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#シークレットベビー
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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西原衣都
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猫塚ルイ

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(血縁関係が、無い? ってことは、希海くんは京極さんの子供じゃ、ないの?)
羽衣子の頭の中が一気に混乱する。
けれど、表情だけはどうにか取り繕おうとして羽衣子は唇をきゅっと結んだ。
(それなら希海くんは……奥さんの連れ子……だったとか?)
そんな考えが浮かんだ直後だった。
昴は静かに視線を伏せ、低く落ち着いた声で続ける。
「希海は、私にとって、とても大切な夫婦の子供だったんです」
「……大切な、夫婦……?」
羽衣子は呆然とその言葉を繰り返した。
「それじゃあ、希海くんは、京極さんの奥さんの連れ子とかでも無くて……全く、他人の……」
「ええ、そうです」
昴は真っ直ぐ羽衣子を見つめたまま、はっきりと頷いた。
「希海は、私が兄のように慕っていた方と、その奥様の子供なんです」
「…………っ」
予想だにしなかった話に、羽衣子の思考は完全についていけなくなっていた。
自分が思っていた以上の事実が明らかになってしまったから。
その時――その言葉を聞いた瞬間、別の疑問がふと浮かぶ。
「じゃ、じゃあ……京極さんは、結婚されていなかったんですか……?」
羽衣子は自分でも場違いだと思う問いだったのだが、気づけば口から零れてしまっていた。
すると昴は少しだけ目を細め、淡々と答えた。
「ええ。結婚どころか、そもそも相手がおりませんから」
「……そう、だったんですね」
その答えに羽衣子の胸が微かに熱を帯びる。
こんな話をしている最中なのに不謹慎だと思いながらも、どこか安心してしまった自分がいた。
けれど、今はそんなことを考えている場合ではない。
羽衣子はぎゅっと膝の上で手を握り締めると、意を決したように口を開いた。
「その、希海くんの……本当のお父さんとお母さんは……」
一瞬の沈黙の後、昴は静かに告げる。
「二年半前に亡くなりました」
「……っ」
「組織の抗争に、巻き込まれる形で……」
低く押し殺した声音に、空気が重く沈む。
羽衣子は息を呑んだまま動けなかった。
「兄のように慕っていた郡司 慶太さんは、七鳳組の若頭を務めていた方でしたので……」
「…………」
まるで別世界の話を聞かされているようだった。
抗争とか、それに巻き込まれて命を落とすとか、どれも現実味の無い話なのに、昴の静かな声が、それは紛れもない現実なのだと羽衣子に突きつけていた。
「慶太さんと出会ったのは、私が十八の頃でした」
昴の話に羽衣子は黙ったまま耳を傾ける。
「私はあまり家庭環境に恵まれていなくて、高校卒業と同時に家を出たんです。当時は学歴も資格もありませんでしたし、まともな仕事を探す余裕も無かった。ただ、生きる為に金が必要だった」
淡々と語る声には感情の起伏が少ないけれど、それが逆に当時の過酷さを物語っているようだった。
「そんな時、街でホストにスカウトされましてね」
「ホスト、ですか……」
「ええ。顔だけは良かったようで」
冗談めかして言ったものの、その口元に笑みは浮かんでいない。
「そこで出会ったのが慶太さんでした。当時、店でNo.1を張っていた人です」
昴の視線が僅かに柔らかくなる。
「慶太さんは入店したばかりの私に何故か目をかけてくださって、接客の仕方から客の掴み方、酒の作り方まで……徹底的に叩き込まれました」
「……厳しい方、だったんですか?」
「ええ。かなり」
そう言いながら昴は小さく息を漏らす。
「ですが、不思議と嫌ではなかった。初めてでしたから。自分を必要としてくれる人間がいるというのが」
その言葉に羽衣子の胸が僅かに締めつけられた。
「それから数ヶ月で、私はNo.2になりました」
「……数ヶ月で?」
「ええ。恐らく、才能はあったのでしょう」
さらりと言うその姿に嫌味は無く、ただ事実を述べているだけなのだと分かる。
「慶太さんと私の二枚看板になってから、店の売上はかなり伸びたそうです。指名争いだのイベントだの……店も随分盛り上がっていました……ですが、楽しかった時間は長くは続きませんでした」
静かな声音に再び空気が引き締まる。
「私が二十歳になった頃、慶太さんが七鳳組の組長に気に入られましてね」
「組長さんに……?」
「ええ。元々、店にはそういう関係の客も多かったので。慶太さんも初めは断っていましたが、何度も声を掛けられたことで悩み、考え、最終的に慶太さんはホストを辞めて七鳳組へ入りました。そして私はそのまま店に残り、No.1になりましたが……正直、面倒だったんです」
「面倒……?」
「私をよく思わないホストも一定数いて、嫉妬や反感を買うことが多かったんですよ。慶太さんがいたから争い事は起こらなかったけど、彼が居なくなった途端、嫌がらせは増えていきました」
人気商売である以上、それは避けられないことだったのだろう。
それを分かっているからこそ、昴は早々に身を引いたようだ。
「慶太さんも居なくなって店に居続ける理由も無くなったので、数ヶ月で辞めたんです」
「……それで、七鳳組へ?」
「ええ」
昴は静かに頷いた。
「私は慶太さんのことを、本当に兄のように慕っていたので。自分も七鳳組に入れて欲しいと伝えたんです」
「……慶太さんは、なんて?」
「最初は反対されましたよ。“お前はこっちの世界に来るな”と。けど、私がどうしても入りたいと言い続けていたら、それを聞いた組長が、“面白い男だ”と快諾してくれましてね。そのお陰で、私は再び慶太さんと同じ場所で過ごすことになったんです」
そこで一旦、昴は言葉を止めた。
ここまでの話で分かったことは、昴が心の底から慶太を慕っていたということ。
彼と居たいが為に、極道の世界に足を踏み入れる程に。
コメント
1件
いやー、第31話めっちゃ重くて深い回だったな……! 希海くんが京極さんの実子じゃないってだけでも驚きだったのに、まさか郡司って人の子どもで、その両親が抗争で亡くなってたなんて。しかも京極さんがホストから極道の世界に入った経緯も生々しくて、「初めて自分を必要としてくれる人間がいた」って台詞が刺さりすぎたわ。羽衣子の“結婚してないんです?”って質問から、ちょっと嬉しそうな感情も人間らしくて良い。次の話も気になる🔥