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まなみのペンを持つ手が小刻みに震えてるのを、そらとはちゃんと見てた。
「……お前さ、そんなに俺の声で震えるん?」
「ち、ちがうもんっ」
「ふーん……」
そらとはわざと低い声でそう言って、
まなみの肩に片腕を回すように少し体を寄せる。
「ねぇ、そらと、勉強中なんやけん離れてってば」
「離れたら問題解けるん?」
「……そ、そんなん、解けるもん」
「ほんなら、証明してみ?」
にやっと笑って、そらとは問題集を指差す。
「この問題、三十秒で解けんかったら──
俺がまなみに“ヒント”出したる」
「ヒントって、耳元で言うやつ?」
「正解」
「そ、そんなの集中できんしっ」
「ほら、タイマー、よーいどん」
案の定、焦るまなみはあっという間に間違える。
そらとはそれを見て、ゆっくりとまなみの耳元へ顔を寄せた。
「……なぁ、sinの導関数ってなんやったっけ?」
低く囁かれた声と、耳にかかる吐息で、
まなみは「ひゃっ……」と小さな声を漏らしてしまう。
「おい、可愛すぎやろ」
「か、可愛くないっ」
「んじゃ、もう一回聞いたろか」
そらとはわざと、耳たぶに息をかける距離まで近づく。
「sinの導関数は──」
「っ……や、やめっ……!」
「やめてほしいん?」
「……やめてほしくないけどっ」
「……正直でよろしい」
まなみは恥ずかしくて顔を真っ赤にしたまま俯くけど、
そらとは満足そうに口角を上げた。
「なぁ、まなみ」
「……なに」
「そんな反応するくらいやったら、最初から大人しく教わっとけって」
「……だって、そらと意地悪やもん」
「んー、意地悪っていうより……」
そらとはまなみの顎先に指先をかけて、
そっと顔を上げさせる。
「……お前が可愛すぎて、ちょっと試したくなるだけ」
「っ……」
「ほら、次の問題。これ解けたら、俺、ちゃんと大人しくするけん」
「……ほんとに?」
「約束はせんけど」
「そ、らと……!」
「冗談やって。ちゃんと見とるけん、安心せぇ」
そらとが耳元で落とした最後の低い声に、
まなみの心臓は破裂しそうだった。