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#高校生
第31話 「最後のミーティング」
夏が終わった。
福岡優勝。
だが甲子園はなかった。
柳城高校野球部、三年生最後のミーティング。
部室には静かな空気が流れていた。
ユニフォーム姿。
泥の残るスパイク。
でも、もう次の試合はない。
福間監督が前へ立つ。
しばらく何も言わなかった。
選手たちを、一人ずつ見ていく。
「……ようやった」
短い言葉。
それだけで、何人かが俯いた。
「お前らは、柳城を変えた」
「胸張れ」
静かな声だった。
だが、その言葉は重かった。
三年間。
負け続けた。
悔しい思いもした。
それでも最後、福岡の頂点まで辿り着いた。
福間監督は続ける。
「甲子園には行けんかった」
空気が止まる。
「……でもな」
「お前らが弱かったわけやない」
その瞬間。
何人かが涙をこぼした。
小早川は、唇を噛み締める。
甲子園へ行きたかった。
全国と戦いたかった。
その想いは消えない。
福間監督は深く息を吐く。
「これで終わりやない」
「野球続けるやつもおる」
「違う道行くやつもおる」
「でも、お前らは一生、“柳城の選手”や」
静かな拍手が起きた。
ミーティング後。
三年生たちはグラウンドへ出る。
夕暮れ。
誰もいない球場。
小早川はホームベースの後ろへ立った。
何百回も座った場所。
苦しかった。
楽しかった。
悔しかった。
全部、この場所にあった。
「お兄ちゃん」
舞だった。
「終わっちゃったね」
小早川は少し笑う。
「そうやな」
舞は少し黙ったあと、小さく言う。
「でも、柳城は終わってないよ」
啓介が舞を見る。
グラウンドでは、一年生たちが整備をしていた。
次の代。
次の夏。
野球部は続いていく。
その姿を見ながら、小早川は静かに呟いた。
「……頼むぞ」
その夜。
柳城高校の校門前。
おっちゃんとおばちゃんの店。
店内には、野球部員たちの笑い声が響いていた。
「キャプテン泣きすぎっすよ!」
「うるさい!」
久しぶりに、みんな笑っていた。
おっちゃんが鉄板の前で言う。
「甲子園行けんでも、お前らは柳城の誇りたい」
その言葉に、部員たちが静かになる。
外では、夏の終わりの風が吹いていた。
そして小早川啓介は、まだ知らない。
自分の“やらないといけない事”が、ここから始まることを。
第31話 終
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