その日は雨だった
土砂降りの
こんな日でも彼は自殺をしに行った
いつもなら……彼は自殺できなかったと云って、社に帰ってくる時間だった
その日は珍しく社に来なかった
きっと、アイツのことだから、家にでも帰ってるんだろうって皆は云った
……僕もそう思った
……そう、思いたかった
今日も来なかった
次の日も
また次の日も
……流石に皆は異変に気づいた
僕も気づいていた
きずかない振りをしていた
敦が家に居ないか確認しに行ったところ
太宰は家に居なかった
皆は口を揃えて云った……
「太宰は死んだのかもしれない」 と。
普段から自殺だの心中だの云ってるアイツのことだから、そう思うのも無理はない
でも、皆はアイツの生命力を知っているから、冗談で云っているのは判る
でも、何故か胸のザワつきが消せなくて
僕は云った
「そんなわけないだろ」 と。
皆は一斉にこちらを見て笑いながら云った
「乱歩さんが云うなら間違いない」 と。
本当は……何の確証もない。
ただ、…………僕がそう思いたかっただけだ
「乱歩さん、僕、太宰さんを探しに行ってきます」
敦が僕にそう云った
何故僕に?
決まっているだろう。
敦は……
「なんで僕に報告するの?」
「僕に云ったって、意味ないんだからさあ」
「国木田にでも云ったら?」
僕の……
「……乱歩さんにお願いがあります」
……知ってる
「えー、やだよ」
そう云うと、敦は待ってましたといわんばかりに目を輝かせた
敦が目の前に差し出したのはラムネだった
あー、なるほどね
「…………なに?」
「えっ!思ってた反応と違う!」
「はあー、これだから子供は」
「子供……」
「そんなねえ、ラムネがあれば僕の異能を使えるなんて甘ったるい考えは辞めた方がいいよ」
「(꒪д꒪II」
……ごめんね、敦……
僕だって、こんな意地悪したいわけじゃないんだ
ただ………………………
真実を知るのが怖かった
メガネを掛けようとしても、手が震えるんだ
何もみたくない
何も考えたくない
何も知りたく、ない
まだ……
今、は……
少しの希望に縋っていたい
コメント
6件
だ,太宰……さん?
太宰さん嘘でしょ…(இдஇ`。) 続き待ってます!