顔は少し赤くそれがとても愛おしく思えた。
「 ……あの、僕…恵吾のことが好きなんだよね、多分嘘だと思われてると思うんだけど、僕は本気だから。 」
そう言っている雷夏の目は今にも泣き出しそうになっていっていた。
「 ……いつの間にそんなに頭が悪くなったんだ、そんな表情を見せられて嘘だと俺が疑うようなやつだと思うか⁇ 」
俺がそう返すと雷夏は緊張が解けたのだろうか、腰が抜けてしまったようでその場に座り込んで涙を流していた。
「 ……そっかぁ…よかった………ずっと伝えるのが怖くて…それで結人に無理言って頼んで… 」
「 そうだったのか、今まで気づけなくてすまなかった… 」
その時、不意に結人の声がした
「 …あの〜……そろそろ下降りないと、学校の門閉まっちゃいますよ… 」
そうだった、放課後に呼び出されて今日は部活のない日だからいつもよりも早く帰らないとだったのだ、その事を思い出し雷夏のことをお姫さまだっこしながら階段を急いでおりていく
「 ちょ…ちょっと…置いていかないでくださいよー!! 」
結人が息を切らしながら必死に追いかけてきているが足が遅いのであまり早くはない。
「 ……仕方ない、今回だけ待ってやる。 」
本当は雷夏の体温を長く楽しみたいから待っているだけだがそれは秘密だ。
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